本業転換――既存事業に縛られた会社に未来はあるか

発刊
2019年7月19日
ページ数
224ページ
読了目安
258分
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衰退していく企業はいかに生き残るべきか
富士フイルムやブラザー工業、日清紡、JVCケンウッドなどの事例をもとに、本業転換を成功させた企業と失敗する企業に共通する点は何かを紹介する一冊。

本業転換

製品や事業にライフサイクルがある以上、本業が衰退してしまう現象はどの時代にも、どの企業にも起こりうる。そのきっかけは、アナログからデジタルという技術の変化であったり、低コスト生産を目指してのグローバル化であったり、規制緩和であったり、様々である。

大企業が永続していくためには、事業構造を変えていく必要がある。本業が成熟・衰退した場合、企業は2つの手を打たなくてはならない。

①成熟・衰退した本業からキャッシュを刈り取る
②次世代の成長のための新事業の開発

本業転換に必要な視点

企業の生き残り戦略を整理すると、本業に代わる事業として「どの事業を選ぶか(What)」と「新事業の開始時期(When)という2つの視点が重要である。

存続企業の共通点は、本業に代わる新たな収益源として、自社の技術やノウハウを生かせる分野を選定していた。また、新事業を開始した時期は、本業から得られるキャッシュフローがまだ十分であり、企業体力がある時期であった。つまり、WhatにもWhenにも成功していた。

一方、衰退企業の共通点は、本業に代わる新たな事業として、何をやるべきか、何をやるべきでないかという事業の選択がうまくできなかった。また、戦略を実行に移す時期が遅すぎた。つまり、WhatとWhenのいずれか、または両方につまずいた。

本業の衰退は、経営の根幹を揺るがす危機である。本業の衰退スピードを的確に予測して、事業構造を組み換えながら、企業として生き残っていかなければならない。次の収益の柱として事業が成長するまでには、ある程度の時間と資金を要する。選択した事業が花開くまでには、いくつもの失敗も経験しなければならない。そのための財務力も必要である。このように、本業転換にはWhatとWhenの両方の視点で、正しい戦略を打つことが必要である。

本業転換にあたっての経営上の示唆

①本業と新事業の関連性
本業と関連の高い多角化の方が成功確率は高いと言われるが、その関連性を考える上で2つの注意点がある。

1. 遠そうで近いもの
市場や業種から見れば遠いものであっても、外から見えないコア・テクノロジーでシナジーが見込める場合がある。

2. 近そうで遠いもの
マネジメントにおける重点の置き方などの違いによって、関連多角化のリスクが低いとは必ずしも言い切れない。

②やらないことを貫く
環境が激変している時期には、今後「何をすべきか」という予測は難しい。しかし「やらない」というのは、企業の意志であり、その分野に資源を投入しないということであり、環境が変わろうがぶれることはない。

③本業転換を早急に求めない
日本企業の場合、買収で本体と同じような規模の事業を取得すると、マネジメントの上で難しい問題が起きる。自社より大きい会社を買収した経験がほとんどないからである。

④新事業に本業の規模を求めない
大きな本業が衰退していく中、企業は会社の事業規模を維持することに目が行きがちである。通常、本業はその企業で一番大きな売上を占めており、規模も大きい。その売上減を補うのに、規模が1/20の事業を始めても、経営者には焦りが出てくる。

⑤転換の必要のない時に本業転換の準備をする
本業が衰退し、キャッシュフローが十分得られなくなった段階では、多額で長期の投資が必要な事業には進出できない。