インスタグラム 野望の果ての真実

発刊
2021年7月9日
ページ数
464ページ
読了目安
758分
推薦ポイント 2P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

インスタグラムの創業物語
今やユーザー数10億人を超えるインスタグラムは、どのようにして起業され、なぜ成功したのか。フェイスブックに買収された後も、経営の独立性を認められ、フェイスブックの成長にも大きく寄与したインスタグラムの経営の裏側が、様々な関係者へのインタービューをもとに紹介されています。
スタートアップの成功と苦労がわかる一冊です。

インスタグラムの始まり

スタンフォード大学の学生だったケビン・シストロムは、偶然にもフェイスブック、ツイッターという時代を象徴するような会社に創業期から参画するチャンスがあった。しかし、シストロムはどちらも見送り、もっと堅い道を選んだ。卒業後、グーグルに就職し、Gmailのマーケティングコピーを書く仕事をすることになった。コンピューターサイエンスの学位がないため、製品を作る仕事をさせてはもらえなかった。

シストロムは、結局、ネクストストップという小さなスタートアップに転職し、プロダクトマネージャーとして仕事をしつつ、モバイルアプリを作るスキルを身につけるべく、夜や週末にはカフェで勉強した。2009年、サンフランシスコのカフェにはそういう人が山ほどいた。スマートフォンが次なるゴールドラッシュになると、サイドビジネスに励む人々だ。

 

シストロムは「バーブン」というアプリをリリースした。今いる場所やこれから行こうとする場所を書けば、友達と合流できる。出かける回数が多いほど、もらえるご褒美が増える。2010年1月、シストロムはアプリを投資家に売り込み、共同創業者として2年後輩のマイク・クリーガーと組んだ。シストロムは合計50万ドルの資金を集めた。さらに、インターン時代のメンターであったツイッター創業者のジャック・ドーシーに応援として出資してもらった。

 

位置情報を活用するアプリならフォースクエアやゴワラなど人気がもっと高いものが既にあるし、写真程度で世の中の人気をさらうことはできない。バーブンにはソーシャルな側面もあるが、そちらにはフェイスブックが存在する。近況報告も、既にツイッターが中心になっている、というのがベンチャーキャピタリストに共通する見方だった。シストロムとクリーガーは、バーブンを根本的に考え直してみることにした。

 

最初にバーブンで人気の側面で、写真こそ都市部の若者に限らず、誰にとっても便利な機能だと2人は判断した。スマートフォンさえあれば、誰でもアマチュアカメラマンになれる、そんな日が来ると思った。

スマホのカメラでは、ボケ気味の写真しか撮れないし、光の当たり具合も良くない。写真をフィルターで編集するなら、アプリでできるようにした方がいい。2010年10月、後にインスタグラムとなるアプリから最初の写真が投稿された。

 

このアプリをバーブン以上に魅力的だと思ってくれる人がいるかどうか、クリーガーもシストロムも計りかねていた。新しいところなど、特にないと言えばない。写真用フィルターも既にあったし、興味関心をもとにつながれるソーシャルネットワークも既にあった。特徴と言えば、雰囲気を大事にしたことと、技術の追求よりシンプルにすることを優先したことだろう。ただ、インスタグラムのフィルターは、カメラマンが作ったとはっきりわかるものだった。

 

写真関連でよさげな名前は、ほとんどが既に使われていた。悩んだ末に選んだのは「インスタント」と「テレグラム」を組み合わせた「インスタグラム」だった。2010年10月に一般公開されたインスタグラムは、ドーシーらが写真をツイッターにもクロスポストすることで、大ヒットとなった。アプリストアにおけるカメラアプリで第1位に輝くほどだった。

 

インスタグラムが成功した理由

インスタグラムが成功したのはタイミングが良かったからだとよく言われる。モバイル革命が始まり、みな、スマートフォンなるものをポケットに入れて持ち歩くようになったが、そのカメラで何をしたらいいのかわからずにいた時、シリコンバレーで生まれたのが良かったのだと。

だが、普通ならしない選択をシストロムとクリーガーがしたことも大きい。まず、投資家への約束など気にせず、最初のアイデアを捨ててもっと大きなアイデアを追求した。たった1つのこと、つまり、写真を極めようとした。
使ってくれる人数を増やそうと躍起になるのではなく、クリエイティブな人やデザイナーなど、フォロワーに口コミを広げてくれそうな人を選んで使ってもらった。投資家に対しては寡占性を売り込んだ。成功すると思う投資家などいないに等しい状態でだ。ここは、洗練された雰囲気や趣を醸す高級ブランド的な戦略である。

シリコンバレーの投資家は今までにない画期的なものを求めるが、2人は他のアプリで既にやられていることを磨き上げる方を選んだ。徹底的にシンプルでさっと処理できるようにした。そうすることでユーザーの負担を小さくし、インスタグラムでとらえて欲しい体験に集中できるようにした。