6度目の大絶滅

発刊
2015年3月21日
ページ数
400ページ
読了目安
574分
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環境破壊が種の大絶滅を引き起こしている
地球上では、過去5度の大量絶滅が起きている。そして今、私達は自身によって6度目の大絶滅を引き起こしている。世界中で進行している種の絶滅をレポートしている本。

アル・ゴア

ビッグファイブ

この地上では五度にわたって生物の大量絶滅が起きた。これらの絶滅は「生物多様性の恐るべき減少」をもたらした。最初の大量絶滅は、大半の生物がまだ水中で暮らしていた約4億5000万年前のオルドビス紀後期。海面の低下が起き、海洋生物種の約85%が死に絶えた。これは氷河作用によって起きたと考えられている。絶滅の最初期頃、二酸化炭素濃度が減少に転じ、気温が下がり、ゴンドワナ大陸が凍結した。

 

史上最大の大量絶滅は約2億5000万年前のペルム紀末に起き、この時は地上のあらゆる生物が絶滅の危機に瀕した。この場合は、大量の炭素が大気中に排出され、気温が急上昇し、海水温も10℃上がった。海水が酸性化し、溶存酸素量が極端に低下したため、多くの生物は事実上窒息したと考えられる。絶滅が終わる頃には、地上の生物種の約90%が姿を消していた。

一番最近で最も有名な大量絶滅は白亜紀の終わり頃に起きた隕石の衝突を原因とするものである。この時、恐竜など多くの種が消滅した。

 

六度目の大絶滅

通常の年代なら、絶滅はごく稀にしか起きず、種分化より稀なほどで、背景絶滅率として知られる確率で起きる。哺乳類の背景絶滅種数は約0.25と考えられている。つまり、現在約5500種の哺乳類がいるので、背景絶滅率にしたがえば大雑把に言って700年ごとに1種が消えるという事だ。

大量絶滅はこれとは訳が違う。背景が変化するというより、激変が起きて絶滅率がスパイク状の波形を描く。そして今、この現象を私達自身が新たに引き起こそうとしている。

 

現在、両生類は世界で最も絶滅の危機に瀕しているとも考えられており、その絶滅率は背景絶滅率の45000倍という試算もある。また、その他の多くの動物種の絶滅率も両生類に迫りつつある。造礁サンゴ類の1/3、淡水生貝類の1/3、サメやエイの仲間の1/3、哺乳類の1/4、は虫類の1/5、鳥類の1/6がこの世から消えようとしている。

 

二酸化炭素の問題

人類が地質学的規模で引き起こした多くの変化として、次の項目が指摘されている。

・人間は地表の1/3から半分に手を加えた
・世界中の主要な河川の大半はダムが建設されたり、切り回されたりした
・肥料工場が、すべての陸上生態系によって自然に固定される量を上回る量の窒素を生産している
・海洋の沿岸水域における一次生産の1/3以上が漁業に消費される
・人間が世界中の容易に入手可能な淡水の半分以上を使う

 

より重要なのは人類が大気の組成を変えてしまった点にあるという。化石燃料の燃焼と森林破壊により、大気中の二酸化炭素濃度はこの2世紀で40%上昇し、メタン濃度は2倍以上になった。

 

二酸化炭素の性質の1つが水に溶けて酸を生成する事だ。過剰な二酸化炭素のせいで、海水面近くの水素イオン濃度(PH)は既に平均値で約8.2から約8.1に低下。このままでは今世紀末までに、生態系が崩壊し始める最大の転換点である7.8に低下する。この状態では、海は産業革命の始まりの時より150%も酸性に傾いている。海の酸性化は、ビッグファイブの絶滅の内少なくとも2つでは主要な原因だった可能性が大いにある。酸性化は生物の代謝、酵素活動、たんぱく質機能などの基本的過程を攪乱する。

 

新パンゲア大陸

人間がいなければ、大抵の種にとって長距離の移動は不可能に近い。種の拡散には限界があるから、生命は豊饒で、その多様性の中にパターンが見てとれる。

 

人新世の著しい特徴の1つは、地理的分布の原理が破綻してしまった事にある。高速道路や皆伐地、大豆のプランテーションが土地を分断し、陸の孤島を形成する一方で、グローバル規模の交易や旅行はその逆を成し遂げた。世界中の動植物を再び混ぜ合わせるプロセスは、ここ数十年で著しく加速し、世界の一部の地域では外来種が在来種を凌ぐまでになっている。