物流業 4つのサステナブル・ビジネスモデル

発刊
2022年4月20日
ページ数
248ページ
読了目安
271分
推薦ポイント 2P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

推薦者

物流業界が生き残るための戦略
ドライバーの不足、燃料価格の高騰、生産性の低い現場など、物流業界が抱える問題点を指摘しながら、物流業界の現状と課題を解説し、物流会社はどのようにすれば生き残れるか、そのビジネスモデルの特徴を示しています。
利益率が低いとも言われる物流業界にあって、成功している企業の事例を取り上げながら、付加価値の高い物流のビジネスモデルの特徴が紹介されています。

物流業界の環境変化

日本の物流業では1990〜2000年にかけて、規制緩和が相次いで行われた。陸海空それぞれの物流業で自由競争が促進され、社会情勢の変化や技術の進歩も相まって、物流業界は今大きな構造変革期を迎えている。2000年以降における物流業界の注目トピックスは、次の通りである。

 

①ECの台頭
BtoC、CtoCのEC市場は今後も成長を続け、EC物流の重要性はさらに高まっていく。

 

②M&Aの増加
後継者難に加え、貨物量の減少や燃料価格の高騰、ドライバー不足など経営環境の悪化で事業再編が起きている。

 

③デジタル化・スマート化が進む物流
オンライン消費拡大に伴う多頻度小口運送の増加、ラストワンマイルにおける人手不足への対応、カーボンニュートラル実現に向けた省エネなど、効率的な物流運営に対するニーズが高まっている。

 

④多機能化が進む物流施設
物流に求められる機能の1つとして「流通加工」がある。流通加工とは、流通過程で商品を加工する作業であり、組み立て加工、箱・袋詰めや詰め合わせ、包装・梱包、ラベル貼り、値札づけ、店舗・方面別配送仕分け、検品などがある。これらは物流会社が担う場合も多く、こうした機能を提供する物流センターとして「フルフィルメントセンター」が注目されている。これは商品の仕入れから在庫管理、受注処理、顧客データ管理、ピッキング、検品、梱包、配送、クレーム対応、返品業務など、販売・物流機能を一貫して請け負う。

 

⑤物流プラットフォーマーの出現
規制緩和やDXの流れは物流分野においても進境著しい。空車や非稼働時間がある車両と荷主を斡旋する求貨求車サービス、物流施設・倉庫の空きスペースと一時的な保管場所を探す荷主をつなぐ倉庫シェアリング、配送ドライバーを仲介する配送マッチングなど、マッチング型プラットフォームが多い。

 

物流会社が目指すべきポイント

物流に関する荷主の課題の階層は、以下の通りである。

  • 戦略策定(拠点展開・委託先検討など):経営陣が計画自体が適切かわかっていない領域
  • サプライチェーン業務(製販・取引先連携):物流の位置付けが低い荷主にはノウハウがない領域
  • 物流業務(輸配送、保管、荷役、流通加工、包装、情報システム):今後は装置化が増える領域

 

多くの物流会社の業績は、「物流六大機能×エリア」で成り立っている。物流六大機能とは、上記の「物流業務」である。現場のノウハウが詰まっているものの、物流会社ならやって当たり前だと思われがちな領域である。また、今後は装置産業化されると思われている領域でもある。

近年、多くのメディアで物流業界の人手不足という課題への対策として、自動化・省人化推進が取り上げられている。中長期的には自動運転やブロックチェーンなどの普及により、物流六大機能の装置産業化は間違いなく進むだろう。

 

物流会社のノウハウを発揮するポイントは、「物流業務」で培ったノウハウを、上位階層で荷主に見せることである。物流の位置付けが低い荷主企業では、物流部門にエース級人材を配しないことも相まって、サプライチェーンを最適化するノウハウが空洞化している。物流会社にとっては、この課題が商機となる。現在の調達・製造・販売のフローやプロセスをどのように変えれば効率化できるか、コストダウンに繋がるかを提案し、荷主を支援することがポイントである。

 

4つのサステナブル・ビジネスモデル

高収益や新たな価値創造をしている物流会社のビジネスモデルを整理すると、次の4つの分類できる。

 

①物流+αモデル

サプライチェーンにおいて前工程や後工程の他のプレーヤー業務を物流会社が提供する。

 

②サービス特化モデル

月・日・時間・曜日・季節などに応じて変動する物量の波のことを「波動」という。物流はこの波動との戦いであり、トラック一台の実車率・実働率・積載率・回転率が収益に大きく影響する。そこで、特定のサービスに特化して効率を高める。

 

③ドメイン特化モデル

物流は、荷主の業界・荷種によって異なるノウハウが必要である。この荷主・荷種に特化して一貫物流を提供することでノウハウを発揮する。

 

④本業拡大モデル

物流の現場では、顧客別に属人化した業務が非常に多い。これは荷主の要望や荷種によって注意すべきことや、自社センターの立地・構造・保管方法によって特性があるからだ。そのため、パッケージ化されたシステムをそのまま活用するのは難しく、システムをカスタマイズしていることが多い。
そこで、物流会社が内製したシステムや、自社内で活用している独自の設備などを外販する。物流現場のプロが企画するシステムや設備はそれだけで信頼性が増す。

 

この4分類は、必ずしも1社が1つのモデルに当てはまるわけではなく、複数モデルで高収益を実現している物流会社も多い。