INNOVATION STACK だれにも真似できないビジネスを創る

発刊
2021年10月7日
ページ数
320ページ
読了目安
411分
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イノベーションの物理学
米国の決済スタートアップSquareの創業者が、創業から急成長し、Amazonの攻撃から生き残った理由を分析し、解説している一冊。イノベーションとはどのようなプロセスで起きるのか、競合優位性とはどのように構築されるのかが理解できます。

問題と解決の連鎖がイノベーションの集まりを創る

アマゾンが製品をコピーして安値で発表。スクエアはアマゾンの攻撃を受けて生き残った。これは事故ではなく、あるパターンに当てはまっていた。それは驚くほど規則的に繰り返されるパターンだ。そしてそれが起きる時には、それを活用する企業は業界で世界最大となる。

こうしたパターンがしばしばビジネスに登場するのは「それまで不公平だった仕組みに公平性をもたらす」というものだ。まっとうにすることで、相互に組み合わさった一連の発明が一気に生じる。これを「イノベーションスタック」と呼ぶ。企業が持てる最も強力な資産の1つだ。

 

イノベーションスタックが発達するのは、ほとんどが生存本能に突き動かされてのことだ。もし本当に新しい何かをやろうとしたら、色々新しい問題に出くわす。問題を1つ解決すると別の問題が出てくるし、それも1つで済まないことも多い。この問題-解決-問題という連鎖が繰り返される果てに、独立した発明や相互につながり合った発明の集まりが手に入る。あるいは失敗する。

イノベーションスタックを創るにはまず、誰も解決したことのない問題を解決しようとすることだ。イノベーションスタックは、その時点で見つけるのは難しい。時間を遡って振り返るともっと見つけやすい。

 

スクエアのイノベーションスタック

皆、ヘッドセットのジャックに差し込むクレジットカードリーダーが、スクエアを成り立たせる「イノベーション」だと思っている。実は、あのアイデアは特許化していないので誰でも使える。でも、スクエアを独特な存在にする他の発明があった。生き残るために本当に最低限の発明だけをして、それをやる過程で、他の誰もやったことのない1ダース以上ものことをやるはめになっただけだ。

 

①単純に

製品は公平で単純であるべきだというのが当然とされていた。この2つの価値観は、2009年のクレジットカード業界には欠けていた。そこでまずは思いつく限り最も単純な発明から始めた。わかりやすい価格だ。万人にとって、常に、取引額の一定割合という単一価格。隠れた手数料なし。これはクレジット業界の他社と正反対だった。

 

②加盟無料

スクエアの値付けモデルは、急成長しないと機能しない。だから素早い面倒なしの体験を作り出すため、加盟は無料にした。これも業界初だった。これで、スクエアに興味ある何百万もの商店が試せるようになった。

 

③安いハードウェア

2009年に市場に出回っていた一番安い携帯クレジットカードリーダーは950ドルだった。最初のスクエアリーダーは製造原価97セント。アホみたいに安く、無料でもあげてしまえる費用だった。

 

④契約なし

他の支払い処理業者と違って、スクエアは顧客を3年で縛ったりしなかった。顧客との信頼関係を構築すると同時に、登録手続きも単純化できた。

 

⑤電話サポートなし

当初は、顧客サポートは極めて限られたものにした。メールアドレスだけで、質問には高速タイピストの小チームが対応した。でも文句を言った人はほとんどいなかった。

 

⑥美しいソフト

インターフェースをエレガントで簡単にすると、使いやすいから新規利用者でもすぐに自信がつく。次に顧客サポートの必要性が減る。さらには利用者が噂するようになり営業部隊になってくれた。

 

⑦美しいハードウェア

リーダーそのものが実に革新的なデザインだったので、スミソニアン博物館とニューヨーク近代美術館の両方に展示された。97セントのリーダーを2ドルの箱に入れると、まるで宝石を渡したような効果が出た。スクエアのイメージは高まった。

 

⑧素早い決済

伝統的なクレジットカード処理会社は、店舗への入金までに数日かかった。スクエアは、クレジットカード史上最速の決済を実現し、自分たちが入金を受ける前に店舗に入金した。多くの場合には即日入金を実現した。

 

⑨純額決済

単純な値付けのおかげで、商店にいくら入金すべきかがすぐにわかり、毎日入金ができた。業界他社では、手数料が結局いくらになるかわかるまでに何日も待たされた。

 

⑩低価格

スクエア開始時点で、ほとんどの小店舗はクレジットカード手数料として4%以上を支払っていた。スクエアの2.75%というニュースは、中小企業コミュニティの中ですごい勢いで拡散した。

 

やるしかない

起業家は完璧な問題の解決に乗り出すが、解決策をコピーできないので、発明を余儀なくされる。結果として生じるイノベーションスタックは、市場を拡大してそれまで参加できなかった多くの人を含めるようになる。

イノベーションスタックは目に見えないところで発達し、いずれ巨大になる小さな会社の中に隠されていることが多い。スタックが形成されて、その会社が成長したら、やっと目に見えるようになる。

 

新しい市場について未知のこと、時には知りようがないことの凄まじい量が、あらゆる視界を曇らせる。類似市場の「専門家」からのアドバイスは、笑えるほど間違っていることも多い。存在しないものは、研究しようがない。未知の世界への旅は地図なしでやるしかない。