イノベーション道場 極限まで思考し、人を巻き込む極意

発刊
2022年4月27日
ページ数
256ページ
読了目安
262分
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顧客が抱える潜在的な問題を発見するためには何が必要か
「ネスカフェアンバサダー」などのマーケティング施策を行なってきた元ネスレ日本CEOの著者が、イノベーションを生み出すために重要なことは何かを解説しています。
目先に見えている顧客の問題を考えても、イノベーションは生まれないとし、潜在的な顧客の問題を発見するためのヒントを書いています。

顧客が認識していない問題に焦点を当てる

「まだ世の中にないものだから、消費者に聞いて調査しても欲しいものが出てくるわけがない」と言われるように、市場調査を行って1万人に聞いたとしても、いっさい出てこないアイデアがイノベーションである。一方、消費者調査で「こういうものが欲しい」と言語化されて出てくるアイデアのことをリノベーションと呼ぶ。認識できる問題を解決することを、イノベーションとは呼ばない。改良という意味でイノベーションと呼ぶ。

イノベーションが起こって消費者に受け入れられれば、後にリノベーションが連続する。イノベーションが起こった後に、連続してその改良モデルが生まれるのは、使っている消費者が継続的に新しく小さな問題を発見していくからである。

このイノベーションとリノベーションの違いを正確に理解しなければ、リノベーションだけで成功できると勘違いしてしまう。問題を解決するには、質や性能以外の部分に焦点を当てなければならないにもかかわらず、そこに目を向けなくなってしまう弊害が生まれる。

 

イノベーションは「顧客の諦めている問題」を解決することである。その前提として、マーケティングを理解することが不可欠である。マーケティングは、顧客の問題を解決することによって市場で付加価値を生み出すプロセスの総称である。

マーケティングは、多種多様な顧客の問題に焦点を当てる。この顧客の問題は二通りある。

  1. 顧客が認識している問題=リノベーション
  2. 顧客の諦めている問題=イノベーション

 

顧客の諦めている問題は、次の3種類がある。

  1. 聞かれても答えられない問題
  2. 頭に浮かんでこない問題
  3. こんな問題は解決できるはずがないと諦めている問題

この表面化していない顧客の諦めている問題をあぶり出し、絶対に解決しなければならない問題として捉え、解決に導く。このプロセスから生まれる成果が、イノベーションになるケースが多い。

中でも重要なのが、表面化せず、あやふやで、潜在的に眠っている、顧客が諦めている問題をあぶり出して整え、問題として定着させるプロセスである。このプロセスがイノベーションの成否を決定づける極めて重要なポイントになる。イノベーションでは、問題解決能力よりも問題発見能力に優れた人の方が成果を出している。

 

新しい現実から、顧客の新しい問題を考える

問題発見の大前提には、「新しい現実」という以下の考え方が必要になる。

時代や習慣の変化が起こり、ある程度長い年月を経て人々の生活や企業を取り巻く環境の中で定着しているもの。感覚的には、10年から15年経過しても変わらない現実であり、数年で消えていくものではない。

 

旧来の現実から新しい現実に時代が変わると、それに伴って従来とは異なる新しい問題が生まれる。つまり、新しい現実が新しい問題を連れてくる。イノベーションを起こすためには、旧来の現実から生じる顧客の問題ではなく、新しい現実から生じる顧客の新しい問題を見つける能力が必要になる。

 

イノベーションについて考える時、ほとんどの人は顧客の問題にばかり焦点を当てようとする。しかし、問題だけを考えて重要な問題が出てくることはない。仮に出てきたとしても、それは顧客も認識している問題である。その問題を解決したところでイノベーションは生まれない。

何が新しい現実で、何が顧客の諦めている問題なのか。これを見極めることが、イノベーションにアプローチする有力な方法である。問題から考えず、新しい現実から考える癖を身につけることが必要になる。顧客の諦めている問題に近づくためのヒントは、人に興味を持つことである。顧客にとっての新しい現実を考え、それに由来して顧客に起こっている問題について考える時間を、とにかく増やすことである。

残念ながら「これさえやればイノベーションが確実に生まれる」と言える方程式は存在しない。自分で何度も考えるしかない。

 

イノベーションを生み出すためのフォーマット「NRPS法」

新しい現実(New Reality)の認知

そこから導き出される顧客が諦めている問題(customer’s Problem)の発見

顧客が諦めている問題の解決(Solution)

 

新しい現実は、必ず新しい顧客の問題を連れてくる。そこに新しいビジネスチャンスが生まれ、イノベーションのチャンスが訪れる。但し、顧客の諦めている問題を見つけるのは、NRPS法でも難しいものである。最終的にイノベーションにつながるかどうかは実行してみなければわからない。

だからこそ、小規模なレベルでのテストを行う。そして、スモールテストする上では、自分の考えた判断材料のうち何が正しく、何が間違っているのかを明らかにする。