売らずに売る技術 高級ブランドに学ぶ安売りせずに売る秘密

発刊
2016年1月25日
ページ数
312ページ
読了目安
311分
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ソーシャルメディア時代のブランド戦略
モノが売れない時代の差別化の要素は「ブランド」にある。ソーシャルメディアの台頭によって、価値観が変化している現代において、ラグジュアリーブランドがどのように変化に対応しているのかを解説し、売らずに売る方法を紹介しています。

売ろうとして売ることが難しい時代

企業が多額の予算を使ってメディアに広告掲載してもらっても、ユーザーは広告よりもソーシャルメディアから流れてくる友人の口コミを重視している。口コミをコントロールするのは至難の業。ソーシャルメディアが普及した事で、企業が能動的に「売ろうとして売る」事が非常に難しい時代になった。

この新しい消費者と向き合っていく上で、鍵になるのは「ブランド」である。ブランドによって消費者との絆が生まれれば、商品に特別な意味が与えられ、新機能や安売りに頼らなくても、他の商品との差別化が実現できるようになる。

 

デジタル戦略の重要性

ソーシャルメディアが台頭し、それが人々のライフスタイルも変えてしまった近年、ラグジュアリーブランドも新しい消費者に正面から向き合おうとしてきている。人々は広告に「いいね!」をなかなか押してくれないが、友人の体験には「いいね!」を押す。これを企業から見ると、彼らのコミュニティに入り込み、消費者が感動するような体験をデザインする事ができれば、それは「良い口コミ」となって広まっていくと考える事ができる。

 

正直でいることが評判を高める最善策

より「本質なもの」を評価する現代の消費者と向き合うためには、新しい消費者の価値観に寄り添ったまま、自分達のブランド・アイデンティティを保ち、しかも自ら語りかけていく。そのための方法は、結局のところ「正直」である事に尽きる。「誰が言うか」よりも「何を言うか」が問われるソーシャルメディアでは「評判」が最大の価値になる。その「評判」を支えるのは「嘘をつかない」コミュニケーションの積み重ねに他ならない。

 

差別化には物語が必要

モノが溢れ、商品のコモディティ化が進んでいる現代では、機能をアピールするだけではライバルとの差別化は難しい。しかしブランドの揺るぎない「物語」は、他社がコピーする事は不可能である。ラグジュアリーブランドは、この「ブランドのDNAである物語を指針としながら、そこからブレないように変化を遂げてきた」ブランドの最たる例である。

ソーシャルメディアの普及に最も劇的なやり方で対応し、新しい価値を生み出したラグジュアリーブランドに「バーバリー」がある。バーバリーは2011年、ブランドの象徴とも言えるトレンチコートのカスタムメードオーダーをオンラインで開始。さらにファッションショーのネット中継と同時にモデル達が着ていた新商品のオンライン予約販売を開始した。eコマースは高級品の購入に見合うような「特別感」の演出が難しいとされてきた。そこで考えられたのが上述のサービスであった。

現在のバーバリーは海外のメディアから、アップルやグーグルといったIT企業と比較されるほど、先進的なブランドと見なされている。バーバリーの市場価値は2006年から2013年までに33億500万ドルから111億8000万ドルと3倍に増加した。バーバリーのデジタル戦略は、ラグジュアリーブランドであるにもかかわらず、ブランドの世界観を一方的に押し付ける「選ばれた人向け」ではなく、ユーザーの価値観に寄り添った「民主的」なものである点で一貫している。

 

体験価値の創造

顧客の記憶に残る感動を与え、それを唯一の経験だと感じてもらわなければ、どんな優れた商品やサービスもコモディティ化してしまう。企業がPRを行っていくために必要となるのは、ブランドの世界観を好きになってくれそうな人達に向け、彼らのコミュニティと親和性の高いやり方で体験を提供する事である。

バーバリーは、ショッピングの付加価値として体験を提供するのではなく、楽しい体験をした結果、その先にバーバリーというブランドの世界観を感じられるようにしていこうと、発想を逆転させた。