Digital-Oriented革命 DXが進化した究極の姿を描く

発刊
2022年1月14日
ページ数
238ページ
読了目安
289分
推薦ポイント 8P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

DXの理想像とは
日本で進まないDX(デジタル・トランスフォーメーション)の要因を説明し、それを乗り越えるためには、DXの先にある未来像を描く必要があると説いています。人が中心の業務構造から、デジタルが中心の業務構造へと、そもそもの発想の転換こそがDXの鍵だとして、そのコンセプトを描いています。

DX推進を阻害する3つの要因

デジタル技術の影響はまさに産業革命レベルであり、極めて大きな価値の転換をもたらしている。企業にとってデジタル技術は最も重要な競争優位の源泉をなし、デジタル技術活用の巧拙が文字通り存亡を分ける。

しかし、日本企業のDXは停滞している。新しいデジタル技術のPoC(概念検証)やツール導入は盛んだが、全社的な改革にはつながっていない。日本企業のDXは、部門内の「改善」にとどまっており、部門横断的な「改革」へと発展しないのが現実である。

 

その根本的な原因は、日本企業独特の経営スタイルにある。高度成長期やバブル期の成功体験を経て日本企業が形成してきた「日本的経営スタイル」が時代遅れとなり、むしろ内部構造の硬直化を招くようになって、部門横断的なDXの推進、全社的な改革を妨げている。この日本企業のDXが停滞する要因は、次の3つにまとめられる。

 

①現場重視の業務構造

日本企業は終身雇用のため勤続年数が長く、同じ部署に長く勤務することも多い。現場の業務担当者は熟練化し、現場単位でカイゼンを重ねていく力があったため、あらゆるケースに対応し、きめ細かくつくり込まれた業務プロセスが形成された。しかし、こうした経営スタイルは業務や組織のタテ割り化、個別最適化を助長した。さらに、現場で確立した業務プロセスを尊重するあまり、プロセス全体を部門横断で見直すことになかなか踏み切れなくなってしまった。

 

②同質・大量確保の人材マネジメント

単一事業で量的拡大を図る企業では、独創的なアイデアを生み出すことよりも、増大する業務をいかに効率よくミスなくこなしていくかが重視され、率直で一定程度以上の能力を持つ同質的な人材が大量に必要とされた。しかし、今日本企業に必要なのは、単一事業・大量生産に適した人材ではなく、これまでの常識や前例にとらわれず発想し、革新的な製品・サービスを生み出したり、全く新しいやり方を試したり、先導したりする人材である。同質・大量確保の人材マネジメントのままでは、事業や業務を変革するDX人材が生まれず、全社改革のネックとなってしまっている。

 

③ITに対する日本企業特有の捉え方

本来はビジネスを飛躍的に向上させる可能性を持つITを、日本企業は長らく、単なる「効率化の手段」と捉え、「必要に迫られて導入するもの」と考えてきた。そして、ITはIT部門に任せるもので経営の根幹には関わらないもの、社外ベンダーから無難な製品を調達すればよいもの、として扱ってきた。DXを成功させるには、デジタル技術を「変革の手段」と捉え、特定部門に任せるのではなく、経営層がコミットして指揮をとり、ベンダーに丸投げせずに優秀な人材を投入し、自ら事業や業務を変革していかなければならない。

 

DXの未来型モデル

DXの阻害要因を克服するために必要のは、「DXの究極の姿、未来モデル」を提示し、ゴールをイメージさせ、発想の転換を図ることである。その未来モデルが「Digital-Oriented」というコンセプトである。

業務を遂行し統制を利かせるのはあくまで人であり、デジタル技術はその補助を担う「人中心」の考え方から、デジタル技術を中心に業務遂行と統制が行われ、人は必要最小限の情報や判断を与える「デジタル中心」の考え方に転換する、というコンセプトである。
Digital-Orientedの世界では、業務プロセスが根底から変わるだけでなく、業務プロセスと密接に絡み合うシステムや組織のあり方も一変する。そこにあるのは、デジタル技術が業務遂行の大半を担い、人が創造力を最大限に発揮できる企業の姿である。

 

「発想の転換」の対象は、「人が中心になって業務を進める」という前提だ。人がシステムを操作し、人が業務に習熟し、必要なルールや制度を人が覚える。あらゆることを人が監視・管理して権限を行使し、その責任を果たしていく。
この考え方を、AIやRPAなどデジタル技術が急速に進化してきたことを受け、業務遂行の主体を人から「デジタルワーカー」へと切り替えてみる。組織ごとの責任・権限、制度やルール、業務プロセス、システム操作をデジタルワーカーに覚え込ませ、デジタルワーカーが人と対話し、意思決定を引き出しながら業務を遂行していく。あらゆる情報は人ではなく、デジタルワーカーに紐付き、デジタルワーカーを中心とする構造が業務の基盤をなす。このような考え方、構造が「Digital Oriented」である。

人から見ると、デジタルワーカーはスマートフォンアプリのチャットボットのように振る舞う。人から「◯◯したい」といった指示を口頭で受け取ると、その業務をスタートさせる。デジタルワーカーを業務の中心とし、業務の主体に必要な責任・権限、制度・ルールの知識、業務プロセスの理解、システム操作を、「人から分離して」デジタルワーカーに委ねていく。これがDigital-Orientedの基本コンセプトである。