ザ・プラットフォーム IT企業はなぜ世界を変えるのか?

発刊
2015年6月9日
ページ数
248ページ
読了目安
249分
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推薦者

プラットフォームにどのように向き合うべきか
Googleやアップルなどの巨大IT企業を動かす基本原理は何か、その哲学について考察し、プラットフォームとは何か、どのように向き合うべきかを紹介している本。

プラットフォームとは

プラットフォームとは、個人や企業などのプレイヤーが参加する事ではじめて価値を持ち、また参加者が増えれば増えるほど価値が増幅するインターネットサービスを指す。プラットフォームをグローバルに展開するIT企業は、Google、Apple、Facebookなどたくさんある。

プラットフォーム運営者を見る時に欠かせない視点が「共有価値観」である。これはその企業の社員が共通して持っている価値観を指す。

 

現代を生きる私達は、いつの間にか何かしらのプラットフォームの上で生活をし、またその一員としてプラットフォームに参加している。その事を自覚的に捉えていく事が、自由で豊かな生活を楽しむ事ができる「リベラルアーツ」として機能する。

プラットフォーム運営という視点を持つ事で、言語や論理学がそうであったのと同様に、情報社会に生きる21世紀の私達を「自由」にしてくれる技術が身に付く。なぜなら、それによって私達はIT企業が展開するプラットフォームの「ビジネスモデル」に潜む問題に気付き、その「重力」から適度な距離を保つ事で、プラットフォームの素晴らしさや過剰さを理解しながら適切に利用する事ができるからである。

 

Googleの共有価値観

彼らのミッションは「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」である。このGoogleの共有価値観を前提に、彼らの製品やサービスに宿る哲学を読み解くと「マインドフルネス」だと言える。マインドフルネスの状態にあると、私達は過去や未来の様々な雑念にとらわれる事なく、目の前の出来事に集中できるようになる。そして、何でもない出来事からも高い満足感を得られるようになる。

 

この哲学を理解できれば、Googleが手がける多種多様な事業の目指す先も見えてくる。自動運転車からは、運転さえ人間のする必要のない雑事だとGoogleは考えている。Googleの目指す世界は、あくまでも人間が選択肢を増やして、能動的に生きられる手助けをする事である。その美学が手間の自動化であり、マインドフルネスという哲学である。

 

アップルの共有価値観

「シンク・ディファレント(ものの見方を変える)」という言葉には「誰かと違う自分だけの考えを持とう。そのための助けをするのがアップルだ」という彼らの強い共有価値観が込められている。

 

「iPad Air」のビデオ「What will your verse be ?(あなたの物語は何ですか?)」の中にある「ヴァース」は人類という1つの宇宙を形づくる1人1人の「あなただけの小宇宙」とも言えるかもしれない。アップルは「私達はあなたの情熱を拾い上げて、あなただけの『ヴァース』を生きられるように手助けします」と背中を押す。iPadはそうしたアップルの共有価値観を込めてつくられた、表現のためのデバイスだった。

 

この「ユア・ヴァース」という哲学は「Apple Watch」の中でも探求されている。ビデオのメッセージは「この時計があれば、世界中の情報がお前に紐づくから、もう世界はお前の一部になるんだし、お前らしくなれるんだぜ」という事である。

こうした共有価値観を知る事で、それぞれの製品がなぜそこに存在するのかが見えてくる。

 

プラットフォームにどう向き合うべきか

プラットフォームには世界を変える力がある。しかし、これは「いい方に」とも「悪い方に」とも言える。なぜなら、Google、アップル、フェイスブックは株式市場に上場をしている1つのIT企業だからである。やはり利益を得るためにはユーザーにとって「悪い方に」プラットフォームが傾く事もある。

 

プラットフォームをいい方に傾ける事ができるのは、私達利用者側である。なぜ悪い方に傾いたのか、その重力を見極める事が大切である。こうしたプラットフォームに向かうべき態度を「ディープ・オプティミスティック」と呼ぶ。短期的な困難に対処していきながら、長期的な未来に対しては常に楽観的な態度でいる事であり、これが大切である。