ロビイングのバイブル

発刊
2016年8月9日
ページ数
256ページ
読了目安
172分
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推薦者

「ロビー活動って何?」という人のための本
ロビー活動によって、事業活動を左右する条件を整備しなければ、市場から締め出されることがある。海外では自社の事業基盤を獲得するために、当たり前のように行われているロビー活動について、解説しながらその必要性を説く一冊。

ロビーは悪か

ロビーという言葉は日本人にとって馴染みが薄く、「陳情」「族議員」「特定団体の私利私欲」といったネガティブなイメージを抱いている人は多い。しかし、海外で戦う企業ならば、ロビーが良い悪いという議論ではなく、ロビーがないとその国の市場から締め出されてしまう時代に入ったと感じているだろう。

ロビーを行うロビイストの雇い主は企業であったり、業界団体であったりと様々だ。自らの利益を守るため、あるいは拡大させるために政策決定者に働きかける。ロビーの結果、国民の利益にならず、一民間企業にとっての利益にしかならないのであれば、大きな批判を浴びることになる。そして、決定プロセスの透明化も同時に求められている。不透明さを排除して、オープンなロビー活動が行われるとしたら、それは自分の声や考えで、直接世の中を良くすることになる。「こう言うルールや規格があれば社会はもっと良い方向に向かうはず」という、公益性を出発点とした主張を発信することが、今の日本企業に必要とされている。

 

密室で物事を進めるのが難しくなった

実務を担う省庁と強力なパイプを持ち、豊富な専門知識と幅広い人脈をもとに、政策立案に関与する。これは政治やロビイストが果たす役割の1つである。これまで日本では「ロビイング」というと、物事が水面下で運ばれ、比較的狭い範囲のステークホルダーだけが参加して物事が決められてきた。このことが「ロビイング」に胡散臭いというイメージを与えてしまった。

しかし、日本の意思決定のメカニズムは大きく変わり始め、密室で物事を決めていける可能性が相対的に小さなものとなった。国民の見えないところで政策が骨抜きにされていくことに大きな批判が巻き起こり、決定プロセスの透明化が求められたのだ。そのため、自社の利益を守るために、業界団体のみを通じて規制省庁に働きかけたり、有力な政治家に働きかけたりするだけでは、物事が思うように動かないことが多くなってきた。

 

世論を喚起していくオープンなロビー活動が必要

現在、世界の潮流となっている「パブリックアフェアーズ」と呼ばれる新しいロビー活動が、日本でも始まりつつある。パブリックアフェアーズとは、これまでのロビー活動に、公正性、透明性を加えたものである。これはオープンな場で議論することを前提とする。メディアに公益性を主張していくことで世論を喚起していく。そのためPRの手法が援用されることが多い。

パブリックアフェアーズは国益、社会への貢献を目的としており、広い合意形成を目的としている。これまでのロビー活動は主に政府・政治家に対して行われてきたが、パブリックアフェアーズは、NGO、NPO、消費者団体、学術団体に対しても実施する。

旧来のロビー活動は今後通用しない時代になる。だからこそ、企業は新しいロビー活動の手法を学び、専門家であるロビイストとともにロビー活動に取り組むべきである。

 

ロビー活動の始め方

企業のロビー活動は何を目標とするかによって、大きく3つに分かれる。

・攻めのロビー活動/守りのロビー活動
ルール作りに関与して、自社の事業展開の条件を整備する。

・市場調査
自社に不利な規制ができないように目を光らせる。

これまでは、困ったことがあれば関係当局に頭を下げに行ったかもしれないが、これからは官と連携して対抗策を練り、むしろ攻めに回るべきである。

ロビー活動は、短期的な目線で行うものではない。自社の強みや弱みを理解した上で、中長期的な観点から、必要な事業環境を整備するために行うものだ。だからロビーチームの行動には、事業戦略が密接に関わってくる。そのため、ロビーをやると決めた企業の経営層は、自らが先頭に立って、ロビーとはこういうものだと伝えなければならない。