2030年 世界はこう変わる アメリカ情報機関が分析した「17年後の未来」

発刊
2013年4月19日
ページ数
202ページ
読了目安
221分
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アメリカ大統領も参考にする未来予測レポート
米国大統領のために中・長期的予測を行う諮問機関「米国国家情報会議」が、発表した最新レポート。2030年の世界はどうなるかを予測し、わかりやすく解説しています。今後の国際情勢や経済のトレンドを知る上で参考となる1冊。

4つの構造変化

2030年の世界の構造を決定づけるメガトレンドは4つある。この4つの流れは既に存在しているが、今後15〜20年でさらに顕在化し、数値でわかる形で世界を変化させていく。

①個人の力の拡大
貧困層が激減し、アジアを中心に10〜20億人もの新たな中間所得者が誕生する

②権力の拡散
アメリカを始め欧米各国の力が衰え、世界は「覇権国家ゼロ」状態に

③人口構成の変化
高齢化や若者の減少、移民や都市化が世界のあらゆる地域で進む

④食料・水・エネルギー問題の連鎖
怖いのは天候不調。シェール系燃料の開発でエネルギー不足は解消

 

個人の力の拡大

現在、世界で約10億人が「極度の貧困」状態にあるが、2030年までに、貧困層人口は5割減るとの予測もある。減少は東アジア、特に中国で顕著だが、アフリカのサハラ砂漠以南の地域では、貧困層が減らず根深い問題として残る。

どの発展途上国でも、今後15〜20年の間に中間所得層が拡大する事は確実。人数だけでなく、国民全体に占める割合も増加する。世界の中間所得者数は現在の約10億人から2030年までに30億人を見込む試算もある。その結果、自動車や日用品の需要は急激に伸びる。同時に深刻な資源不足を引き起こす可能性が高まる。

先進国の経済は低成長を続ける。北米や欧州の購買力は今後10数年、年率0.6%しか伸びない。一方で、アジアの中間層の購買力は2030年まで年率9%で成長を続ける。

 

権力の拡散

2020年代のどこかで中国は米国を抜き世界第1位の経済大国になる。コロンビア、エジプト、インドネシア、イラン、南アフリカ、メキシコ、トルコなど「第2集団」は、集合体として考えた場合、2030年までに欧州や日本を上回る。

今後高成長が期待できる国家11カ国「ネクスト・イレブン」(バングラディシュ、エジプト、インドネシア、イラン、メキシコ、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、韓国、トルコ、ベトナム)の国力の合計は、2030年までにEU27カ国の合計を抜く。

2030年のインドは「世界景気の牽引役」と呼ばれる現在の中国のような存在になっている。中国の労働人口のピークは2016年に到来し、その地位は短命となる可能性がある。

2030年までに、一国で国際社会をリードするような覇権国は消滅する。米国も中国もその役割を果たせず、国際社会は不安定になる可能性がある。

 

人口構成の変化

世界人口は2012年71億人から2030年には83億人に達し、平均年齢は上昇する。OECD加盟国の年齢中央値は、2010年37.9歳から2030年には42.8歳に上昇。高齢化が急速に進む国では、生活水準をどう維持するのかという課題に直面する。

2030年までに、世界の都市人口率は約6割に達する。2030年までの間に都市人口は中国で2億7600万人、インドでは2億1800万人増加し、人口増加全体の37%を占める。

 

食料・水・エネルギー問題の連鎖

2030年までに食料需要は35%拡大。しかし、食料生産は減少傾向にあり、直近の約10年間で1.1%減少した。先進国にとっても、途上国にとっても、食料インフレは深刻な課題となる。

世界では年間6兆9000億㎥の水が必要となるが、これは現在安定供給が可能な水量を40%も上回る水準である。OECDは、2030年に世界人口の約半数が水不足の懸念のある地域に居住する状態になると予測している。

 

6つのゲーム・チェンジャー

国際社会が最近見せ始めている6つの傾向は、国際社会を「ゲーム」に例えた場合、その流れを大きく変えてしまう力を秘めている。

①危機を頻発する世界経済
新興国、特に中国・インドが世界経済の牽引役に。2025年、中国とインドの経済力を合わせると、その世界経済への貢献度は米国とユーロ経済圏を合わせた規模の約2倍にあたる見通し。但し、中国は緩やかに失速する。

西側先進国のほとんどの国が「頻発する経済危機」に対して強い抵抗力を持っているとは言えない。中でも特に不安なのが日本。急速な高齢化と人口の減少で、日本が長期的に経済成長を実現させる潜在力は極めて限定的。

②変化に乗り遅れる「国家の統治力」
ITの発達などにより国民の権利意識が向上、国家の統治力は衰える。人口構成が成熟期に入り、平均収入や教育水準が上がると、民衆は民主主義を求め、民主化の道を辿る。ただ、民主主義への移行期は政情が不安定になりがちで、2030年にこうした危険な状態にある国々はサハラ砂漠以南のアフリカやアジア、中東に集中。

③高まる「大国」衝突の可能性
人口構成の成熟化が進み、今後も国内紛争は減少傾向を続ける可能性は高い。一方で、国家間の紛争が勃発する可能性は高まっている。中国VSインド、米国VS中国が表面化する可能性もある。

④広がる地域紛争
中東と南アジアの2つの地域で起こる変化には、世界全体を不安定にさせる破壊力がある。崩壊の危機にある国家が集まるサハラ砂漠以南のアフリカ、中央アメリカやカリブ海地域などは、テロ集団や犯罪ネットワークが拠点を構える「無法地帯」化する危険性がある。

⑤最新技術の影響力
「情報技術」「機械化と生産技術」「資源管理技術」「医療技術」の4分野が今後の世界を大きく左右する。

⑥変わる米国の役割
米国は影響力が衰えるも「トップ集団の1位」に留まる。但し「米国の没落」の可能性もある。米国の不安要素は「医療制度の非効率」「中等教育の水準低下」「所得格差の拡大」。経済力が弱まる中で、現水準の軍事費を維持すべきか大きな争点となる。

こうした6つのゲーム・チェンジャー的要素と、4つのメガトレンドが絡み合い、お互いに影響し合いながら「2030年の世界」を形成していく事になる。