Compassion(コンパッション)――状況にのみこまれずに、本当に必要な変容を導く、「共にいる」力

発刊
2020年4月6日
ページ数
432ページ
読了目安
622分
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思いやりを育むことで他者も自らも幸福になる方法
人が生まれつき持つ「自分や相手を深く理解し、役に立ちたい」という純粋な思い「コンパッション」を育めば、他者も自分も幸福になれる。内面や対人関係における5つの資質を紹介しながら、満ち足りた人生を歩むための心の持ち方を説いています。

内面や対人関係における5つの資質

「コンパッション」とは、人が生まれつき持つ「自分や相手を深く理解し、役に立ちたい」という純粋な思い。自分自身や相手と「共にいる」力。

コンパッションと勇気に満ちた人生の秘訣として、内面や対人関係における5つの資質がある。それなくしては、人の役に立つこともできないし、生きていくことも不可能である。けれども、この貴重な資質は、質が低下すると、害となる危険な景色となって現れる。この表裏となる二面性を持つ資質を「エッジ・ステート」と呼ぶ。

エッジ・ステートは、利他性、共感、誠実、敬意、関与の5つの資質である。いずれも思いやり、結びつき、美徳、強さを実践するための心の財産である。しかし、これらの資質は切り立った崖のようになっていて、私たちは足場を失って、そこから苦しみの泥沼に滑り落ちてしまうこともある。そうすると、混沌とした窮地に陥り、エッジ・ステートの持つ有害な面にとらわれることになる。

エッジ・ステートの二面性

満ち足りた人生を歩み、他者に役立つための基盤である、内面や対人関係における5つの資質は、一歩間違えると害となってしまう。

①利他性 ↔︎ 病的な利他性
利他性は病的な利他性と化す可能性がある。他者のために役立とうとする無私の行為は、社会や自然界が健全であるために不可欠である。しかし時には、一見したところ利他的な行動が、自らを傷つけ、役に立とうとしている相手を傷つけ、従事している組織を損ねてしまう場合がある。

②共感 ↔︎ 共感疲労
共感は、共感疲労と化すことがある。他者の苦しみを感じとることができる時、共感が相手との垣根を取り払い、役立ちたいという想いの原動力となり、私たちの世界観を拡げてくれる。しかし相手の苦しみをあまりに深く受け止め、その苦しみと一体化しすぎてしまうと、自らも傷ついて動けなくなってしまう恐れがある。

③誠実 ↔︎ 道徳的苦しみ
誠実とは、しっかりとした倫理や道徳的指針を持っていること。しかし、誠実さや正義感、善意に反する行為に関わったり、目にしたりすると、道徳的苦しみが結果としてあらわれる。

④敬意 ↔︎ 軽蔑
敬意は、命あるものや物事を尊重すること。自分が自分の価値観や礼節に背いた時、また他の人や自分自身を蔑視した時、敬意が軽蔑という有害な沼の中に消え去る恐れもある。

⑤関与 ↔︎ 燃え尽き
仕事への関与、とりわけ人を支援する仕事に従事することは、人生に目的と意味をもたらしてくれる。しかし、過労、有害な職場環境、仕事の効果があらわれないことによる無力感があるところで関与し続けると、燃え尽きてしまいかねない。

コンパッションが健全な状態に戻す

コンパッションは、自らと他者の苦しみに向き合い、適切に応じる助けともなる。コンパッションがエッジ・ステートの有害な側面、すなわち病理的な利他性、共感疲労、道徳的苦しみ、軽蔑、燃え尽きから抜け出す道となる。なぜならコンパッションは、人間の最も優れた能力(均衡のとれた注意力と思いやり、私欲のない心と洞察力、倫理的行動)を呼び覚ますための資質だからである。コンパッションが生まれるためには、4つの条件がある。

①注意力:他者の経験に意識を向ける。
②向社会的な感情と私心のない意図:他者を案じ気遣う。
③洞察力:相手に役立つのは何かを感じとる。
④体現:他者の心身の健康を高めるための行動をする。

コンパッションの出現の場を整えるには、注意力を鍛え、向社会的資質と私心のない意図を育み、判断力と洞察力を高め、倫理的で思いやり深い関与の状態をつくることが必要である。そして、安心感、平静、思いやりのある場が、他者を支援する私たちの内にも幸福感を生み出す。