やり抜く自分に変わる 超習慣力

発刊
2022年4月20日
ページ数
396ページ
読了目安
506分
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習慣化するためのメカニズム
無意識の内に繰り返す「習慣」が形成されるメカニズムを、神経科学、認知科学の知見から解説している一冊。どのようにすれば、良い習慣を身につけ、悪い習慣をやめることができるのかを理解することができます。

習慣の本質が詳しく書かれており、意志の力を使わずに良い行動を自動化するためのヒントが得られます。

習慣と意志の力

人は合理的とは程遠い。人は必ずしも、明確な理由から行動を起こすとは限らない。合理的な自己を過信するのはやめて、それよりもっと奥深くにも自分を構成する部分があると理解する必要がある。

 

人の意識は1つではない。意識は複数に分かれて構成され、相互に作用するメカニズムを通じて人を行動に導く。そのメカニズムには、変わることへの対処に適したものがいくつかある。それらが意思決定能力や意志の力と呼ばれるものだ。

決断する時は、関係する情報に注意を向けて答えを出す。決断や意志は「実行制御」と呼ばれる機能を脳内や意識に呼び起こす。これは思考の認知的な処理のことで、人は実行制御を通じてとる行動を選択し、管理する。この処理のほとんどは、意識的に行われる。意識して行うことは主観的な現実なので、この処理は「自分」が主体であるという感覚のもとに行われる。

 

一方、意識には実行制御を活用するものとは違う部分もある。繰り返しとる行動パターンの確立にとりわけ適した部分だ。その行動パターンがいわゆる習慣で、自動的に働くのに適している。そういう自動的に行う部分は、日常生活の大半に既に組み込まれている。

人の意識は自然に習慣を形成することがわかっている。その対象には、くだらない習慣、重要な習慣のどちらも含まれる。人が行動する時に機能するのは、隠れているも同然の膨大な潜在意識だ。顕在意識からの信号や合図で潜在意識を操ることはできるが、潜在意識は最終的に実行制御の干渉をほとんど受けず、独自に動く。

 

習慣は人間が生きていく上で絶対に欠かせないものなのに、逆説的に直感と相容れない。この不可知性が習慣を習慣たらしめる特徴であり、このおかげで、顕在意識が逆のことを意図しても、それに逆らって同じ行動をとり続けることができる。習慣は実に滑らかに作用するので、それについて考えることはほとんどない。習慣の世界は独立していることから、「第二の自己」のようなものだ。

 

大半の人は、意識的に決断を下す自己と、習慣として自動的にする反応がせめぎ合い、内戦のような状態の中で悪い習慣に何度も苦痛を味わわされている。だが、そこから逃れられないわけではない。望まない習慣を違うものに変え、自分の目標に見合った良い習慣を形成すればいい。

 

習慣は状況、繰り返し、報酬によって形成される

良きにつけ悪しきにつけ、習慣は繰り返すことで出現し、それに伴い、意識的な意思決定は鳴りを潜める。一度きりのことなら決断によって行われるが、同じことを何度も繰り返せば、その行動は全く違うものとなり、脳内の違う領域までもが活動を始める。

 

繰り返し何かを行う最初の段階では、目標と報酬が欠かせない。この2つのおかげで、ためになる習慣の多くが形成される。これまで繰り返してきた行動が状況によって呼び起こされるスピードで、習慣になるかが決まる。

思考のスピードは、習慣が支配力を得る鍵を握る。同じ行動を繰り返せば、その行動に対する意識の仕方が変わる。最初は動機を持って始めた行動が、繰り返すうちにその行動をとる状況と反応が強く関連づけられ、習慣となるのだ。その状況を思い浮かべると、直ちに意識が反応するようになる。意識にのぼるスピードが上がれば、ゆっくり考えようとする顕在意識が別のことをやろうかと決めかねているうちに、習慣となっている行動をとる準備が整う。

 

習慣に従った行動とは基本的に、「過去に問題を解決した時の答えとなった行動を引き出すこと」だと思えばいい。習慣の記憶は、簡単に行動に移せる。習慣は、状況がもたらす合図と、その状況で報酬のためにとる行動を繰り返す中で身に付く反応が、意識上で関連づけられた時に作用する。

習慣に関わる意識は熱心に働く。学習する内容は選ばない。状況、繰り返し、報酬さえ整えばそれでいい。

 

習慣を形成する3つの要素

①状況

状況には、当人を除いてその人を取り巻く世界のすべてが含まれる。今いる場所、一緒にいる人、日時、とった行動のすべてだ。状況の影響を自分の有利に取り入れるなら、最も手軽にできるのは「純粋な近さ」の活用だ。人は自分の近くにあるものと関わり、遠いものを見過ごしやすい。

 

②繰り返し

報酬を得られる行動を繰り返せば、脳内での情報の保存の仕方が再構築される。よって、それまではある程度努力を続けることになる。自動的になるまでに繰り返す必要のある回数は行動によって異なる。新しい行動に取り組み始めたら、それを2ヶ月と1週間繰り返す。そうすれば、自動的に行う感覚は大幅に高まる。

 

③報酬

1回目の挑戦でごくわずかな報酬すら手にできなければ、習慣の形成は決して始まらない。報酬に習慣の形成の一端を担わせたいなら、普段得ている以上の報酬にしないといけない。そうするためには、事前の計画や創造力が多少は必要になる。習慣の形成に最も効果的な報酬は、行動に「内在」するもの、あるいは行動自体の一部になっているものである。そして、すぐに報酬を手にすることが何度も繰り返す鍵となる。