すべての組織は変えられる

発刊
2015年8月19日
ページ数
205ページ
読了目安
221分
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組織をうまく変える方法
組織をうまく機能させるために、リーダーは何をするべきか。組織人事のコンサルタントが、リーダーとして心得るべき「ヒト」への投資について紹介しています。

リーダーとしてのスキルを学ぶべき

経営的に問題がある企業は組織がうまくいっていない。多くの企業で、仕事のやりがいが感じられない、組織の目指す方向性が見えない、上司とうまくいっていないといった事で社員が苦しんでいる。

これを立て直すために最も効き目があるのが「職場のリーダーが変わること」である。これまでほとんどの組織でリーダーに就いてきたのは、自分が所属している部門で実績をあげた人である。営業、企画、開発、彼らは能力を持っているが、それらはリーダーとして組織を束ねる能力とは異なる。

組織づくりにおいて、問われるのはリーダーとしての「スキル」があるかないかである。そして、スキルは教育によって身につける事ができる。

 

メンバーのモチベーションを高める

人のモチベーションを高めるには、想定すべき4つのタイプがある。

①アタック(達成支配欲求が強い)
・自力本願で強くありたい
・周囲に影響を与えたい
・意志薄弱な状態や人への依存を避けたい

②レシーブ(貢献調停欲求が強い)
・人から愛されたい、平和を保ち葛藤を避けたい
・中立的な立場でいたい
・他者との戦いよりも協調を大切にしたい

③フィーリング(感性発散欲求が強い)
・新しいものを生み出したい
・楽しいことを計画したい
・自分の個性を理解されたい
・平凡であることや同じことの繰り返しを避けたい

④シンキング(論理探求欲求が強い)
・様々な知識を吸収したい
・複雑な物事を究明して自信を持ちたい
・勢いだけで走ること、無計画な状態を避けたい

リーダーがメンバーのモチベーションを高めようとする際には、タイプに合わせた対応が必要になる。アタックタイプなら「うまく契約をまとめたな。すごいじゃないか」といった声かけがさらにモチベーションを高める事になるし、フィーリングタイプでは「企画書を見たよ。面白いね」という対応が有効である。

日頃から観察眼を働かせて、メンバーのタイプを見極めておく事が、組織をうまく機能させるために、リーダーが心得ておくべき事である。

 

感情が成果に大きな影響を及ぼす

人間は戦略によって動くのではない。合理性だけで動かない。人間を行動に導く上で重要なファクターは感情である。しかし、感情は多様化、複雑化している。そこに、感情への働きかけ方の難しさ、リーダーシップの発揮の仕方の難しさがある。

かつては、高い給与やポストを誰もが求めていた。感情を動かすにはそこに働きかけるのが最も有効だった。金銭報酬、地位報酬によって、人の感情は動き、行動につながった。しかし、今は給与やポストだけでは感情は動かない。その仕事が自分にとってやりがいがあるか、顧客を喜ばせる事ができるか、社会の役に立つのか。仕事に意味を求めている。その意味に応える、意味報酬があるかどうかが重要である。

但し、意味報酬の中身は1人1人で違う。そのため、リーダーにはそれぞれが求めている意味報酬を見極め、それに応えていく事が必要になる。

 

感情を変えるステップ

人の感情や気持ちを変えるには、正しい手順を踏む事である。

①解凍(相互不信を解く、期待感を醸成する)
理解や共感のためには、相手の話を聞く事が前提になる。

②変化(共感を引き出す、納得感を醸成する)
現状維持バイアスが変化の妨げになる。この過去慣性を解くためには、現状の危機感を自分で認識する、そして、その危機から脱するための方法を自分で考える事が重要である。

③再凍結(仕組み化する、変化を実感させる)

 

リーダーと現場の視点の違いに目を向ける

問題を抱えた組織の共通点は「問題の原因となっている誰かを突き止めようとする」こと。つまり犯人捜しを行っている事である。しかし、犯人を特定してみたところで、組織の問題は解決しない。

トップやリーダーと現場の人達との思いの差は、立場や役割の違いから生まれる。トップやリーダーは、中長期的な視点で現状からゴールまでを捉え、戦略を決定する。しかし、ビジネスは生き物だから、現状は常に変わる可能性があり、戦略にも修正や練り直しが必要になる。それを行うと、現場からは「コロコロ変わる」と見える。一方、現場は、今日何をやるか、明日何をやるかという事を考えるため、視点は短期的なものになる。そこに戦略の変更が伝えられても、すぐには対応できない。リーダーにとって、そんな現場が「柔軟性がない」「スピード感が足りない」と映る。

トップやリーダーと現場との対立関係という組織の問題は、ここにポイントがある。「誰が悪いか?」ではなく、立場や役割の違いに目を向けること。すると問題解決の糸口が見つかる。それぞれの立場と役割に目を向ければ、双方に納得感が生まれる。