倒産した時の話をしようか

発刊
2022年4月20日
ページ数
328ページ
読了目安
358分
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推薦者

経営者は倒産した後にどうなるのか
倒産企業の社長8人へのインタビューから、倒産した要因やそこから得られる教訓、倒産後の人生などが書かれている一冊。事業が失敗し、倒産した話はあまりメディアでも取り上げられることがなく、表に出ないことが多いが、失敗から得られる教訓は多い。

失敗をどのように資産に変えて、再起すれば良いのかというヒントが得られます。

なぜ会社は倒産したのか

・世界で勝負する飲食事業仕掛け人、居酒屋チェーン経営

業容拡大を目指し、新規出店の案件をいくつも抱えていたが、リーマン・ショックを契機に銀行の貸し渋りが発生。物件契約や内装工事の発注まで済んでいる状況で、資金繰りが悪化。その後、東日本大震災で急激な客数減少により業績が悪化。

 

・炭シャンプーが空前絶後の大ヒット、美容商品販売・サロン経営

炭シャンプーのヒット以来、業績は堅調に推移したが、新規事業に失敗。製造した商品トラブルにより、数千万円の損失が残り、信用を失って百貨店との取引が中止。新規事業のために銀行から借入していたが、返済原資となる商品売上がなくなり資金繰りが逼迫。一発逆転を狙った新商品のシャワーヘッドも、予想を下回った需要で、在庫が積み上がり、資金ショート。

 

・バイクレーサーから日本一の住宅販売業者に、住宅販売会社経営

共同創業者が会社資金を新規事業に投資して失敗。銀行の融資を受けられず、資金繰りが逼迫。

 

・LA発のバッグで一世を風靡、アパレルブランド経営

在庫を抱える必要がある事業モデルであり、店舗に並んでいる3倍の在庫を保有。3ヶ月前に発注する必要もあった。テレビや雑誌の取材が入り、驚異的な売上を達成するも、新規出店やテレビショッピングへの出店で資金繰りが悪化。東日本大震災による業績悪化も影響し、自転車操業状態に。

 

・年商50億円超えの二代目社長、化学工業薬品商社経営

景気低迷による受注減少で少しずつ業況が悪化。これに加えて、リーマン・ショックで円高が進み、為替デリバティブ契約による多額の損失を計上し、一気に資金繰りが悪化。

 

・中国ウェブ広告の黎明期を開拓、広告代理店経営

北京オリンピック、上海万博といった国際イベント後に景気が減退。同時期に、中国国内で反日デモが頻発。日系企業の業績悪化が顕在化し、広告発注が減少。売上低下により資金繰り逼迫。

 

・O2Oビジネスの先駆者、デジタルマーケティング企業経営

店舗の来店者にスマホを通じてクーポン提供やポイント付与する事業を展開。大手外食チェーンとの協業や大企業との取引が実現するも、色々な競合他社が参入。O2Oの導入によるメリットが訴求しにくい中、事業の成長が頭打ちに。製造業向けソリューションへ事業転換を行うも、採算が合わずに資金ショート。

 

・バイク買取、デジタルサイネージ、コンサル事業、建築会社経営

地元長野で、建築会社の事業を承継。現場のキャパシティを超える受注で、現場との関係と業績が悪化。キャパを超える分を外注した結果、外注費がかさみ、利益率が低下。建築会社買収後、自分の描いたストーリーに浮かされて、売上ばかりに気を取られ、粗利益を把握できていなかったり、現預金の残高やキャッシュフローに気を配れず。

 

倒産の事例から学べること

・経営に行き詰まったら、「無理せず撤退すること」も選択肢として持つべき

事業の引き際を見誤ると、現預金が枯渇し、関係者への被害が拡大してしまう形で倒産に至ることも。

 

・過去の成功体験に、再現性があるとは限らない

かつて経験した成功に似た事象に遭遇すると、「これは上手くいく」と思い込んでしまうことがある。人間の思考には一定のバイアスがあることを認識し、直感だけで意思決定することは避ける。

 

・顧客のために、当たり前のことを無下にせず、愚直に行うことが大切

「お客様から選ばれるためには何をすべきか」を真剣に考え、実行していく。ビジネスをする中で、これが疎かになってしまっている企業は意外なほど多い。

 

・経営におけるコミュニケーションで、つまらない遠慮や見栄は禁物である

相手の立場や感情に過度に配慮して、言うべきことを言わないことは、後々大きな損失になりかねない。他者の真意や思考を理解するためには、何よりも対話が重要。

 

・ビジネスを持続させる上では、財務的な視点が不可欠である

商品・サービスの開発、マーケティングといった「攻め」の活動のみならず、採算性分析、在庫などの資産や債務の状況把握、資金繰り管理など「守り」の活動にも注力すべし。「カネ」の視点が欠如すると、痛手を招く。

 

・「仕事上の利害関係のない」人脈を築き、頼ることが大切

事業悪化の兆しが見られたら、一人で悩まずすぐ相談し、対策を講じる。第一歩が遅れるほど、打ち手が限られる。外部のメンター・専門家からのアドバイスがあれば、冷静な判断や社内の調整もしやすくなる。

 

・大企業との協業はリードタイムが長くなることを想定しておく

取引結実時には大きな売上や、業界での評判獲得を期待できるが、そこまでにはキャッシュアウトが続く。大企業と協業する場合、展望する成長スピードに合うか、資金は持つかの視点が必須。

 

・倒産しても、人生は終わらない

倒産・廃業は、経営者にとって本当に辛い出来事になるが、正しい知識や仲間の存在によって、乗り越えていくことができる。苦境に立たされた時、もはや一人きりではない。