Web3とDAO 誰もが主役になれる「新しい経済」

発刊
2022年7月6日
ページ数
240ページ
読了目安
276分
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Web3の本質とは
インターネットの大きな転換点と言われている「Web3」というトレンドを解説し、現在起こっている価値観の変化やこれからの経済のあり方を紹介しています。

暗号通貨やNFT、スマートコントラクト、メタバースなど技術的な側面に注目されがちな、Web3の本質的な部分をわかりやすく紹介しており、その概念や社会に与える影響を理解することができます。

Web3とは

Web3は、2014年頃イーサリアムの共同開発者だったギャビン・ウッドによって初めて使われた言葉だ。ブロックチェーンが登場したことで、インターネット上で従来とは大きく異なるアプリケーションが実現できるようになったことを指すために使われた。

Web3は新技術に関するトレンドのように語られることが多い。確かにブロックチェーンやスマートコントラクト、分散型金融、NFTなどのようなWeb3を代表するコンセプトはこれまでになかった技術によるものだ。しかし、Web3はあくまでインターネットの歴史の一部であり、歴史の流れを意識して理解する必要がある。

 

デジタル技術の発展によって、インターネットは誰もが自由に利用できる情報流通基盤として、現代社会に欠かせないインフラにまで成長した。ビジネスの基盤としても利用され、数々の課題を解決するサービスが誕生した。しかし、その反動として過度な独占やプライバシー問題など負の側面が顕在化してきた。2010年代後半から特に明白になってきたこの負の側面に対して、どのように対処すべきかが課題になった。

 

そんな中、2008年10月、P2Pネットワーク上で通貨システムを構築するアイデアが記載された論文が発表された。そして、2009年1月、ビットコインが稼働を始めた。これが、人類が初めてブロックチェーンを手に入れた瞬間だった。この論文の中で最も重要な点は、特定の主体のみがデータを握りそれを処理しなくても良い状態を構築するための具体的なアイデアが提案されていた点だ。
通常、電子決済システムは特定の事業者や組織が「誰から誰に送金した」といった情報をサーバー内で管理し、送金をサーバーのデータを処理することで管理している。一方、ビットコインは特定の事業者や組織が存在しない環境下でそれを実現しようとした。

この論文のアイデアが、後のブロックチェーン技術の原点となり、様々な形で応用された。現在私たちが利用しているアプリケーションやサービスの多くでは、ユーザーの行動履歴や個人情報などは企業側の持ち物となっている。
しかし、ブロックチェーンの登場によって、企業やその他組織が行っていたデータの処理を、インターネット上でできるようになった。

 

このようなブロックチェーンの登場に端を発する一連の変化やトレンドが「Web3」と呼ばれる。ブロックチェーンが起点になったWeb3では、ユーザーのデータはインターネット上にあり、そのコントロールもユーザー自身が握っている。

 

オーナーシップを軸にしたインターネット社会

Web3で重要なことは、シェアリングエコノミーなどからオーナーシップ型のエコノミーへと価値観の変化が起きている点だ。Web3のオーナーシップエコノミーでは、オーナーがサービスの提供者であり、ユーザーである。また、提供されるサービスそのものにおけるオーナーシップ、会社で言えば株主のような役割も、ユーザーが主導できるようになる。

Web1.0:利用者
Web2.0:利用者権、発信者
Web3:オーナーシップ権、利用者

私たちはサービスを利用する際に、これまでのようにサービス提供の企業を信頼するのではなく、サービス提供元のソフトウェアそれ自体を信頼するようになる。企業主導よりも、より小さいトラストにより実現される個人主導の社会、誰もがオーナーシップを持っていく社会が、シェアリングエコノミーの次の経済圏として実現しようとしている。

 

DAOとは

Web3を語る上で欠かせない概念の1つがDAO(自律分散型組織)である。DAOとは、ブロックチェーンの登場によって可能になった、新しいコラボレーションの形であり、ブロックチェーン上で実行されるルールを共有し合い、ミッションを中心に組織されたグループ、コミュニティのことである。

DAOでは、様々なタイプのトークンを利用して、参加者のインセンティブを調整することが可能になる。コミュニティに貢献すればするほど、個人も報われる仕組みになっている。DAOの参加者は、地理的制約も人種的な制約もなく、様々な人や組織が、それぞれの立場から貢献できるフラットな構造になっている。

 

DAOを一番わかりやすく説明するとすれば「中心のない、ミッションドリブンのコミュニティ」だ。DAOは、中心のリーダーがいなくても、組織自体が自律的に活動し続けられる仕組みになっている。
もちろん立ち上げの段階では、ビジョンやミッションを掲げる旗振り役の存在は必要だ。一方で組織に属人的な中央集権的な存在が残り続けることのリスクもあるため、段階的に権限をコミュニティに移譲していくのがDAOである。

DAOにおけるガバナンスでは、主にトークンを利用する。ある程度の方向性が議論で固まってくると、誰かが代表して提案を書く。その提案に対して、トークン保持者が投票を行う。

 

Web3時代においては、インターネットサービスも企業の傘下に入るのではなく、DAOや企業や個人が支えるという構図になっていく。Web3時代では、まさに水道管のように、世界の公共財を作ることが目的となる。

現状、Web3が普及している領域は、金融領域を分散化しているDeFi、クリエイターエコノミーの元となるNFT、デジタルネイティブな空間であるメタバースなどがあるが、これらの領域をはじめ、あらゆる社会システムが分散型のWeb3ネイティブなシステムに置き換えられつつある。

参考文献・紹介書籍