Appleのデジタル教育

発刊
2019年3月20日
ページ数
336ページ
読了目安
377分
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教育の未来を変えるには何が必要か
Apple教育部門の初代バイスプレジデントが、テクノロジーを活用した教育の未来を語った一冊。デジタル時代の教育改革について紹介されています。

教育をリワイヤリングする

デジタルネイティブがテクノロジーを介して膨大な量の情報に触れていることは間違いなく、それによって脳内で起こる変化が激しくなり、そのスピードが大幅に加速したことは否めない。今の子供達には、教科書ではなくモバイルアプリから、より多くのことを発見し学習する力が備わっている。

しかし、20世紀の間、教育システムに革命的な変化は一切起きていない。現行の教育システムは短絡的であり、リワイヤリングが必要である。教育はコンピュータと同じで、その時々の世代のニーズを満たす用意のあるシステムが必要だ。

教育のOSを、生徒、教師、親、社会がうまくつながるように、学校が創造性や独創的な思考を育める場所になるように更新するのだ。学習に関するリサーチと最新テクノロジーを活用して、今の生徒一人ひとりのニーズに即して学習体験をパーソナライズ化する必要がある。

相対性が大事である

教育のリワイヤリングは、テクノロジーから始めてもうまくいかない。最初に着手すべきは心理学である。子供が成功する可能性については、根強い誤解がある。

私たち人間は一人ひとりが違い、それぞれ個性がある。この個性が大切である。誰かの人生をよくする方法を本気で知りたいなら、人を個人として理解するしかない。つまり、自分や他者を測る物差しとして、当たり前に平均を用いることをやめる必要がある。

生徒の成功を判断する場合も同じだ。生徒を成功させるものは何かという問いに対し、唯一の正解はない。学校の成績評価、テストの点数、合否、学習したことの上達具合など、人によって答えにあげるものは様々だ。要するに、成功は相対的な概念であって、絶対的なものではない。

生徒の成功や失敗は、その子に秘められた可能性ではなく、周囲の認識の問題である場合がほとんどだ。子供の成功にかける期待も相対的である必要がある。どう期待をかけるかで、子供の可能性の成就が左右されかねない。「高い期待」をすぐに成果が出ることへの期待とイコールにしてはいけない。生徒への期待は、すぐに成果があがるもの、将来的に成果があがるものの2層にかけるべきだ。

学習をパーソナライズ化させる

「学習のパーソナライズ化」は、個々の生徒に適した方法で学習させるという意味だ。生徒を「個人」としてとらえた学習指導を行うことであり、全員同じの学習方法とは違う。

生徒が自分に関係があると感じる授業の方が効果が高いのと同じで、カリキュラムもパーソナライズ化した方が学習効果が高まる。これまで学習のパーソナライズ化を効率よく大規模に進めることが障壁になっていたが、テクノロジーによって状況は変わろうとしている。

CBL(チャレンジ設定型学習)

CBLは教育のリワイヤリングを可能にするものだ。CBLは疑問を発端とする学習モデルである。個人またはグループで疑問の解明や解消に自らチャレンジすることで、その学習が生徒自身に関係するものとなり、熱心に取り組むようになる。

CBLでは、生徒同士で何にチャレンジするかを決めるように促される。そうすると、生徒とチャレンジの関連性が深まり、チャレンジに対する責任感、積極性、モチベーションが高まる。CBLでは、プロジェクトのありとあらゆる場面でテクノロジーを使う。情報を集める手段としてだけでなく、コミュニケーションや共同作業の手段として、結束を強めるための手段として様々な形で使用する。

CBLとは「感じて想像し、行動を起こして共有する」こと。自分はどう感じているのかを理解し、それを解決する術を想像する。想像できたら、解決に向けて行動を起こし、見つけた解決策を世界と共有する。