宇宙飛行士が教える地球の歩き方

発刊
2015年2月20日
ページ数
367ページ
読了目安
536分
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宇宙飛行士はこう考える
宇宙飛行士はどのような物の考え方をするのか。宇宙飛行士が考える人生の生き方について書かれた一冊。

宇宙飛行士とは

どれだけ有能でも、どれだけ経験豊富でも、宇宙飛行士は次のテストに向けて延々とガリ勉を続ける、いわば永遠の学生だ。宇宙船に乗って地球の周囲を飛び回る事しか心から楽しめないとしたら、その人は宇宙飛行士には向いていない。準備の時間と宇宙にいる時間の比率は、数ヶ月対1日。1回の宇宙ミッションに割当てられるだけでも、最低数年間の訓練がいる。特定のミッションに参加するとなれば、訓練に2〜4年かかる上に、通常の訓練よりもずっと過酷で厳しい訓練が待っている。複雑で反復的な作業やとびきり難しい作業をへとへとになるまで練習する。しかも、1年の半分以上は家を留守にする事になる。ミッションに参加していない間の数年間の通常訓練では、新しいスキルを身に付け、学びつつ、他の宇宙飛行士達が宇宙飛行に万全の状態で臨めるようなサポートしなければならない。

 

姿勢だけは制御できる

訓練を退屈で面倒な仕事としか思えなかったら、毎日がつまらないばかりか、ミッションのメンバーから漏れた時や、ミッションに一度も参加できなかった時、自尊心や職業上の目的意識がボロボロに崩れ去ってしまう。事実、ミッションに一度も参加できない宇宙飛行士もいる。

宇宙に行けるかどうかは、宇宙飛行士個人の力では全くどうする事もできない、数々の変数や状況によって左右される。だから、宇宙飛行を権利じゃなくボーナスととらえる方がずっと理に適っている。宇宙には行けないかもしれないと考える事で、20年以上も、その夢のような気分を片時も失わずにすんだ。成功とは、発射台に行き着くのかどうかもわからない、先の見えない長い旅の間ずっと、自分の仕事に満足していられる事だ。訓練自体を目標と考えるべきだ。

その秘訣は、なるべく訓練を楽しもうとすること。仕事で自分が望む目的地に辿り着けるかどうかを決めるのは自分ではない。自分では制御できない変数が多すぎるからだ。でも、自分で制御できる事がたった1つだけある。姿勢だ。姿勢を保てばこそ、ブレる事なくいつも正しい方向へと進める。だから、絶えず自分の姿勢をチェックし、必要なら修正する。ブレるという事は、目標に到達できない事よりも、はるかに悪い事だ。

 

準備を怠るな

時間があるなら準備に使え。それより大事な事なんて他に何があるだろうか。取り越し苦労に終わる事もあるかもしれない。でも、いざ本番になって、しなきゃならないのにどこから手を付けていいのかさっぱりわからないという事になるよりは、よほどマシなはずだ。

これは仕事への取り組み方だけじゃない。人生の生き方でもある。一番厳しいハードルを心の中で思い描き、そのハードルをクリアするのに必要なスキルを思い浮かべて、余裕でこなせるくらいのレベルになるまで、ひたすら練習する。9歳の頃に宇宙飛行士になると決心してから、ずっとそうしてきた。意識的にコツコツと準備してきたからこそ、ヒューストンに辿り着いた。

 

マイナス思考の力

恐怖とは、何が待ち受けているのかわからないという状況、これから起こる事に対して何の手も加えられないという感覚から生まれるものだ。無力感を抱いている時の方が、事実を把握している時よりも、はるかに怖い。何に警戒すればいいのかわからないと、何もかもが危険に見える。

宇宙飛行士は、ロボットみたいな冷徹な心を持っていると思われがちだ。でも、ストレスやリスクの高い状況で冷静を保つのに必要なのは、知識だけだ。確かに、それでも緊張、ストレス、警戒心はゼロにはならないかもしれない。でも、恐怖は感じないはずだ。心の準備とは、成功を確信する事とは違う。本当の準備とは、どこに失敗の危険があるかを理解して、その対策を練る事だ。