小林製薬 アイデアをヒットさせる経営

発刊
2022年1月20日
ページ数
232ページ
読了目安
250分
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小林製薬の経営戦略
アンメルツ、ブルーレット、サワデー、熱さまシート、消臭元など、次々にヒット商品を生み出す小林製薬の会長がその経営戦略を紹介している一冊。大手メーカーが目をつけていない市場で、新しい価値を創造する同社のマーケティングや、製品開発、組織運営の考え方が書かれています。

新しい製品を開発する時やアイデアをカタチにする時に気をつけるべきポイントがよくわかります。

ニッチなマーケットで闘う

小林製薬は、「ブルーレット」や「消臭元」といった衛生日用品、テレビCMでも使う「”あったらいいな”をカタチにする」で知られている。2020年売上は1505億円で、23期連続の増益ができている会社である。

小林製薬が現在のように伸展できた理由は、「ニッチャー」にこだわり続けてきたからだと言える。まだ市場になく、それでもお客様が「あったらいいな」と思う。その潜在的ニーズを掘り当てるアイデアを生み出し、ニッチなマーケット向けに絞り込むための製品コンセプトを創り上げる。そのコンセプトに基づく新製品を開発し、市場に投入し、ヒット商品に育てていく。このようなビジネスモデルの具現と進化に、経営上のあらゆる要件を最適化させていった。

 

ニッチなマーケットで闘うという小林製薬の経営の在り方を、「小さな池の大きな魚」戦略と呼ぶようになった。魚がいそうな小さな池を探し出し、釣り糸を垂らす。ただ釣るのではなく、他の釣り人が来ないうちに、真っ先に足を運び釣る。

この独自の戦略の確立にとって原体験となったのが、現在も市場で支持される「アンメルツ」「ブルーレット」「サワデー」の開発と育成だった。いずれも米国留学時代に想を得たものだ。当時は米国で流行したものが世界中に広められていったので、勝負所は日本で販売されていない商品を、いかに先んじて発見し、つくり、販売するかにあった。

 

・「サワデー」

1970年代になっても、日本は欧米と違って、トイレや部屋の芳香消臭剤という市場が未成熟だった。その中で、「爽やかな香り」「花の香り」のする芳香消臭剤というニーズを掘り起こし、「サワデー」は大ヒットした。
「御不浄」と呼ばれていたトイレの用品に手を出すのは一流メーカーの仕事ではないと思われていた。大手が「やりたがらないビジネス」だからこそ、小林製薬の入り込む余地があった。開発では、米国で売られているものを参考に、日本のトイレ事情にあうよう、改良を重ねた。

 

・「ブルーレット」

レバーを引くとタンクから青い水が流れ出し、よい香りが漂い、便器もきれいにするブルーレットは、日本の家庭をトイレ掃除という大変な家事から解放する画期的な商品だった。ブルーレットの成功を受けて、他社からも同様の商品が出されたが、先んじて市場を創り、卸業や小売業の協力も受けて、しっかりと商品を育て、早い段階でトップの地位を確立したことで、「トイレに流れる青い水」と言えば、誰しもブルーレットを思い浮かべる状況ができあがっていた。

 

・「アンメルツ」

まだ消費がほとんどない市場を狙い、発売した外用消炎鎮痛剤「アンメルツ」は、肩こりに伴う肩の痛みや筋肉痛を緩和する医薬品である。当時、肩こりや腰痛の消炎鎮痛用の薬と言えば、日本では貼り薬だった。それに対して、アンメルツは液体状の塗り薬で、既存の商品とは異なる特性を持っていた。「貼る」という需要に対して「塗る」という柵を立て、囲い込むことによって、「小さな池」をつくることを目論んだ。

 

「小さな池の大きな魚」戦略において、最も重視されるべき着眼点は「小さな池」である。例えば歯磨き粉の市場は、有名メーカーが鎬を削る巨大な市場である。小林製薬は、そこで「生葉」という植物由来の天然成分を配合した「歯槽膿漏予防用」の歯磨き粉を販売した。つまり、「大きな池」を柵で囲い、「歯槽膿漏予防」という「小さな池」をつくり、そこで「大きな魚」を釣り上げることにした。

 

「わかりやすさ」が肝

「わかりやすく相手に伝える」ことがマーケティングや広告の「肝」である。衛生日用品の世界では、製品を説明するのに、難しい言葉は必要ない。それゆえ、わかりやすい言葉で相手に納得してもらうことを、仕事上の鉄則としている。

小林製薬の製品開発では「ネーミング」「パッケージ」「広告」「販促」の大きく4つを重視する。重視するとはすなわち、それら製品開発に関わるすべての過程において「いかにお客様にわかりやすく伝えるか」を第一に考える。

 

アンメルツは、湿布を「貼る」のが当たり前の時代に、「塗る」という独自性を考案し、製品化したものだが、それだけでヒット商品になったわけではない。アンメルツは、肩こり専用の薬ではなく、筋肉痛や腰痛の緩和にも使用できる。しかし、筋肉痛を緩和する医薬品はたくさんある。例えば久光製薬のサロンパスは圧倒的に高い知名度を持っている。

そうした有力企業がひしめく「大きな池」ではなく、「小さな池」で勝負することを選択した。すなわち、肩こりという症状を緩和したい方々に絞り込んで、深掘りをした。

 

あれもこれもではなく、絞り込む。そこに「わかりやすさ」が生まれる。その上で、効用や利便性を「シンプル」に明記する。「シンプルである」ことは「わかりやすさ」そのものである。肩こりの緩和という効用を強調し続け、「わかりやすさ」と「シンプル」を追求し続けたことで、次第にお客様が「肩こり=アンメルツ」と連想してくれるようになり、一定のシェアを獲得し、維持している。