起業の失敗大全 スタートアップの成否を決める6つのパターン

発刊
2022年3月30日
ページ数
316ページ
読了目安
580分
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スタートアップが失敗する6つのパターン
なぜ、スタートアップの大部分は失敗するのか。ハーバードビジネススクールで「起業家マネジャー」クラスを担当する著者が、スタートアップが失敗する原因を調査し、その失敗のパターンを解き明かした一冊。

アーリーステージ、レイターステージのそれぞれで、多くのスタートアップが陥る失敗パターンを、実際の事例をもとに解説しています。スタートアップを起業する前に理解しておくと、事前に失敗の本質を理解することができます。

良いアイデアと悪い相棒

多くのアーリーステージの企業は、起業家が有望な機会を見つけても失敗する。言い換えれば、スタートアップの成功には優れたコンセプト(構想)が必要であるものの、それだけでは十分ではない。多くのVCは、事業機会よりも起業家の方が重要だと考えているが、起業家だけに焦点を当てると、ベンチャー企業にとって重要な役割を果たす他の関係者が無視されてしまう。起業家だけでなく、従業員、戦略的パートナー、投資家など、幅広いステークホルダーとの問題が、ベンチャー企業の破滅につながる可能性がある。

この失敗パターンの核心は、起業家の業界に関する経験不足にあることが多い。結局のところ、有望なアイデアがあっても、それを実行するための知識や経験がなければ、うまくいかない。

 

フライング

スタートアップの失敗の原因として「市場のニーズがない」が最も多く挙げられる。こうしたケースでは、十分な顧客調査を行う前に最初のプロダクトローンチを急いでしまったケースが多い。

フライングは、顧客調査を十分に行わずに最初のプロダクトを急いでローンチした結果、せっかく見つけたチャンスに問題があることに気づくというパターンである。早期の正しい顧客からのフィードバックを軽視し、MVPによる検証を怠ると、欠陥をすべて修正するための時間がなくなり失敗する。

時間はアーリーステージのスタートアップにとって最も貴重な資源であり、フライングはフィードバック・サイクルを無駄にする。その後も、チームはより魅力的な機会に向けて、ピボットを試みる。しかし、ピボットには時間がかかり、それに伴って希少な現金も消えていく。

 

擬陽性

スタートアップの初期の顧客からの良い反応に基づいて市場の需要を過度に楽観視すると、起業家は間違った機会を追求し、その過程で手元の資金を使い果たしてしまう。リーン・スタートアップは、自分たちのソリューションに対する需要の強さを示す「偽りのシグナル」に注意するよう警告している。しかし、起業家には見たいものを見てしまう傾向がある。

擬陽性とは、一部のアーリーアダプターの熱狂に魅せられた起業家が、その需要の強さをメインストリーム市場に誤って反映させ、アクセルを踏み込んでしまうことである。

 

スピードトラップ

スピードトラップに陥ったベンチャー企業は、魅力的な機会を見出している。アーリーアダプターがプロダクトを受け入れ、その噂を広める。これにより、マーケティングに過度に投資することなく、より多くの顧客を引き寄せることができる。また、初期の急速な成長は、投資家を魅了する。投資家は、高額な株価を正当化するために、積極的な拡大を求める。

そして、マーケティングを集中的に行なった結果、当初のターゲット市場は飽和状態となり、さらなる成長のためには、顧客層を広げて新たなセグメントを獲得する必要がある。しかし、次の顧客層は、アーリーアダプターほど提供価値に魅力を感じていない。新しい顧客は消費金額も少なく、再購入してくれる可能性も低くなる。同様に、クチコミで紹介してくれる可能性も低くなり、マーケティングに多額の費用をかけなければならず、顧客獲得コストが上昇してしまう。そして、ある時点で新規顧客の獲得には顧客がもたらす価値以上のコストがかかるようになる。

 

助けが必要

「助けが必要」のパターンでは、成長と共にプロダクトと市場の適合性は維持しているものの、拡大を続けるために必要な2種類のリソース不足が原因で失敗する。

1つ目は資金調達。ある産業セクターが突然VCの人気を失うことがある。下降気流に乗ってしまうと、健全なスタートアップでさえ新たな資金を集めることができない。

2つ目は、シニアマネジメント・チームのギャップに関するもの。規模が拡大しているスタートアップでは、エンジニアリング、マーケティング、財務、オペレーションなどの分野で急速に拡大する従業員を管理できる、各分野に精通したシニアマネジャーが必要である。このような人材の採用を遅らせたり、不適切な人材を採用したりすると、戦略の迷走、コストの高騰、組織文化の機能不全などを招く。

 

奇跡の連鎖

大胆なイノベーションを追求するスタートアップは、多くの大きな課題に直面し、そのうちのどれか1つでもクリアできないと失敗してしまう。

  1. 行動を根本的に変えるように多くの顧客を説得すること
  2. 新しい技術を使いこなすこと
  3. 強力な企業と提携すること
  4. 規制緩和などの政府の支援を得ること
  5. 膨大な資金を調達すること

どの課題も50%の確率で良い結果が得られると仮定しても、5つすべてが良い結果になる確率は3%。成功するためには、奇跡の連鎖が必要になる。

参考文献・紹介書籍