ダブルハーベスト 勝ち続ける仕組みをつくるAI時代の戦略デザイン

発刊
2021年4月14日
ページ数
248ページ
読了目安
342分
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AIを自社の戦略に取り込む方法
専門性がなくてもAIを手軽に利用できる時代になりつつある。今後、どのようにAIを活用して、自社の戦略に取り組むかが競争戦略の鍵になると説き、その考え方を示している一冊。
データを取得するための構造デザインこそが、これからのAI時代には重要であるとし、勝ち続けるための仕組みのつくり方を紹介しています。

AIがどんどん賢くなるようなループ構造をつくる

いまやAIは、それほど専門性がなくても、誰もが使えるパーツとして提供されつつある。AIがもたらす様々な機能は、1から開発しなくても、よそから借りてくることが可能になっている。これからはAIを当たり前に使いこなして、いかに稼ぐかの勝負になる。データを持っているだけでは差別化できず、AI技術者をたくさん抱えるだけでは、もはや競合に対して競争優位は築けない。肝心なのは「AIをどのように企業の戦略の中に組み込んでいくか」である。

 

AIは「勝ち続けるための仕組みづくり」において大きな威力を発揮する。そのためには、AIがより賢くなるようなループ構造をつくって回すのが第1のステップとなる。蓄積されたデータによって、AIの精度がどんどん高まっていくループ構造をつくるのが当面の目標となる。

しかし、この1つのループを回すだけでは、優位性を頑健に保つことはできない。AIがコモディティ化したということは、競合も同じようにそれを使えることを意味する。必要なのは、競争力の厳選を1つだけつくって満足するのではなく、二重、三重のループをつくって、複数の競争優位を築くことである。

1つの精度が上がれば、別のデータが取れるようになる。そのデータをもとにさらにAIの精度を上げていくことで、他社が追いつけない強力かつ持続的な競争優位性を獲得することができる。

 

AIと人間のコラボレーションの考え方を取り込む

人間はAIのサポートによって潜在能力を開花させ、AIは人間の教育によってさらに賢くなる。このような人間とAIのコラボレーションは「ヒューマン・イン・ザ・ループ(HITL)」と呼ばれ、単なる「自動化」とは区別されている。自動化が向いている分野と、HITLが向いている分野は自ずから異なる。HITLは、業務上、要求される水準に対して、AIだけのアウトプットではどうしても満たない場合に、人間がそのギャップを埋めてやればいい、という発想で成り立っている。この穴埋めの仕方は、3つのパターンに分けられる。

  1. 人力検査型:AIの自動的なアウトプットに対して人間がチェックと修正を行う
  2. 人間バックアップ型:AIが対応するが、時々人間がサポートする
  3. 監査型:AIのアウトプットの内、極めて確信度が低い場合は人間による操作が求められる

 

AIが学習を重ねて賢くなれば、人間がサポートする領域はだんだん減っていく。自動化によって従来の人間の仕事が置き換えられていくわけで、HITLは多くの場合、コスト削減・業務効率化が念頭に置かれやすい。

しかし、AIを使うメリットはそれだけにとどまらない。弁護士や会計士、建築士、医師、エンジニア、研究者など高い専門技能を持つ「エキスパート(専門家)」と呼ばれる人たちに対して、HITLのフレームを当てはめると、コスト削減以上の意味がある。専門家を専門領域以外の雑務から解放して、専門領域に特化させる。このような専門家をサポートするタイプのコラボを「エキスパート・イン・ザ・ループ(EITL)」という。

 

AIと人間のコラボといっても、関わる人間によって、様々なバリエーションがあり得る。ただ、どのパターンを目指すにしても、AIの学習データが自然とたまっていくループ構造をつくることが、AIを戦略に組み込む時の肝になる。

たとえ、技術がわからなくても、ヒューマン・イン・ザ・ループの考え方を取り入れることで、AIを自社の戦略デザインに組み込むことができる。

 

AIが実現する5つの最終価値から目指す方向性を考える

世の中にたくさんあるAIのユースケースを分解していくと、AIが発揮している価値は5つのパターンに集約できる。

 

①売上増大:レコメンデーション、顧客エンゲージメント、セールス強化

②コスト削減:RPA(完全自動化)、知的自動化+人的検査、専門家のための知的ツール、診断

③リスク/損失予測:故障防止、リアルタイム検知、資産管理、信用スコア、コンプライアンス

④UX向上:チャットボット・オンボーディング、カスタマーサポート、パーソナライズ

⑤R&D加速:ナレッジディスカバリー、シュミレーション、デジタルツイン

 

AIを使いこなせば、様々な価値を実現することができる。AIを使って何をしたいのか。AIがもたらす直接的な便益(最終価値)を戦略デザインに組み込むことで、他社に対する優位性を築くことができる。

 

目指す最終価値が見えてきたら、どうやってそれを実現するかが問題になる。「最終価値」は「機能」と「データ」の掛け合わせによって実現される。認識、予測、対処といった機能別のAIを組み合わせて、自社が求める「最終価値」を実現する。

大事なのは、5つの最終価値のどのパターンを自社に当てはめれば、レバレッジが効くかを知ることだ。ここさえわかれば、自社の目指す方向性を決められる。