メタバース さよならアトムの時代

発刊
2022年4月5日
ページ数
272ページ
読了目安
322分
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メタバースの現在地点と将来性について
フェイスブックが「メタバースを作る会社になる」と宣言し、社名変更をしたことで、一気に注目が集まり始めたメタバースの解説書。
これまでのメタバースの歴史から、現時点での参入プレイヤーや市場、将来性など、なぜ今メタバースが注目されているのかが紹介されています。GAFAMを始め、多くのITプラットフォーム企業が、ユーザーの時間を奪い合う中、将来のプラットフォームとしてメタバースが成功するには何が必要なのかなど、考察されています。

二度目のメタバースブーム

メタバースを直訳すれば、高次元の宇宙、宇宙を超越したものとなる。メタバースという言葉が初めて登場したのは、1992年に発表された『スノウ・クラッシュ』というSF小説だった。SF小説、SF映画でメタバースは未来の技術として描かれ、実際に現実とは別の世界でプレイヤーになることを実現したのがゲームである。ゲームの世界ではメタバースという言葉が使われないまでも、MMORPGなど同じ方向を目指して技術が発展してきた。

日本でメタバースが注目を集めたのは今回が2回目だ。1回目はリンデンラボ社が運営する3D空間サービス「セカンドライフ」が話題になった2007年頃である。現実に限りなく近く、現実よりも自由なサイバー空間というサービス設計思想が世間に受けて、2008年には登録会員数が1500万人超になった。しかし当時は通信環境やPCの性能が不十分で、完全同期型のセカンドライフで良い体験を享受することは難しかった。その結果、モバイルとの相性がいい手軽なSNSや動画サービスなどのサービス形態が伸びる一方で、メタバースのブームは失速した。

 

今回のメタバースのブームは、2021年にフェイスブックのマーク・ザッカーバーグが「メタバースを作る会社になる」と宣言し、社名をメタに変更したのがきっかけだが、そもそもはエピックゲームズとロブロックスの2社がメタバースという言葉を使って未来像を語り始めたことに端を発している。

エピックゲームズはオンラインゲーム「フォートナイト」の運営会社だ。フォートナイトの登録ユーザー数は2020年で3億5000万人超。ここでは自由にコンテンツを作成したり、フレンドと一緒に好きに遊んだりすることも可能で、ゲーム内でアーティストがバーチャルコンサートを開催している。またファッションブランドが、バーチャルウェアを売ると同時に現実の服も販売するなど、単なるゲームの枠を越えて多岐にわたる活動を行なっている。

さらにエピックゲームズは「アンリアルエンジン」というゲームエンジンを開発・販売しており、ゲーム開発を効率化するソフトウェア群を提供している。メタバースにおいて、クリエイターの存在は重要で、多くの個人や組織を巻き込んでメタバースが構築されていること自体が、メタバースを持続可能なものにする。メタバースを構築する基礎技術はゲーム技術であり、ゲームエンジンの役割は重要である。

 

ロブロックスは、オンラインのゲーム・プラットフォーム「ロブロックス」をローンチし、2021年の月間アクティブユーザーは2億人になる。彼らはゲームを作る環境を与えて、クリエイターがゲームを作ったり、楽しんだりするのを支援している。ゲーム版YouTubeと称されることも多く、クリエイターによって投稿されたゲームの数は2400万件に上る。クリエイターの収益化手段も用意されている。現金化可能なアプリ内通過を用いて、ゲームアイテムやアバターを売買することが可能で、年間の流通額は1000億円以上になっている。

 

永続性があり、3D空間があり、アバターがあり、他者とリアルタイムにコミュニケーションができ、クリエイティブ機能がある、という条件がメタバースの構成要素の最小単位だと定義すると、MMORPGは既にメタバースを実現しているという解釈が成り立つ。

但し、MMORPGは、あくまで運営がコントロールし続けることで存続するゲーム世界である。一方、メタバースは自己組織化された構造体である。そのため、プラットフォームを提供する企業が想像もつかないようなコンテンツが創造される可能性に開かれている。参加クリエイターの想像から新たなコンテンツが生まれるのである。

 

なぜ様々な企業がメタバースの実現を目指すのか

メタバースにはこれまでのネットビジネスにない有望な2つの要素がある。

 

①メディアへの接触時間

ネットビジネスはその大半が広告とEコマースだ。この内、広告ビジネスにおける大きい要素は、そのサイトにどれくらい長く滞在してもらえるか、どれくらい注意を引きつけられるか、どれくらい多くの広告枠を確保できるかの3つだ。
メタバース時代、メディアへの接触時間は、実質的に朝起きて夜寝るまで、覚醒している時間すべてとなる。長時間注意を保ち続けることができる。

 

②どうしようもない現実からの解放

世界的に有名な投資家マーク・アンドリーセンは「面白いことが起こっているぞと思えるような場所で目を覚ますことができる人は、全世界で0.1%もいない」と指摘した。地球上のほとんどの人は、今いる場所や人生がベストだと思っていない。人間は生まれてきた条件によって全く異なる人生を歩む傾向にある。
そう考えると、現実そのものを作り変えてくれるVRに惹かれる人が多いはずだという指摘は腑に落ちる。メタバースに対する希望の1つは、現実の自分がとらわれざるをえない、土地・環境・身体から解き放たれることにあるのかもしれない。