突き抜けるまで問い続けろ

発刊
2021年6月30日
ページ数
280ページ
読了目安
371分
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ビズリーチの創業物語
求人サービス「ビズリーチ」などを手掛けるビジョナルの創業から事業成長を描いた一冊。ビジョナル創業者の南氏が、創業前から何を学び、起業後にどのように考えて、事業を立ち上げていったのか。

新しいビジネスを手がける時の思考のフレームワークや、課題解決の事例が書かれており、起業や新規事業立ち上げにあたって参考になります。

課題発見力こそ、企業の競争力である

2009年4月に創業し、それまでは求人広告や人材紹介会社を利用するしか選択肢のなかった中途採用の世界を、ビズリーチはガラリと変えた。インターネットを利用した従来にないビジネスモデルで転職市場に新たな風穴を開け、「企業の人材探し」と「求職者の仕事探し」の選択肢を大きく広げた。

このサービスが誕生するきっかけとなったのは、創業者の南壮一郎が立てた次のような問いだ。

「働き方の選択肢と可能性を広げるには、どうすればいいのか」

 

ビズリーチは人材サービスだが、南はそれまで人材業界で働いた経験はない。「その業界で働いていたから」という自分の経験や知見は、事業の立ち上げにはほとんど影響を与えない。その代わり、自分の中で構築した事業立ち上げの「成功パターン」を忠実に踏襲する。どんな業種やサービスであっても、自分の成功哲学に当てはめて考えていく。現場を訪れ、当事者にインタビューし、吟味した上でパターンにピタリとはまるものしか手掛けない。

 

南の立ち上げた事業はいずれも、その時々の経済情勢や技術の変化に対する自分の問題意識が起点になっている。「社会の課題を解決するには何をすべきか」をあらゆる角度から、常に探し続けている。

 

問いを立てるフレームワーク

南は、課題発見の方法をすべて自分で編み出していったわけではない。様々な経営者との交流によって課題発見力を磨いてきた。中でも大きな影響を受けたのが、楽天イーグルス時代に薫陶を受けた楽天グループ代表の三木谷浩史、USEN -NEXTホールディングス副社長の島田亨、ヤフーCOOの小澤隆生だ。

スタイルこそ違うが、課題を探り当てる3人の行動原理を間近で学んだ南は、ビズリーチの起業を通して、「問いを立てる」フレームワークをブラッシュアップしていく。それは、次の3つのステップを辿る。

 

①自分の問題意識に引っかかる課題を見つける(トリガーを引く)

南の課題発見はまず、本人に内在する問題意識から始まる。自分の中に浮かんだ喜びや怒り、不満や悲しみといった感情が、課題発見の着火点となっている。日々情報に触れていると、時々、ピンとくる話題やニュースがある。「これって何でそうなっているんだっけ」といった具合に引っかかり、掘り下げていくと課題の端緒が見えてくる。

この問いが生まれる瞬間を、思考を発動させるという意味で「トリガーが引かれる」と表現する。これは面白い、これはかっこいい、これは羨ましいなという感情から意識が呼び覚まされて、ある瞬間にトリガーが引かれる。

 

②課題を徹底的に調べて要素分解をし、本質を見極める(センターピンを見つける)

トリガーとなる課題のタネが見つかったら、次はそれを徹底的に調べ倒して深掘りしていく。最初はマクロの視点で幅広く、政府の白書や研究機関のリポートなどを読み込みながら、課題を構造で捉えていく。その後、ポイントを絞り込み、ディテールを紐解いていく。楽天イーグルス時代に小澤から学んだ「要素分解」に相当する作業だ。

分解した要素をさらに細かく調べ、本質に辿り着くまで繰り返す。最終的に課題のセンターピンを見つけ出すことが、2番目のステップのポイントだ。

 

③本質的な課題解決の方法を考えて、端的な言葉や数字で表現する(打ち出し角度を決める)

センターピンを探し当てたら、最終段階の打ち出し角度の決定に進む。ここでは、課題の本質をわかりやすく端的な言葉で表現する。いわば企業ミッションや事業コンセプトを決める作業だ。楽天イーグルスでは目指す球団の方向性を「ベースボール・エンターテインメント・カンパニー」として、ベンチマークを他球団ではなく、ディズニーランドや居酒屋とした。仕組みやビジネスモデルが明確なほど、課題解決に向けたベクトルは、はっきりする。

目指す方向や解決策を端的なフレーズで表現することで、周囲に浸透しやすくさせる。加えて、目標に至るまでのプロセスを数値化して測定できるようにして、達成度合いを客観的に評価できるようにする。

 

この一連の流れを基本動作として、南は、次々と新事業を立ち上げていった。