社内新規事業コンパス

発刊
2021年4月16日
ページ数
272ページ
読了目安
499分
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新規事業を立ち上げるためのマニュアル
顧客との関係を構築することから新規事業は始まる。技術開発だけでは新規事業が立ち上がる時代は終わったとして、顧客との関係性の中でアイデアを創り出し、新規事業を作る基本を紹介しています。

技術開発だけで新規事業が立ち上がるのは昔の話

かつて、日本のメーカーは世界に先駆けて独自技術を開発し、製品化を行い、大量生産で一気にシェアを獲得することがお家芸だった。その勝ちパターンを支えてきたのは「もの作り」の技術だった。他社よりも優れた技術があれば勝てた時代、研究開発から製造、販売まで一貫して自社で行う「垂直統合型」が日本メーカーの強みだった。

ところが時代は、水平分業型、さらにはサービスの多様化へと変化しており、独自技術へのこだわりを捨て、新たなビジネスモデルを作り上げることにエネルギーを注いだ企業が生き残っている。素晴らしい独自技術を開発できたとしても、市場が受け入れなければ全く意味がない。顧客にとっては「技術の良し悪し」よりも「自分にとって価値があるかどうか」が重要である。従って、自社技術だけにこだわるのではなく、他社が持っている技術と上手く組み合わせていく方が、現在では新規事業が立ち上げやすくなっていると認識する必要がある。

 

サービス化の時代になった今、ターゲットとする顧客に触れながら、顧客のニーズを引き出すことで、顧客に何とか製品を売ろうとするのではなく、顧客と対話しながら顧客中心に考えていくことが大切である。大事なことは「顧客の真の課題は何か」を見つけることである。単に顧客の要望を聞くのではなく、顧客が解決を必要としていること、困っていることを顧客と対話しながら見出すようにする。

 

新規事業では「人との関係」が最も重要

新規事業はゆるやかな立ち上がりをしていても、あとで大化けしたり、逆に最初から調子が良くても一気に駄目になったりすることも多く、既存事業と同じような指標で評価すると、いつまでも先行きが見えない。特にイノベーション型の新規事業では、実際に事業がどうなるかわからないし、成功する保証はどこにもないので、最初から営利性などを予測して判断することが問題である。

 

新規事業を会計基準で評価すべきではないとしたら、重要視されるのが「人との関係」である。事業活動は売上利益などの数字によって管理されるが、そもそも顧客が製品を購入してビジネスが成り立っている以上、大切にすべきは「人との関係」である。顧客との関係がどのように成り立っているかをチェックすることで、新規事業が上手くいくかどうかを判断することができる。「人との関係」とは次の3つ条件を満たしている状態である。

  1. 相手と直接接触できること
  2. オープンなやりとりができること
  3. 相互に影響し合う状態であること

 

3つの条件を満たすことができれば、結果としてコミットしあったり、協力しあったり、問題を解決しあったり、刺激しあったりすることができるようになる。全く未経験の新規事業を起こす場合は「人との関係」が成否の鍵になる。

 

顧客との関係作りが基本

新規事業では「顧客がどのような新製品を求めているのか」を繰り返し対話することで、顧客との関係を作っていくことが事業内容の革新性につながる。対話の基本はヒアリングである。顧客の話に耳を傾けて気持ちに寄り添うようにし、自分が感じたことを伝えるようにすれば、対話が成立する。

 

顧客との関係作りは、次の4つの段階が基本のサイクルになる。

①観察:顧客に何が起きているのか直接話を聞いてその様子を観察する。

②気づき:顧客の行動・気持ちと共に、顧客と接している自分の気持ちにも気づくようにする。

③共感:顧客の心情を感じ取る。

④介入:どのようにすれば顧客の課題を解決できるのかと考え、それを試してみる。

 

4つの段階を基本サイクルに実践していくことによって、製品・サービスを提供する前に顧客との関係を深めることができる。顧客は自分の方を向いてくれていることがわかると、製品・サービスの提供者を一生懸命応援してくれるようになる。新規事業の場合は、立ち上げの段階で製品・サービスの価値を顧客に伝えづらい分、このように目に見えない「共感」の要素が大切なポイントになる。