現代アート投資の教科書

発刊
2021年9月17日
ページ数
224ページ
読了目安
208分
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推薦者

アートに投資するために知っておきたいこと
お金持ちでなくても、アートに投資できる。海外では市場が成長しているアートへの投資について、その基本的な知識を紹介している一冊。
どのようにアートに投資すればいいのか、どうすれば良いアートの目利きができるのか。アーティストを支援する意味合いもある、現代アート投資についてわかりやすく解説されています。

アートを知ることで身に付く教養

①アーティストの頭の中の世界を感じとれるようになる

アーティストはセンスが良いからアート活動をしているわけではない。アーティストが他の人と違うのは感性の鋭さではなく、絶えることない創作意欲である。アーティストとは「常に何かを創らざるを得ない人」である。アーティストにとって創ることは、作業的なものとはほど遠く、自らに課せられた運命のように創作にとりつかれている。

そのようなアーティストの創造性に触れることは、人間の根源的な創作意欲を感じることになる。多くの人にとって薄れてしまったものづくりへの欲求といった感覚を再び呼び起こしてくれるのがアートであり、人間は実利や有用性だけで動くものではないことを気づかせてくれる。アーティストが心の赴くままに作ったものを見て感動する体験が俗世界で生きる人間の頭を浄化し、新たな活力を与えてくれる。

 

②良い作品のコレクションづくりに役立つ

資産価値のある良いコレクションを作ることができる。質の高いアート作品を買うには、多くのアートに触れることが必要である。美術館や一流のアートフェアで展示される本物の作品を数多く見ることで、資産的に価値の高いアートを直感的に理解できるようになる。また、美術史の文脈やアーティストのコンセプトを知ることで、その作家が今後活躍できる可能性をチェックすることもできる。

コレクションというと、よほどのお金持ちでないと持つことができないと思うかもしれないが、限られた予算の中でもじっくりと良い作品を集めていけば、良いコレクションを持つことはできる。アートを集めることは、決して手が出せないような贅沢ではなく、買える範囲のお金で人生を楽しめる身近な趣味でもある。

 

投資としてのアート

アートの本質は「作品を残すことが目的(消費を目的に創られていない)」「エンターテインメントである」の2つ。この観点から考えると、作品の短期売買で利益を得るというビジネスは難しい。若い作家の成長を支え、初期のコスト負担に耐えながらも長期的なビジョンで利益を得るという考え方でないと、うまくいかないことの方が多い。だからこそ、ギャラリーなどのビジネスやアート投資が成立する。

 

投資価値としてのアートの特徴は次の3つ。

①安全性

アート作品の元本割れは、債券などと同じように値崩れによって購入時より安くなることがある。しかし、株式のように倒産によって実質的な価値がゼロになることはない。

 

②収益性

株式などよりも圧倒的に高いリターンをもたらすことがある。しかし、あくまで長期投資の話であり、短期で売買すると手数料が高いため元本割れすることがある。

 

③流動性

アート作品は長期保有前提であること、必ずしも市場ですぐに売却できる保証がないことから、換金されることが少なく流動性は低くなる。

 

アートは長期的に保有するのであれば、リスクが低くリターンが大きいので、不景気の時期に、金融商品の価値が下がる傾向にある時には、投資的として優れている。そのためには確かな情報が必要であり、それに基づいて適切な作品を選択しなければ、金融商品より運用の利回りが下回ることが十分にある。

 

また作品という「モノ」だけではなく、アーティストという「人」へ投資する面白みがあるのが、アート投資の特徴である。アーティストが成長しながら、どれだけ多くの人の共感を得る作品を創ることができるかを考えるのがアート投資の真骨頂である。

 

将来性のある作品を見極めるための原則

良いアートを購入するのに最も重要なことは、一次情報を得ることである。自分の目で作品を観て感じる情報のことを一次情報、ネットのニュースや誰かが作品を観てSNSに投稿した記事などは二次情報である。二次情報はいくら集めても、他の人が見た情報を加工したものに過ぎず、事実が曲解される可能性がある。

特にアートの場合、観た作品に対してどう感じるかは人によって大きく違う。まずは、美術館やギャラリー、アートフェア、アート関連の本やウェブサイトなど自分が得られるあらゆる手段で、できる限り多くの作品を観ることが大切である。まずは作品に向き合い、好きか嫌いか、幸せな気分か憂鬱な気分か、ある出来事を想起させるか、空想の世界へ誘われるかを感じてみる。

 

アートは常にこれまでに見たことのない発明品に価値がある。評価の上がる作品は「発明品」と「インパクトの大きさ」で決まる。売れやすい作品を意識して作られたアートは予定調和になり、面白くなくなる。そのため、アートは他人やメディアの意見よりも、まず自分が面白いと思えるかどうかが重要である。自分の感性に素直に従えば良い。

ただし、好きな作品だからといってやみくもに買っていても、その作品の価値が上がるかどうかは別問題である。ある程度の作品数を実際に自分の目で観る経験が必要になる。