21世紀の社会契約

発刊
2022年4月8日
ページ数
292ページ
読了目安
521分
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これからの社会をどのようにしていけば良いのか
環境破壊や貧困、高齢化、世代間格差など、社会の変化に対して、20世紀の社会契約は対応できていない。テクノロジーの進歩やグローバリゼーションなどの様々な環境変化によって生じた社会問題に対して、私たちはどのような社会システムを構築すれば良いのか。

今後、豊かな社会を構築するために必要な社会契約の要素を考察しながら、それらを実行可能にするためにどのように経済的に両立していくべきかを提案しています。

個人がより多くのリスクを引き受けている現代

社会とは、すべてである。私たちの多くは、一人で生まれて一人で生きているようなつもりで日々を過ごしている。自分の運命は両親のおかげだと思っている人もいるかもしれない。だが、運命を左右するもっと大きな力について、私たちはほとんど考えることがない。

社会がどのように構築されているかは、そこで生きる人々の生活に、そして彼らが出会う機会のあり方に深い影響を与えてきた。それは人々の物理的状況のみならず、幸福度や人間関係、そして人生の見通しをも左右する。
社会の構造を決定するのは、政治や法のシステムなどの制度、経済、さらには家庭や共同体の生活がいかに組織されているかだ。すべての社会は、何かの物事を個人に委ね、別の何かを集団的に決定するよう選択している。そうした集団的機構の働きをつかさどる規範やルールを「社会契約」と呼ぶ。それこそが、人がどんな人生を送るかを左右する最重要な要素の1つなのだ。

 

この時代、多くの社会では人々は失望を感じている。人々は社会契約や、社会契約によってもたらされる生活に不満を抱いている。その理由は、技術的な変化や人口統計的な変化の重みで従来の社会契約が壊れたことにある。その結果、以前よりも多くのリスクを個人が引き受けるように、例えば育児を自分でしたり、失業したら自分でスキルを身につけたり、老いたら自分で自分の世話をしたりするようになっている。私たちは徐々に「自分のことは自分で」という社会に生きるようになっている。その結果、怒りの政治や精神的不調の蔓延、そして老いも若きも自身の将来を憂うる事態が引き起こされている。

 

新しい社会契約の原則

今必要なのは、万人に安心と機会の双方をよりうまく組み立てて提供してくれる社会契約であり、「私」よりも「私たち」を重視し、私たちの相互依存性を認め、双方に利益をもたらすためにそれを用いる社会契約だ。私たちに必要なのは、より多くのリスクをプールしたり分け合ったりして、みなが直面する不安を減じる一方、社会の中で才能の活用を最適化し、個人がそれぞれ最大限社会に寄与できるようにする社会契約だ。それは次の3つの大きな原則に基づくべきである。

 

①すべての人に安心を

文化的生活を送る上で最低限の収入を万人に保証するべきだ。この「最低限」のレベルは、国がどれだけお金を出せるかに左右される。

 

②能力に最大限の投資を

社会は、市民が生産性を発揮し、公益に可能な限り長く貢献する機会を創出するために、できるだけ多くの投資を行う必要がある。社会はさらに公益のために、たとえば炭素の排出や肥満など、私たちが望まない物事を減少させるようなインセンティブを提供するべきだ。

 

③効率的で公平なリスクの共有を

今はあまりに多くのリスクが間違った場所に課されている。個人、家庭、雇用主、国との間で割り当てを変えれば、もっと適切なリスク管理が可能になるかもしれない。

 

新しい社会契約に必要な要素

新しい社会契約の根底にあるのは、文化的生活を送る上で必要なごく基本的なもの、最低限の収入、教育を受ける権利、基本的な医療、そして老いた時に困窮しないための守りなどを万人が保証されることだ。

 

・最低限の収入

最低賃金を定めたり、低所得労働者の収入に税額控除で実質的な上乗せをしたり、最も困窮している世帯を対象に現金給付をしたりすることだ。

 

・最低限の教育を受ける権利

幼児教育や生涯学習も含まれるべきであり、生涯学習の財源は一般課税や雇用主によって賄われたり、あるいは寛大な条件のローンなどで支払われたりするべきだ。

 

・最低限の医療

WHOが推奨する「基本医療のパッケージ」の要素がすべて含まれていなくてはならない。さらに、どの保健介入が公金で行われるかを定義する閾値がなければならない。

 

・老いた時に困窮しないための守り

病気休暇や失業手当などの最低限の給付金はすべての労働者に、どんな雇用契約を結んだかにかかわらず、給付されるべきだ。そして老後の貧困を防ぐために、平均寿命とリンクした最低限の公的年金がなければならない。

 

財源をどうすべきか

新しい社会契約の経済性と、それをどう工面できるかは、私たちがこれから向き合うことになる問題だ。すべての国々にとって、新しい社会契約をつくるには複数の政策の連携が必要になる。中でも重要な戦略は次の3つだ。

 

①生産性の向上

生産性の向上で利益を得るには、より良い技術やより良い管理方式の導入や、教育及びインフラへの投資、そして競争を推進して効率性を高めることなどが必要だ。

 

②財政政策の見直し

新しい社会契約の財政を支えるのは、生産性向上のための方策(勤労年数の長期化、才能の有効利用)と税収を組み合わせることが必要だ。新しい社会契約の財源を賄うには、機会の配分を根本的に変えて平等に近づけるやり方の方が、富の再配分という事後的なやり方をするより、はるかに効率的である。

 

③産業界との新しい契約

ビジネスをも巻き込んだ新しい社会契約は、教育やスキルに投資したり、貧困地域により良いインフラをつくったり、イノベーションや生産性の向上を後押ししたりすることによって、富の再分配や補償の必要性を減らし、より多くの勝者を作り出すことに焦点を合わせるべきだろう。

参考文献・紹介書籍