Numbers Don’t Lie 世界のリアルは「数字」でつかめ!

発刊
2021年3月27日
ページ数
360ページ
読了目安
487分
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確かな数字をもとに世の中の全体像を学べる本
信頼できる統計の数字をもとに、人、国、食、環境、エネルギー、移動、機械という7つの分野から71のトピックを紹介しています。客観的な数字をもとに、社会の構造や全体像を広く知ることができます。

子供の数が少なくなったら、どうなるのか

歴史を振り返ると、かつては量を追い求めていたのに、急に質を求めるようになった時期がある。多産になれば、乳児死亡率が高い状況で生き延びる子供の数が増える、労働力が増える、老後の生活が安定するなど、様々な利益が得られる。ところが、そうした利益が減り、やがて全くなくなると、親は子供の養育や生活の質の向上にお金をかけるようになる。

 

人口を一定に維持できる出生率の水準を、人口置換水準という。若年で死亡する人がいることなどを考慮すると、先進国の人口置換水準は約2.1となる。出生率が人口置換水準まで下がった国の中で、さらなる下落を食い止めて人口を一定水準まで押し戻した国はこれまでに1つもない。人口置換水準を下回る社会で暮らす人たちの割合は、今なお増え続けている。1950年には、世界人口の40%が出生率6を超える国で暮らしていて、世界全体の出生率は約5だった。ところが、2000年になると、出生率が6を超える国で暮らしているのは世界人口のたった5%となり、世界全体の出生率は2.6となり、人口置換水準に近づいた。2050年には、人類の3/4近くが人口置換水準を下回る国で暮らすことになると推定されている。

 

このように世界規模でシフトが起これば、人口や人口構成、経済、そして国の戦略に極めて大きな影響が及ぶ。ヨーロッパの重要性が低くなり、アジアの重要性が増した。一方、出生率に目を向ければ、2020〜2070年までの50年間では、全世界の子供の75%近くがアフリカで生まれることになるだろう。

 

人口置換水準を割り込んだ国では、出生率が人口置換水準に近いままであれば、将来的な回復が大いに見込める。1.5を下回ると、回復の見込みは極めて低くなる。日本やヨーロッパの多くの国では、今後、徐々に人口が減少し、社会、経済、国家戦略の影響力も低下していくだろう。これまでのところ少子化対策で効果をあげたものはない。

 

寿命はどこまで延びるのか

1850年の時点では、男女合わせた平均寿命は、アメリカ、カナダ、日本、ヨーロッパの多くの国で約40歳だった。以降、平均寿命は右肩上がりを続け、今では倍近くになっている。どこの国でも女性の方が長寿で、現在の最高平均寿命は日本の87歳と少しだ。

1950年から2000年の間に先進国の高齢者の平均余命が毎年、約34日延びていることを考えれば、この傾向は今後も数十年は続くと考えられる。とは言え、人間の加齢プロセスを根本から覆す大発見でもない限り、この傾向は弱まり、やがては完全に止まるに違いない。例えば日本人女性の平均寿命の推移は、初めは徐々に増加して、半ばで急激に増加し、その後また緩やかな増加に転じて上限に達するロジスティック曲線を描きながら、既に限りなく90歳に近づいている。同様に、他の先進国の曲線を見ても、天井に近づいていることがわかる。

もし、まだ寿命の限界が全く見えていないのであれば、一番恩恵を受けるのは最も高齢な人であるはずだ。つまり70〜75歳の人たちよりも、80〜85歳の高齢者の方が既により長く生きているという事実によって、最終的な寿命も長くなる確率が高い。

 

世界最長寿の記録保持者は、1997年に122歳で亡くなったジャンヌ・カルマンというフランス人女性である。彼女が亡くなってから20年以上が経過しているのに、未だにこの長寿記録は破られていない。2番目に長生きした人は1999年に119歳で亡くなっていて、以来、117歳の誕生日を迎えられた人はいない。