道端の経営学 戦略は弱者に学べ

発刊
2015年2月28日
ページ数
376ページ
読了目安
483分
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スモールビジネスにおける競争戦略
スモールビジネスで成功している様々な企業の事例をもとに、どのような環境において、それぞれの戦略が効果的なのかを教えてくれる一冊。成功している事業の理由を知ることこそが、大切であると説く。

ビジネス戦略のシンプルな法則

すべての戦略的課題の答えは「場合によりけり」である。

結論①:答えを見つけ出す秘訣は、それが「何によりけり」かを知る事だ。

結論②:課題の答えが「何によりけり」でなければ、それは戦略的課題ではない。

結論③:戦略とは決して解決しない課題である。

戦略はそれぞれの状況に合わせて立てなければならず、またビジネス環境も絶えず変化するため、戦略はそれ自体が動く目標である。

成功例を知るだけでは充分ではない。なぜ成功したのか、その理由をしっかりと理解する必要がある。理由を理解して初めて「場合によりけり」の意味がわかり、自分の店や企業にも応用できるかどうか見極められる。

 

商品の差別化を図る

①ニーズを見極め、ターゲットを絞る
フィットタイム・フォー・ウィメンは女性専用のジムだ。女性会員のニーズを熟知し、そのニーズに応える事が大きな特長であり、差別化につながっている。ここの会員は、女性だけでエクササイズできる点に価値を見出している。外から見られない構造、託児ルーム、清潔感。フィットタイムが提供しているサービスは、差別化戦略の最も重要な要素を表している。つまりターゲット顧客を見つけたら、顧客の好みにできるだけマッチしたサービスを打ち出さなければならない。競合よりも「優れた」ジムにするためのサービスは何か。それは誰に訊くかによっても違う。差別化戦略を実行する店や企業が、特定の顧客セグメントにターゲットを絞る理由もそこにある。

②儲かる顧客を引き寄せ、費用のかかる顧客を敬遠する
バンク・オブ・モンタナは、経費のかかる貸金庫や窓口業務といった負担を減らす一方、平均して預金額が高く、送金や振込などの取引回数が少ないか、電子口座の顧客に利息を上乗せしている。窓口やATMを頻繁に利用し、あちこちの店舗を利用したい顧客には他行を選んでもらう。バンク・オブ・モンタナにとって重要なのは、経費のかかる8割の顧客に選ばれない事だ。そうして余分な設備費や維持費をかけない事で浮いた資金を使って、顧客に高い利息を約束し、その上利益を確保している。

③カスタマイズ商品の利益とコストとのバランスをとる
タイライトでは、防錆性に優れたチタンを使って、客の注文やオプションに合わせた車椅子を製造している。チタンは強度重量比と振動吸収性に加えて、形状操作にも優れている。そのためタイライトでは、顧客の要望に合わせたカスタム化を大きな武器にしている。タイライトの車椅子は通常製品の3倍かそれ以上に値が張る。カスタマイズ商品の製造コストは高くつくため、ただ素晴らしいと思うだけでなく、実際に高い金額を払ってもタイライト製品を手に入れたいと思うユーザーがいなければ、この究極の差別化戦略は成功しない。

 

事業規模を拡大する

①規模の経済を活かして、事業拡大を図る
ブレイシズ・バイ・バリスはここ数年、新しい町で開業したり、引退する矯正歯科医から医院を買い取ったりして、事業を拡大してきた。矯正歯科を訪れるために、人はわざわざ遠くまで足を延ばしたがらない。しかも歯科矯正医院は、小さな受付エリアと、診療台が2、3台もあれば充分だ。最低限の設備で成り立つ医院は運営費が安くつく。サテライト展開する他の医院をうまく運営する鍵は、各医院の支援業務を一手に引き受けるハブ機能を充実させる事である。バリスは管理オフィスのハブ機能を存分に活用する事で、利益拡大の第一原理である「規模の経済」をうまく利用している。単独の矯正歯科医院では経営が成り立たない小さな町でも、サテライト医院システムを採用すれば利益を確保できる。

②固定費を回収できるだけの市場を見つける
スティール・ラバー・プロダクツは、ビンテージカーの特殊なゴム部品を販売している。この会社のカタログに載せている部品は12000点にも及び、そのすべての部品に金型をつくる必要がある。金型の製造コストは固定費に該当し、かなりの割合を占める。だが一旦金型をつくってしまえば、ゴム部品の製造にさほどコストはかからない。金型をつくってしまえば、スティール・ラバーの部品を買う人が増えれば増えるほど、利益が得られる仕組みである。まずはそのクルマの修理部品にどのくらいの市場規模があるのかを見極めなければならない。

 

参入障壁を築く

①2社で分け合うほど市場が大きくない内に参入する
ウィルコックスソンズ・キッズプレイスは、小さな店の中でもとりわけ小さいが、100km圏内で唯一の子供用家具ショップだ。この店は強力な参入障壁を築いている。ジョーンズボロでは子供用家具はかなりの需要があるとはいえ、その需要は2店目がやっていけるほど大きくないからだ。1つの店や企業では収益が成り立つが、2つの店や企業では収益が成り立たない状態を「自然独占」と呼ぶ。自然独占が生じる要因が何であれ、取るべき戦略は、最初にその市場に参入せよだ。

②埋没費用で参入する
消防用ホースは、布を織機で筒状に織った外筒に、ゴムで内張り加工をして作る。この仕事は織機が命であり、埋没費用となる。織機は他の用途には使えない。埋没費用は強力な参入障壁になる。埋没費用を抱える企業はその市場に全力を傾ける。撤退も方向転換もなく、その市場にとことんしがみつく以外に選択肢はない。そして、その覚悟が新規参入者を思いとどまらせる。