弱者の戦術

発刊
2021年12月1日
ページ数
240ページ
読了目安
276分
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推薦者

コロナによる経営危機を脱した方法
体験型レジャー予約サイトの運営企業が、コロナによって売上ゼロになったところからV字回復したストーリー。コロナ禍にあって、売上が消失した中で、従業員130名を抱え、どのように経営危機を乗り切ったのか。経営危機の状態でどのようなことを考え、何を行ったのかが紹介されており、有事の時の経営とはどのようなものかがわかります。

未曾有の危機でやったこと

遊びの予約サイト「アソビュー!」の取り扱い対象となっているのは、スキューバダイビングやラフティングといったアウトドア、遊園地や動物園、水族館などのレジャー施設が中心である。アソビューは、2011年創業以来、順調に成長していたが、2020年4月、どん底に叩き落とされた。コロナ禍による「お出かけ自粛」で大打撃を受けた。
2020年4月と5月の売上は昨年対比「マイナス95%」まで落ち込んだ。週によっては実質売上ゼロ。「観光・レジャー産業に未来なし」として投資家からも軒並み見放された。

 

当初、大型の資金調達の話が複数進んでいたので、それさえ実行できれば、1年くらいの売上毀損分ぐらいは挽回できるだろうと考えていた。ところが、資金を拠出してくれるはずのベンチャーキャピタル各社の雲行きが怪しくなり、資金調達が絶望的となった。既存の株主やステークホルダーからは「どうなりそうですか?」といった連絡が相次いだ。中には「会社の売却を検討した方が良い」という助言すらあった。平時では応援してくれていたはずの方々が、有事の際には真逆の存在に変わっていく。

 

キャッシュフロー改善の見通しが立たないため、有期契約である業務委託、アルバイト、インターンの方たちに契約延長の提案をすることができず、3月末ですべて契約終了となった。

緊急事態宣言が発出される前日の4月6日に、全従業員をオンラインで招集した。伝えた方針は2つ。1つ目は事業の継続である。会社は絶対に畳まず、サービスは何が何でも引き続き提供し続ける。2つ目は雇用の維持。社員は誰一人解雇しない。アソビューには130人以上の従業員が集まっていた。大切な仲間とカルチャーを守るために、雇用の維持は厳守する。単純に、社員をクビにするのは嫌だった。

 

こういう要素を積み上げていくと、事業の継続と雇用の維持だけは貫ける可能性があるかもしれないという微かなアイデアが、おぼろげに頭に浮かんでいた。しかし、正確な計算式はないし、要素だけはあるという状態だった。
頭の中で生き残りを賭けた「戦術リスト」と呼ぶべきものを作り、「事業の継続」と「雇用の維持」を実現するために何をすればいいかのロジックを考えた。
事業の継続と雇用の維持のために講じなければならない手段は「会社運営費の確保」に尽きる。売上が激減している中で会社運営費をどう捻出すればいいのか。これには2つの手段がある。

 

①現金獲得

  • コロナ禍で政府が発表した企業向けの補助金の徹底活用
  • エクイティ・ファイナンスの継続交渉
  • 銀行からの借入活動

 

②コスト削減

  • 経費の徹底節減。月額1万円以上かかっている経費はすべて削除候補としてチェック。
  • 社員の1/3を一時的に休業
  • 役員報酬カット
  • 広告宣伝費カット
  • 有期雇用者の契約終了
  • 出向

 

在籍出向で雇用を守る

「雇用の維持」はもう1つの目的である「事業の継続」にとって必要だが、同時に「会社の継続」にとって最もコストインパクトのある選択である。完全に矛盾した2つの目的をどう両立させるか。その解決方法が、アソビューの社員を別の会社に出向させることだった。

この出向によるメリットはアソビューだけでなく、出向先も十分に享受できなければならない。在籍出向の形で、出向先への転籍を可能とした。アソビューからすれば、1年後に優秀な人材が流出するリスクを負った。

 

今まで培ってきた経営者ネットワークや経営陣のツテを頼り、さらには個人のnoteで出向先企業を募るエントリーを書いた。社員と出向先とのマッチングに際しては「出向者が成長できること」を重視した。社員が恐れていたのは、会社が存続しなくなることは当然として、自身の成長機会が奪われることだった。そのため、成長機会として「適切な負荷がある環境」を提供するため。「IT業界内だが異なるテーマ」「異なる業界」「異なる成長フェーズ」、あるいはそれらの掛け合わせを負荷のある環境と定義し、出向先企業を選定した。

 

新規事業を最速でやり抜く

雇用シェアはあくまで「出る金を減らす施策」であって、新しい稼ぎ口の確保ではない。会社存続のためには新しい売上の確保、すなわち「入る金を増やす施策」を講じる必要があった。そこで以下のことを行った。

 

  • コンサルティング事業(デジタルマーケティング支援、ウェブ制作など)
  • 「おうち体験キット」のEC販売
  • 応援早割チケット
  • 日時指定電子チケットの販売システム提供

 

密を避けるための「日時指定電子チケット」は、その後、東京スカイツリーや大阪のひらかたパークといった大規模施設に続々と導入され、アソビューの売上はぐんぐん伸びていった。このおかげでアソビューは息を吹き返した。

 

コロナによる経営危機を脱することができた4つのポイント

①トップダウン体制への一時的なシフト

②やらない意思決定

③経営者のメンタル死守

④事業ポートフォリオの分散化

参考文献・紹介書籍