ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す

発刊
2020年12月21日
ページ数
320ページ
読了目安
398分
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人間が人間らしく豊かに生きる社会を目指すための処方箋
物質的には満たされた社会で、私たちは何を目指せばいいのか。経済成長だけを追い求める現在の社会から、人間性に根ざした価値観を大切にする社会への転換を図るために必要なことを論じた一冊。
持続的ではない現在の経済のあり方から、真に人間が豊かに生きる経済を目指すにはどうすれば良いかを考えさせます。

高原に至った社会

ビジネスはその歴史的使命を終えつつある。様々なデータは、私たちが過去200年にわたって連綿と続けてきた「経済とテクノロジーの力によって物質的貧困を社会からなくす」というミッションが既に終了していることを示している。この状況は昨今、「低成長」「停滞」「衰退」といったネガティブな言葉で表現されるが、これは何ら悲しむべき状況ではない。人類の宿願であった「生存を脅かされることのない物質的社会基盤の整備」が達成された現在は「祝祭の高原」とでも表現されるべき状況である。

 

21世紀を生きる私たちに課せられた仕事は、過去のノスタルジーに引きずられて終了しつつある「経済成長」というゲームに不毛な延命・蘇生措置を施すことではなく、私たちが到達したこの「高原」をお互いに祝祭しつつ、「新しい活動」を通じて、この世界を「安全で便利で快適な世界」から「真に豊かで生きるに値する社会」へと変成させていくことにある。

 

経済性から人間性への転換

「経済性に根ざして動く社会」から「人間性に根ざして動く社会」へと転換させる。私たちがこれから迎える高原社会を、柔和で、友愛と労りに満ちた、瑞々しい、感性豊かなものにしてくためには、この「経済性から人間性」への転換がどうしても必要になる。これを実現するために必要なのは、ここ100年の間、私たちの社会を苛み続けてきた次の3つの強迫からの脱却が必要になる。

  • 「文明のために自然を犠牲にしても仕方がない」という文明主義
  • 「未来のために今を犠牲にしても仕方がない」という未来主義
  • 「成長のために人間性を犠牲にしても仕方がない」という成長主義

 

具体的な高原社会のイメージは次の通りである。

・目指す方向

  • 大きな北欧型社会民主主義社会
  • イノベーションによる社会課題の解決
  • 企業活動による文化的価値の創造

 

・目指さない方向

  • 小さなアメリカ型市場原理主義社会
  • イノベーションによる経済成長の追求
  • 企業活動による大量消費の促進

 

人の人生を「生きるに値するもの」にする

私たちの住む世界は既に様々な側面で有限性という問題に直面しており、自然・環境・資源に対して大きな負荷をかける奢侈的な消費は物理的にも倫理的にもサステイナブルではない。しかし、日常的な実用ニーズが既に満たされてしまった現在の社会において、奢侈的な消費を厳しく戒めれば、それは著しい経済の縮小というハードランディング問題を生み出す。経済的には緩やかな微成長状態へと移行しつつ、高原社会を人が生きるに値すると思えるような真に豊かで瑞々しいものにするには「至高性」を核において展開される生産と消費が大きなカギを握る。

 

至高性に根ざした生産と消費のあり方は、「必要なものだけを買うというような寂しい消費のあり方」ではなく、一方でまた「他者への優越を示すための消費の無間地獄のような奢侈」でもない別の種類の欲求に根ざしている。その欲求とは「人間性に根ざした衝動」である。例えば「歌い、踊りたい」「描き、創造したい」「草原を疾走したい」「困難にある弱者に手を差し伸べたい」「愛しい子供を抱きしめたい」「何か崇高なものに人生を捧げたい」といった衝動である。これらの欲求は人間性そのもの=ヒューマニティに根ざすもので、その衝動こそが人間を人間ならしめている。

 

既に十分な文明化を果たした私たちの「高原社会」において、人々が本質的な意味でより豊かに、瑞々しく、それぞれの個性を発揮して生きていくためには、各人の個性に根ざした衝動を解放しなくてはならない。しかし、現在の社会では、このような「人間を人間ならしめる」衝動的欲求の多くが未達になっており、多くの人々がそのことに無自覚である。このような「人間的衝動」に根ざした欲求の充足こそが、経済と人間性、エコノミーとヒューマニティの両立を可能にする唯一の道筋である。

 

高原社会で私たちは何をするのか

経済活動を「いま、この瞬間の愉悦と充実を追求して生きる」コンサマトリーなものへと転換すること。「文明と技術によって牽引される経済」から「文化とヒューマニティによって牽引される経済」へと転換すること。

このようなコンサマトリーな社会においては、「便利さ」よりは「豊かさ」が、「機能」よりは「情緒」が、「効率」よりは「ロマン」が、より価値のあるものとして求められることになる。そして、一人一人が個性を発揮し、それぞれの領域で「役に立つ」ことよりも「意味がある」ことを追求することで、社会の多様化が進み、固有の「意味」に共感する顧客との間で、貨幣交換だけでつながっていた経済的関係とは異なる強い心理的つながりを形成することになる。

 

こうしたコンサマトリーな高原社会を成立させるためには、次の3つのアクションを起こせばいい。

  1. 真にやりたいコトを見つけ、取り組む
  2. 真に応援したいモノ・コトにお金を払う
  3. (1と2を実現するための)ユニバーサル・ベーシック・インカムの導入