ビッグテック5社を解体せよ

発刊
2021年11月25日
ページ数
320ページ
読了目安
483分
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推薦者

大企業優先自由主義が加速するアメリカの社会課題とは
トランプ派であることを理由にビッグテックから出版妨害を受けたとされる書籍。GAFAを筆頭に一部の巨大企業による情報のコントロールがもたらす、特権階級による経済と政治の支配に対して警鐘を鳴らしています。エリート層と労働者層の分断が大きな問題となっているアメリカ社会の課題が理解できます。

特権階級による政治と経済の支配

特権階級による政治とは、野心的な、経済的に大成功を収めた少数者による支配を意味する。現在のアメリカで行われているのは、特権階級による政治そのものだ。人権や平等といったことに意識の高い大企業経営者たち、ビッグテック(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)の経営者たちは人類史上、最も力を持つ企業を経営している。こうした人々は、政府からの積極的な支援を受けて力を増し続けている。そして現在、ビッグテックと大きな政府は一緒になって、アメリカ国民の生活の隅々にまで影響力を拡大しようと画策している。

 

ビッグテックは彼らが持っているイメージ通りに、アメリカを作り変えたいと望んでいる。この点で、ビッグテックの経営者たちは前時代の経済的支配者「泥棒男爵」たちと全く同じである。

ほぼ100年前までは、アメリカ国民のほとんどが、独占と企業の集約に対して、強い不信感を持っていた。独占が出現することで、アメリカ国内で特権階級による政治が行われると考えられたため、建国の父たちは、企業の力に対して厳しい制限を加え、ほぼすべての分野での独占を禁止した。独力で生産を行う自立した人々が中心となる経済を構築するために努力した。

しかし、1870年から80年代にかけてアメリカで資本主義が急速に発達した時代に登場した巨大企業を創設した泥棒男爵たちは、自分たちの思想をアメリカに導入することに成功した。その思想とは「大企業優先自由主義」だ。泥棒男爵たちは経済における集中は、進歩のためには不可避であり、必要であると強く主張した。そして、資本家たちと専門職としての管理者たちが上に、一般の労働者たちが下に位置する階層をアメリカに構築すべきだと訴えた。

ビッグテックはそうした泥棒男爵たちの正当な後継者と考えられる。彼らは「自分たちは聡明なのであり、自分たちこそがアメリカを統治する権利を持っている」ということを心の底から確信している。

 

ビッグテックによる情報のコントロール

現代の独占企業家たちは、消費者たちの個人データを吸い上げ、個人がどんなウェブサイトを見たかということから、旅行先、現在地の気圧まで、すべてを追いかけることができるデジタル調査が可能な巨大なネットワークを作り上げている。ビッグテックのビジネスモデルはデータ収集と広告を基礎としている。これが意味するところは、個人の行動を変化させようとする仕組みでもあるということだ。そして、大企業に対してこうした機会を売り込む仕組みでもある。
その結果として、私たちを可能な限り多く、インターネットに縛り付けるように設計された、人々の依存性を利用する経済が生み出されている。

ビッグテックが中心となっている経済は、ごく少数の巨大企業によって動かされる。ビッグテックは、アメリカ国民のデータを利用し、それをお金に換えている。一方、自分たちは挑戦を受けたり、変化にさらされないように、競争を抑圧し、政府からの保護を受けている。

 

ビッグテックのプラットフォームは、アメリカ国民が自分の生活をコントロールすることを侵害している。アメリカ国民が見ることができるニュースに関して操作し、政治に関する決定に影響を与えている。ビッグテックは、労働者階級を中心とする経済にとってのみ危険な存在ではない。アメリカの文化に対して危険なだけでなく、共和政体に対しての危険でもある。

1世紀前に、大企業経営者たち第一世代が導入した、エリートによる統治という、大企業優先自由主義が、現在、全盛を誇っている。経済と政府における「大きいことは良いことだ」という考えと力の集中を称賛するイデオロギーを基盤として、ビッグテックの泥棒男爵たちは、力を高めている。このイデオロギーによって、自由と自治における人々の力のつながりが分離させられている。
実際のところ、大企業優先自由主義によって、一般人の力を弱め、高い教育を受けたエリートたちで構成される専門家と専門職階級に、政府の政策実行と社会の力を引き渡すようになっている。

 

長年にわたり、アメリカの労働者階級の収入は横ばい、もしくは下落してきた。一方で、ビッグテックと巨大金融業のエリートグループの収入は上昇し、富が蓄積されている。ビッグテック主導の経済の拡大は、こうした流れを加速させ、現状が永続的に続くように固定化する危険をもたらしている。