シリコンバレーの一流投資家が教える 世界標準のテクノロジー教養

発刊
2021年2月25日
ページ数
256ページ
読了目安
331分
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ビジネスパーソンが今知っておくべきテクノロジーの常識
SaaS、リテールテック、ロボティクス、フィンテックなど、世界的には既に標準となっているテクノロジーとビジネスの関係をわかりやすく紹介している一冊。世界の中でも、デジタル化が著しく遅れている日本の現状に警鐘を鳴らし、日本企業が進まなければならない方向を示しています。

DXに出遅れると日本に勝ち目はない

あらゆる企業にITの知識が求められ、IT企業と呼ばれる企業とその他の企業の間に、もはや垣根はない。今後1年以内にコロナがどこまで収束するかにもよるが、ビジネスはますますデジタル中心になる。今までは、リアルが主でデジタルが補完していたのが逆になり、デジタルが主でリアルが補完する。

 

DXには、企業から見て内側と外側がある。内側がこれまでのIT化の延長線上である働き方改革である。リモートオフィスが実現され、どこでも仕事ができる。外側がビジネスである。例えばどうやって顧客から金を集めるか。例えば売り切り方のビジネスからサブスクリプションに代わってきている。

 

アメリカの方が日本よりも全般的にデジタル化が進んでいる。その背景にあるのは、ITエンジニアの分布である。海外の企業が日本と全く違うのは、社内にITエンジニアを抱えていることである。約7割のデジタル化を社内で担当し、残りの3割がアウトソーシングだと言われている。日本は逆で、ITエンジニアのほとんどを社外に頼っているので、なかなかDXが進まない。ここまでITを外注している国は日本ぐらいだろう。

 

日本で新しいデジタル・ビジネスモデルが出てこない、出てきても根付かない原因としては、日本にはテクノロジーがわかる役員が少ないことが挙げられる。CIOやCDOがいない会社がいくらでもある。会社の中枢にデジタルや最先端のテクノロジーに精通している人がいて、その人たちが会社の方向性を決めるところでもっと口を出さないといけない。

日本企業の弱いところは、グーグルのような儲かるビジネスモデルを作る力がないところだろう。すごく良いテクノロジーを持っていても、それを儲けに繋げられないのでは意味がない。

QRコードを発明したのはデンソーである。元々製造現場の効率化のために開発したものであり、その意味では役に立った。しかし収益化に結びつけられずに、結局、中国に上手に使われて、キャッシュレス決済の一時的最先端を取られてしまった。テクノロジーとビジネスモデルは両輪とみなして、一緒に回すことが大事である。

 

日本のデジタル化がこのまま遅れれば、外資企業が成功パターンとともに押し寄せてくる。彼らはシンガポールやマレーシアなどアジアの別の地域でノウハウや成功パターンをため込んでから日本にやってくる。ウェブサイトやスマホアプリの使い勝手が相当きめ細かになった時点で日本にやってくるので、ユーザーを総取りされてしまう。これは音楽配信や動画ストリーミングで既に起こっている。スマホのOSも同じで、日本企業がどれだけ良いアプリを作っても、利益はどんどんアメリカ企業に吸い取られるという状態が続く。

 

デジタル時代に必要なこと

デジタルエコノミーにおいて、企業経営に不可欠な要素が3つある。

  1. SaaSの活用
  2. M&Aの推進
  3. M&Aを見極めるためのCVC

 

デジタルエコノミーの世界ではSaaSの活用が欠かせない。SIやパッケージソフトの課題としては初期コストが高かったり、アップデートやメンテナンスが大変だったりといった欠点が挙げられた。その課題を解決したいという狙いでクラウドやSaaSに移行し始めている。SaaSはアメリカでは、もはやデジタルエコノミーの中心である。リモートワークが中心になると、DXが求められるからである。

 

CVCやM&Aもデジタルエコノミーに必要な経営戦略である。アメリカの上場企業の株主は機関投資家なので、彼らの期待に添うスピードで成長を遂げることが求められる。そのため、M&Aで優秀な事業を買って、買収相手の人材も引き入れることで高い成長率を維持することが必須である。

M&Aの成功率を高めるためには、パートナー候補に先行投資すること、すなわちCVCによって相手を見極める。しかし、日本の大企業の多くは製造業出身で、経営層があまりデジタルを理解しない。その結果、SaaSを含めたクラウドの活用も遅れて、デジタル時代の経営に必要なM&AやCVCも遅れている。

 

このテクノロジーとビジネスの断絶をまずどうにかしないと日本には先がない。コロナ禍でDXが急に進み始めた今が最後のチャンスである。