吉田基準 価値を高め続ける吉田カバンの仕事術

発刊
2015年10月16日
ページ数
212ページ
読了目安
232分
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吉田カバンの流儀
「PORTER」「LUGGAGE LABEL」などのブランドで人気の吉田カバンの経営が紹介されている一冊。メイド・イン・ジャパンにこだわりながら、創業80年になるカバンメーカーの仕事が紹介されています。

大量生産をしない

吉田カバンの商品は、革製のボストンバッグのようなカバンから、小物の財布やキーケースに至るまで、すべて日本国内の職人さんの手作業によるものである。大規模工場での大量生産もしていない。商品のネームタグには「MADE IN JAPAN」、もしくは「TOKYO・JAPAN」と記されている。

現在、商品の製作本数は年間約180万本。海外の生産工場で製造すべきという誘いは何度もあったが、日本製にこだわっている。主力ブランドの「ポーター(PORTER)」は1962年から、もう1つの主力ブランド「ラゲッジ レーベル(LUGGAGE LABEL)」は1984年から展開している。大規模工場で大量生産するのではなく、1つ1つ、日本の職人さんが心を込めて製作する。「作り手の心こそブランドの源泉」である。

 

吉田基準

吉田カバンでは「丈夫でなかなか壊れない」「カバンそのものが軽く、持った時に心地良い」といった機能性にこだわってカバンづくりをしている。

「吉田基準」という言葉は、吉田カバン商品の製造に携わる、職人さん達の間で自然発生した言葉である。社内に数値化された品質基準マニュアルがある訳ではない。

元々、創業以来、自社工場を持った事がない。商品の製作は、複数の工房に属する職人さんが担う。国内に48ヶ所ある工房に支えられており、自宅兼作業場で製作を行う職人さんも多くいる。こうした外部の熟練職人さんと企画部に所属する社員のデザイナーが「1対1」で向き合い、カバンの企画・開発から製作進行まで担う。

どんなに生産量が増えても、昔から変わらない品質重視のやり方は変えない。品質を犠牲にしてまで規模拡大を追う事もしない。吉田カバンでは品質を追求するにあたり、例えば一般的なカバンであれば1回縫うだけの部分も、5回縫って頂く事がある。そこで職人さんの間では「吉田のカバンが要求が細かく、手間がかかる」という声が上がる。そう言われながらも、お願いした水準以上のものが仕上がってくる。

創業者の言葉である「お客さまに買ってよかったと思われる、喜ばれるカバンをつくること」という精神をいまに受け継いでいるからこそ、吉田は存在し続けている。

吉田カバンが、すべての商品製作を日本国内だけで行うのには、いくつかの理由がある。まず創業者の「絶対に日本の職人さんを絶やさんでくれ」という遺言であったこと。そして、品質の面から考えてもベストであること。日本の職人さんは、本当にレベルが高い。

 

値引きはしない

吉田カバンの商品は原則として値引きしない。もし、小売店側が先方の判断で商品を値引きした事を知った時は、商品引き揚げという措置を取る場合もある。理由は、定価で買って下さるお客様に対して失礼であること。また、値引きをするとブランドイメージも崩れるし、利益も減る。作り手側は誰も幸せにならない。元々商品は、手間ひまをかけて製作する職人さんの工賃と、材料費や運送費などの諸経費、それに一定の利益を乗せて「販売価格」を設定している。余分な上乗せは一切していない。

 

変わらないもの、変えること

吉田カバンが絶対に変えてはならない事は「メイド・イン・ジャパン」のモノづくりである。日本の職人さんと二人三脚でのモノづくりは、吉田カバンの製作にとって変えてはならない事の筆頭である。

一方、変えてはならないものを守るために、変えるべきは変えるという考え方もある。コラボレーションなど、積極的に新たな企画を提案し続けるのは、カバンの生産量を増やすためである。それが、日本の職人さんを絶やさない事にもつながるからである。