世界はシステムで動く いま起きていることの本質をつかむ考え方

発刊
2015年1月24日
ページ数
360ページ
読了目安
557分
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本質をつかむための考え方
物事を大局的に見つめ、真の解決策を導き出す「システム思考」を紹介している一冊。

システムとは

「システム」とは、人でも細胞でも、分子であっても、時間の経過と共にその独自のパターンを創り出すようなやり方で相互につながっている何かが集まったものである。システムは外的な力によって衝撃を受けたり、抑えられたり、始動したり、駆動されたりする事がある。でも、そういった力に対する反応はそのシステムの特徴であり、その反応は実際の世界では単純である事はほとんどない。

 

私達が出会う誰であっても、どんな組織も、動物も、庭も、木も森も、複雑なシステムである。私達は分析もせず、直観的に、こういったシステムがどのように機能するのかを実際的に理解していく。

 

飢餓、貧困、環境劣化、失業、経済の不安定性、慢性疾患、薬物中毒、戦争などは、それらを根絶するために傾注されてきた分析力と素晴らしい技術にもかかわらず、なくならない。誰かがこういった問題を意図的に創り出している訳ではなく、問題が続く事を望んでいる人がいる訳でもないのに、問題は消えない。その理由は、こういった問題は本質的に、システムの問題だからである。こういった問題が解決に向かうのは、私達が自らの直観を取り戻し、非難をどこかへ向けるのをやめ、システムをそれ自体の問題の源であると見て、そのシステムを再構築する勇気と知恵を見いだした時だけである。

 

システム思考

構造と挙動の関係がわかれば「システムはどのように機能するのか」を理解し始める事ができる。システム思考とは、問題の根本原因が何かを見いだし、新たな機会を見つける自由を与えてくれる思考法である。

 

システムとは、何かを達成するように一貫性を持って組織されている、相互につながっている一連の構成要素である。システムは「要素」「相互のつながり」「目的」の3種類のものからなっている。

多くの場合、一番気付きやすいのは、システムの要素である。要素の多くは目に見え、触る事ができる。あるシステムの要素を列挙し始めたら、その作業に終わりはない。要素を下位の要素に分け、さらに下位の要素に分解してゆく事ができる。そうしている内にシステムを見失ってしまうため、行き過ぎる前に、要素の分解をやめて、要素をつなげている関係性を探し始めるのが良い。

 

「機能」や「目的は」見えにくい。システムの機能や目的は明示的に語られたり、書かれていたりするとは限らない。システムの目的を推測する最良の方法は、そのシステムがどのように挙動するかをしばらくじっと見る事である。多くの場合、システムの中で最も目につかない部分である目的は、そのシステムの挙動を決する上で最も重要である。

 

システムの基盤となるもの

「ストック」はどのようなシステムであれ、その基盤となるものである。ストックはシステムの要素だが、いつでも見たり、数えたり測ったりする事ができる。ストックは「フロー」の動きを通して、時間の経過と共に変わっていく。

 

ストックとフローのダイナミクス(その経時的な挙動)を理解できれば、複雑なシステムの挙動についてかなりの部分を理解した事になる。フローの移動には時間がかかるため、ストックが変化するには時間がかかる。これは「システムはなぜそのように挙動するか」を理解する上での鍵を握っている。ストックは大抵ゆっくりと変化し、システムにおいて、時間的遅れ、タイムラグ、バッファー、安定器、勢いの源として機能しうる。ストックの反応は、急激な反応に対しても、ゆっくりと満ちたり、空になったりするだけである。

 

ストックの変化が、システムのダイナミクスのペースを決める。ゆっくりと変化するストックから生じるタイムラグは、システムに問題を発生させる事があるが、安定を生み出す源にもなり得る。ストックの変化のペースに対する感覚を持っていれば、起こりうるよりも速く物事が起こる事を期待する事も、すぐに諦めてしまう事もない。システムの勢いがもたらすチャンスを活用して、それを良い結果へとつなげようとする事ができる。

 

システムはどのようにして自らを動かすか

システムにおけるストックの役割に関して、もう1つ大事な原則がある。その原則は、フィードバックの概念に直接つながる。ストックがある事で、インフローとアウトフローはそれぞれ独立し、一時的に両者間のバランスを崩す事が可能となる。人々は絶えずストックを監視して、ストックを増やしたり減らしたり、または許容範囲内に保とうと、意思決定をし行動をとる。こういった意思決定が積み重なって、あらゆる種類のシステムの盛衰、つまり成功と問題を生み出す。

 

ストックが飛躍的に増えたり、急激に減ったり、またはまわりで何が起ころうとある範囲内に保たれている時、そこにはコントロール・メカニズムが作用している。そのメカニズムは、フィードバック・ループを通して機能する。「フィードバック・ループが存在している」という最初の手がかりは、長期間にわたって一貫した挙動パターンが見られる事である。フィードバック・ループによって、ストックの水準をある幅で保ったり、または増やしたり減らしたりできる。

 

①バランス型フィードバック・ループ
ストックをある値、範囲内に保とうとする。

②自己強化型フィードバック・ループ
雪だるま式のもので、健全な成長や暴走型の破壊をもたらす循環をつくる

実際のシステムでは、フィードバック・ループが互いにつながっていて、多くの場合複雑なパターンを作り出している。