持続可能なキャリア 不確実性の時代を生き抜くヒント

発刊
2022年2月21日
ページ数
192ページ
読了目安
350分
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推薦者

不確実な時代にどのようにキャリアを構築すべきか
人生100年時代、これまで以上にキャリアは不確実なものになる。不確実性の時代に対して、どのように対応していくべきか、キャリア研究の最新動向や今後の研究の方向性などが紹介されている一冊。
未だ研究ではわかっていないことも多いが、不確実性の時代に持続可能なキャリアを築けばいいのかという視点が提示されています。

持続可能なキャリアとは

この数十年におけるキャリア研究は、人生100年時代の到来、労働力人口の高齢化、グローバル化の加速、情報技術の飛躍的発達などにより、個人、文脈、時間というキャリアの3つの次元に起こった大きな変化を十分捉えきれていなかった。

持続可能なキャリアとは、こうした時代の変化を踏まえて提供された、キャリア研究における新たなパラダイムである。

 

持続可能なキャリアとは「長期間にわたる、いくつかの社会的空間のもとでの様々なパターンの継続の中で意味づけられた、個人の主体性に基づくがゆえに個人にとって意味深い、異なるキャリア経験の積み重ね」と定義される。

 

キャリアとは本質的にダイナミックに変化するものであり、仕事の選択、ある仕事から次の仕事への変化(転職や職種転換)、ある状態から次の状態への移行(失業、引退、一時的な休暇など)といったイベントや決断が円環状に回る中で形成される。「長期間にわたる様々なパターンの継続」という視点を持つことで、今どのような判断をすることが将来のキャリアの持続可能性につながるかという発想が可能になる。

 

持続可能なキャリアの理論モデル

持続可能なキャリアは、個人、文脈、時間という3つの次元で構成され、その成果は健康、幸福、生産性という3つの指標の総和として示される。

 

①個人

時と共に変化する個人の欲求と個人を取り巻く文脈のマッチングを行っていくためには、環境に働きかける「能動性」と環境に適応する「適応力」の2つの主体性が必要となる。
また、健康、幸福、生産性を揃えた持続可能なキャリアを歩むには、キャリアの意味が明確である必要がある。仕事を意味深いと感じることが、モチベーション、エンゲージメント、満足といったポジティブな態度や行動をもたらすからである。

 

②文脈

組織だけでなく、家庭を含めた様々な文脈と個人の長期にわたる相互作用に注目する。持続可能なキャリアでは様々なステイクホルダー(会社、同僚、家族など)とのオープンな意思疎通を重視する。

 

③時間

個人の性格、仕事に対する価値観、仕事に向き合う態度、目標や動機などは、年齢を重ねるに従い変化する。持続可能なキャリアでは、長期にわたる幅広い文脈の中で、ポジティブ、ネガティブ双方のイベントに適応しながら、過去、現在、未来を意味づけていくダイナミックなプロセスである。
キャリアにおける選択や出来事は、その直後に影響が出ることもあれば、長い時間を経た後に影響が明らかになることもある。従って、ある時点でどうかという短期の判断ではなく、長い目で見てどうすればキャリアが持続可能になるかという長期の視点が重要になる。

 

キャリアの不確実性に対して必要なもの

キャリアにおける不確実性は、グローバル化や情報技術を中心とした技術革新が急速に進んだ1990年代に、欧米で多くの企業がリストラやダウンサイジングを経験したことを契機に強く意識されるようになった。それまで安心して自らのキャリアを委ねていた組織の安定性が失われたことは、自らのキャリアを管理することへ自覚を芽生えさせ、それまでの伝統的なキャリア観に代わる新たなキャリア観を生み出した。その代表が、「プロティアン(変幻自在な)・キャリア」と「バウンダリレス(境界のない)・キャリア」である。これらは、キャリアは組織から一方的に与えられるものではなく、個人が責任を持って管理すべきものであるとの認識を高めた。

 

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こうしたキャリア研究の成果を踏まえつつ、現代のような不確実性の時代に向き合うためには、「キャリア・アダプタビリティ」という様々な転機を乗り越えながら、自らキャリアの物語を構築するための心理的資源が必要になる。

キャリア・アダプタビリティを構成する因子としては、次の4次元がある。

 

①関心:将来に向けた準備に対して、向き合い、関わっている程度

②コントロール:意思決定について真面目で責任を持つことで示される自律の程度

③好奇心:仕事の機会を求めて、環境を探索したり、情報を集めたりする程度

④自信:問題解決や障害を克服する能力についての確信の程度

 

適応は方向づけ、探索、確立、管理、離脱という5つのステップからなるサイクルを回すことで実現する。不確実で見通しの悪い環境の中で、こうしたサイクルを回すためには、将来を方向づけ、準備するための「関心」、自分の可能性とキャリア機会を探索する「好奇心」、将来のキャリアを確立、管理、離脱するための「コントロール」、そしてこれらに関わるキャリア関連の課題をうまく解決することへの「自信」といった心理的資源が不可欠である。

 

キャリア・アダプタビリティがその機能を有効に発揮するためには、様々な個人要因が先行要因として必要であることがこれまでの研究でわかっている。主要なものとしては、感情的知性、能動性と確固たる自己評価、希望と楽観主義、粘り強い目標追求と柔軟な目標調整、仕事における未来自己といった個人特性である。