社長、会社を誰に、どう継がせますか?

発刊
2021年3月3日
ページ数
256ページ
読了目安
262分
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推薦者

事業承継のための教科書
事業承継の基本を説明している一冊。社長が次に会社を引き継ぐ場合、どのような選択肢があり、何に気をつけなければならないのかがまとめられています。事業承継を考え始めたら、最初に知るべき基本的なことが書かれています。

事業承継のパターン

事業承継とは、事業を誰かに引き継ぐことである。社長は、株式をある程度まとめた上で「株式」と「経営権」の両方を譲ることもできるし、「経営権」は譲っても「株式」は譲らずにオーナーとして残ることもできる。

 

事業を引き継ぐ相手がいれば、その相手が後継者になる。この時、親族の中で誰も引き継ぐ人がいないなら、親族以外の誰かに引き継いでもらうことになる。

 

①親族内事業承継(経営権+株式)

②親族外事業承継

  1. 役員・従業員承継:内部昇格(経営権)、MBO/EBO(経営権+株式)
  2. 外部招聘(経営権)
  3. M&Aなど(経営権+株式)

 

以前は、事業承継と言えば、自分の子供に継がせることが大前提で、継いでくれる子供がいなければ、「自分の代でたたむしかない」と考える社長が多かった。しかし、今は自分の子供以外にも、継がせる相手はいる。ただ、どのパターンで事業承継するかによって、事前準備も手続きも全く違ったものになる。そのため、誰に何を承継するのか、社長自身がまずしっかりと整理することが必要となる。

 

体力・気力がある内に事業承継に着手せよ

誰を後継者として、どんな事業承継を行うかによってスケジュール感は違ってくるが、予想以上に時間のかかる手続きである。最適な事業承継のタイミングは、会社の置かれている状況、現社長のモチベーション、健康状態によっても変わってくる。ただ、バトンタッチの時期としては、現社長が65歳になった時期を1つの目安に考えるのがよい。65歳で承継しようと思ったら、場合によっては60歳くらいから準備をスタートさせなければならないこともある。時期社長の育成には、数年を要することもある。

 

多くの社長が「自分の会社を子供に継がせたい」と考えるから、そうなると必ず相続の問題がついて回る。その意味では、最初の相談相手として「顧問税理士」は適切と言える。しかし、税理士や会計士なら誰でも事業承継のプロフェッショナルというわけではない。承継の方法によっては、別の専門家を探す必要も生じる。まずは顧問税理士などに相談してもて、相応しい専門家を紹介して貰えなかった場合には、銀行に相談してみるのがいい。

 

分散した株式を集約する

M&Aで経営権も株式も譲りたいと思っているなら、社長が売った後も会社に残したいものは何かをまずは明確にする。M&Aで会社を売却することになれば、会社は買った会社のものになるので、社長が全部残したいと思っても、買い手が社長を交代させたい、重要な取引先を変えたいと言えば、それは引き継がれない可能性もある。「これは絶対に残したい」「ここは譲れない」と思う要素をはっきりさせること。その上で、相応しい承継会社を探す。

 

事業承継を考え始めたら、株式の分散を解消して、経営権と一緒に会社をコントロールできる割合の株式を握ることが重要になる。株式が分散してしまっている会社のとるべき対応は次の通りである。

 

①株式を買い取る

社長以外の誰かが株主になっている場合には、その相手方から株式を買い取ることで、持分を100%もしくはそれに近い割合まで高めるようにする。

 

②特別支配株主の株式売渡請求をする

90%以上の株式を持っていれば、他の少数株主が持っている株式を強制的に買い取ることができる。

 

③所在不明株主の株式を取得する

会社法の規定によれば、定時株主総会の通知などを株主名簿上の住所に送り続けたが、5年間以上到達せず、かつ配当金も5年間受領がなかった株主については、異議申述の公告や個別催告などの一定の手続きを経て、その株式を取得できる。

 

④株式を併合する

株式併合によって、端株(単元未満株)を生み出し、端株を強制的に買い取ることで、株式の集約を進める。株式併合は株主総会の特別決議なので、66.7%以上の賛成が必要となる。

 

⑤全部取得条項付種類株式に変更して買い取る

株主総会の特別決議によって、普通の株式を「全部取得条項付種類株式」に変更し、その後、会社がその株式を買い取る。

 

 

 

参考文献・紹介書籍