13歳からの地政学

発刊
2022年2月25日
ページ数
246ページ
読了目安
284分
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世界の情勢がとにかく簡単にわかる本
国土の地理的な位置関係や形が、国の政治や経済、軍事に大きな影響を与える。こうした要因を読み解き、世界の国々の思惑や動き方を分析する「地政学」から、主要なテーマをわかりやすく紹介している一冊。
アメリカや中国、ロシアの考え方や、様々な外交問題など、普段の国際ニュースの背景が理解できます。

物も情報も海を通る

世界中の貿易は9割以上が海を通っている。特に日本は海に囲まれた島国だからその比率が高くて99%が船による貿易だ。船を使った貿易ができなくなれば、世界の経済は一瞬にして止まってしまう。

この海ばかりの地球で一番強い国がアメリカである。アメリカが超大国と言われているのは、世界の船の行き来を仕切る国であるからだ。アメリカは世界最強の海軍を持ち続けるために、毎年10兆円以上のお金を投じていて、世界各地の海に軍艦を展開している。自分の国と遠く離れた地球の裏側までだ。

 

アメリカは、どこかの国とトラブルになったとしても、海をおさえているので、その国の貿易を止めて倒すことができる。それに世界で一番強い国であるということはとてつもないメリットがある。世界の貿易の8割で使われる通貨はドルだが、それはアメリカが世界で最も強いからだ。軍事力で圧倒的に強いことほど、強い信頼を与えてくれることはない。アメリカは世界中から物を輸入して買いまくっているが、破産しない。いくら物を買っても、ドルを刷って支払えばいいだけのことだからだ。

 

では、なぜ世界の貿易のほとんどは船によってなされているのか。物を運ぶ時に大事にすべきことは、期日までには必ず届くという信頼感だ。ところが、陸路だとそれが難しい場合もある。色んな国を通らないといけないから、そのたびに税金を払わないといけないとか、手続きが大変で決まったスケジュールに運べないとか、ハードルがあるケースが多い。世界の大陸の中でも、安定して確実に物を運べるようになっている地域はほんの一部だ。だから、多くの貿易は船によって行われる。

 

海の支配は情報をおさえることにつながる。インターネットのデータのやり取りの99%には、海底ケーブルが使われている。データが送られる速度は人工衛星よりも海底ケーブルの方がずっと早いし、海底ケーブルなしにはインターネットは成り立たない。アメリカは世界で一番多くの海底ケーブルを張りめぐらせている。2番目がイギリスだ。
データが通る場所をおさえれば、世界中のデータを盗み見して、他の国が知られたくない情報を得ることができる。今でもアメリカなど一部の国が、色んな方法を使って盗聴やメールの盗み見をしている。

 

核ミサイルは海底に潜む

核兵器は通常、他の国にわからないところに隠されている。国同士で戦争になった場合、もし核兵器のありかが敵に知られていたら、先にそこが狙われてしまうからだ。ミサイルを隠すのはなかなか難しい。人工衛星からも地上の動きはかなりつかめるので、地上に置きたくはない。そこで誰にも手出しできない海の中に隠すのだ。

原子力で動く潜水艦は、何ヶ月も浮かばずに海の中を潜っていることができる。それに静かに動き回れるので、地上よりもずっとうまく隠れることができる。そして、いざとなった時に潜水艦に積んだミサイルを、海の中から発射できるようにする。

 

核兵器は一番強い武器でも、ただ持っているだけでは不十分だ。いつでも潜っているための原子力潜水艦、海の中からミサイルを発射する力、それに潜水艦を隠すための深く、自分の縄張りにできる安全な海という3つを確保できて、初めて最強のアイテムになる。少なくとも核を持つ国は、そうすることによって自分の国は敵に攻撃されず、安全になると信じている。そして現在、この最強のアイテムを完全な形で持っているのは、アメリカとロシアだけだ。

ロシアは水深が3000m以上のオホーツク海に、ソ連の時代から今に至るまで、原子力潜水艦を潜らせてきた。そして主にアメリカに照準を合わせている。今もアメリカから攻撃されるようなことがあれば、すぐに反撃できるように準備している。

 

この最強のアイテムを手に入れるために、世界と揉めごとを起こしているのが中国だ。中国沿岸には原子力潜水艦が隠れる深くて安全な海がない。中国が原子力潜水艦を隠すのならば、南シナ海しかない。だが、ここはどんな国の船でも自由に入ってくることができる国際的な海で、アメリカ軍の船も入ってきている。
今、中国はここの浅い場所を埋め立てて、人工島を無理やりつくって、軍事基地をたくさん建てている。ベトナムやフィリピンなど周囲の国の声に耳を貸さずに独り占めしようとしている。

 

中国が最強の武器を手に入れたい理由は、アメリカに中国の中のことに手出しをさせないためだ。19世紀から20世紀にかけて、中国はヨーロッパや日本といった強い国から、あちこちの土地を取られていた。だから、外国の言いなりになって、相手の都合のいいように国制度を変えられることを恐れている。自分たちはバラバラになったり倒されてしまうのではないかと、疑心暗鬼になっているわけだ。

アメリカに並ぶ国として、対等だと認められれば、自分の国ことに手出しをされなくなる。そしてそのうちアメリカと話をして、自分に近い太平洋の西側は自分の縄張りだと認めさせられると思っている。