イェール大学人気講義 天才 その「隠れた習慣」を解き明かす

発刊
2022年8月3日
ページ数
476ページ
読了目安
663分
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天才はどのように作られるのか
「天才」をテーマとしたイェール大学の人気講義を書籍化したもの。天才とはどのように誕生するのか。その特徴や行動習慣など、天才と呼ばれた人々を解き明かしています。
天才とは独創性、創造力が重要だとし、優れたアイデアを生み出すための習慣や方法なども紹介されています。

天才とは創造力である

才能と天才は全く違うものである。才能ある人は、じき明白になることに巧みに対処する。他方の天才は、他の人の目には見えないものが見える。そして、天才になるには、単に他人には見えない目標を達成するだけではダメで、一番乗りで達成しなければならない。独創性が重要なのである。

天才とは、精神力が並外れていて、その人独自の業績や見解が、文化や時代を超えて、良くも悪くも社会を大きく変革する人を指す。天才とは創造力であり、創造力には変革が含まれる。

 

何が人を天才にするのか

天才は「先天的なものか、後天的なものか」というシンプルな問いに、これといった答えはない。才能は遺伝によるものかもしれないが、天才は違う。とんでもない偉業は、血筋によるものではなく、どちらかと言えば「究極の嵐」というものに近い。複数の条件が重なって相乗効果を生み、巨大な力を発展したものと言える。

天才は大抵、目をみはるほど優れた両親のもとに生まれてはいない。天才は突然、人の様々な表現型の組み合わせ、中でも知性や立ち直る力、好奇心、洞察力ある思考、少しどころではない強迫的行動から、ランダムに出現するもののように見える。

 

人というものは、どのように育てられるかと、自分が生活する環境、そして自分がその環境や自分自身をいかにコントロールするかがそれぞれの遺伝子の活性化に影響する。練習は既にあるものを完璧にはするが、イノベーションを創出はしない。天才は何か新しいことや革新的なことを発明して頂点に立つものだ。天才は天性の才能と努力の両方の賜物なのだ。

 

IQが高いことが天才ではない

理に適ったロジックはクリエイティブな創意工夫とは異なる。IQテストに見られるような、徹底してロジカルな認知処理と、ピカソのような画家が映し出してきたような創造力は、全く異なるものだ。

1920〜1990年代にかけてスタンフォード大学で行った有名な「天才テスト」では、IQが135を超える若者が1500人もいたが、1人も天才は生み出されていない。1人もノーベル賞受賞者は出なかった。ピューリッツァー賞受賞者も1人も出なかった。ピカソも1人も出なかった。

 

今日、多くの専門家が科学分野で秀でるのに必要な知能指数は、IQ115〜125もあれば良いと考えている。それを超えると、IQのスコアが上がっても、創造的な洞察力との相関性はほとんどなくなる。ベートーヴェン、ダーウィン、エジソン、ピカソ、ディズニー、ジョブズなどを見ると、天才とは到底IQなどで語れるものではなく、「賢い」に様々な意味があることがわかる。

 

天才が持つ7つの能力

①体の動きに関するイマジネーション ex.振付師のマーサ・グラハム、ジョージ・バランシン

②利他的な視点で意見を発信する能力 ex.キング牧師、マハトマ・ガンディー

③鋭い省察の目 ex.ヴァージニア・ウルフ、ジークムント・フロイト

④言語表現能力 ex. ジェイムズ・ジョイス、トニ・モリスン

⑤視覚的・空間的推論能力 ex.オーギュスト・ロダン、ミケランジェロ

⑥並外れた聴覚 ex.バッハ、ベートーヴェン

⑦数学的な論理的思考力 ex.アインシュタイン、スティーヴン・ホーキング

 

これら人の営みにおける7つの側面は、ハーバード大学の発達心理学者ハワード・ガードナーが提唱する、人の知能の7つの発現様式であり、これを「多元的知能」と呼んでいる。

これらは分野に特化した頭脳の働きで、そこから創造力が飛躍する。そして、こうしたクリエイティブな分野の1つ1つで、個人の様々な性格的特徴がその働きを決定づける。それが知性や好奇心、立ち直る力、忍耐力、リスクの受け入れ力、自信、努力する力などだ。

 

天才は好奇心の塊

好奇心は人のパーソナリティーに欠かせないものであり、他の性格的特徴、特に情熱とも切り離しがたく密接に絡み合っている。天才は、私たち以上に知りたいという欲求が強い。天才は、今のあり方と、そうなってもいいのにというあり方の違いに「神のような不満」を抱き、行動する。

 

レオナルド・ダ・ヴィンチは「史上最も飽くなき好奇心の男」と呼ばれている。レオナルドは他人にも自分にも非常にたくさん質問した。レオナルドの疑問は、都市計画から水力学、描画、弓術および軍事作戦、天文学、数学、果てはアイススケートまで、広い範囲に及ぶ。このうちレオナルドが学校で学んだものはゼロだ。彼は自分で発見したことを、すべてノートに書き留めていた。そのメモ、スケッチの量は約13000ページにも及ぶ。

 

多くの心理学者が、人には生まれながらに好奇心があるが、成長とともに持って生まれた知的好奇心を失っていく、との見方を示している。だが、天才はずっと子供のような好奇心を持ち続けているようだ。アインシュタインは晩年、自分で「私には特別な才能などありません。ただ好奇心が激しく強いだけです」と語っている。