オープンイノベーション 組織を越えたネットワークが成長を加速する

発刊
2008年11月25日
ページ数
400ページ
読了目安
831分
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オープンイノベーションの教科書
従来、イノベーションは大企業の研究開発部門が大きな役割を担い、その知識や技術は公開されず、実用化されないまま埋もれてしまうことも多かった。しかし、大企業や大学、研究機関以外にも、スタートアップ企業や個人発明家など、役に立つ知識は世の中に分散している時代にあっては、それら社外の情報をうまく活用することがイノベーションを加速する道だと説く。

複数の組織がコラボレーションして、共同でイノベーションを管理する重要性が書かれています。

オープンイノベーションとは

オープンイノベーションとは、知識の流入と流出を自社の目的にかなうように利用して、社内イノベーションを加速するとともに、イノベーションの社外活用を促進する市場を拡大することだ。オープンイノベーションは、自社のテクノロジーを発展させたいのなら、社内のアイデアとともに社外のアイデアも活用できるし、そうすべきだということ、そして市場への進出にも、社内とともに社外を経由したルートを活用すべきだということを想定したパラダイムである。

 

オープンイノベーションプロセスは、社内外のアイデアを結合してアーキテクチャやシステムにまとめ、その要件を定めるためにビジネスモデルを活用する。ビジネスモデルは、社内外のアイデアを活用して価値を創造するとともに、その価値の一部を獲得するための社内メカニズムを築く。オープンイノベーションは、現在の企業活動とは別の社外チャネルを介して社内アイデアを市場に投入することによっても新たな価値を生み出せることを想定している。

 

オープンイノベーションの根本的な前提は、役に立つ知識が広く分散していることになる。だから、最も有能なR&D組織であっても、イノベーションのコアプロセスとして社外にある知識供給源を特定し、その知識を吸収して活用しなければならない。かつて、アイデアは大企業からしか産まれなかったが、現在はアイデアが育つ形態には様々なものがあり得る。個人発明家やシリコンバレーのハイテクスタートアップ企業、大学の研究部門、大企業からのスピンオフ組などだ。

 

従来のイノベーション理論との違い

①社外の知識に対して社内で蓄積した知識と同等の重要性を認めること

従来のイノベーション理論は、社外の知識を重要だが補完的な役割を果たすものと捉えていた。

 

②R&Dから商業的な価値を引き出すに当たって、ビジネスモデルを軸に据えていること

オープンイノベーションでは、企業はビジネスモデルを活性化するために社内外から才能のある人物を探し求める。その一方で、オープンイノベーションは、企業の発明の面でのアウトプットが現在のビジネスモデルに制限されないようにするとともに、様々なチャネルを介して市場に進出できるようにすることを提案する。

 

③R&Dプロジェクトの評価において、タイプⅠ、タイプⅡの計測ミスを考慮に入れること

以前のイノベーション理論は、R&Dプロジェクトの評価においてミス(タイプⅠ、タイプⅡ)が起きないことを前提としていた。R&D評価は、企業のビジネスモデルのコンテクストで行われ、プロジェクトがビジネスモデルに適合するかどうかによって決まる。

  • タイプⅠ:フォールスポジティブエラー。R&Dプロジェクトがプロセスの最後まで到達し、企業のビジネスモデルを通じて市場に到達したのに、失敗した場合のこと
  • タイプⅡ:フォールスネガティブエラー。プロジェクトが企業のビジネスモデルに適合せず、企業にとって価値のあるものを見抜けなかった場合のこと

オープンイノベーションでは、ビジネスモデルを企業内でのR&Dプロジェクトの評価に力を注ぐ認知装置として位置付ける。ビジネスモデルは、認知の補助装置として、モデルに合致するプロジェクトを拾い出し、合致しないものを捨てる。抜け目のない企業は、フォールスネガティブエラーから価値を引き出し、新しい潜在市場を見つけ、そこからビジネスモデルを組み立てられるようにするために、フォールスネガティブエラーを管理するための新たな方法論を組み込まなければならない。

 

④知識やテクノロジーの目的にかなうような流出

オープンイノベーションパラダイムでは、技術の流出を認め、社内では市場にたどり着くための明確な道筋が見えないような技術に外部チャネル(ライセンス提供、ベンチャー、スピンオフなど付加価値を生み出せるもの)を追求するチャンスを与える。これらの外部チャネルは、フォールスネガティブなR&Dプロジェクトを管理するための手段にもなる。これらのチャネルは、プロジェクトに予算を割り振る従来型のNPV(正味現在価値)アプローチではなく、リアルなオプションとして管理しなければならない。

 

⑤潤沢な知識という風景の想定

オープンイノベーションでは、役に立つ知識は広く分散しており、一般に高品質だと考えられている。最も有能で洗練されたR&D組織でも、社外の知識供給者との間で良好なアクセスを保たなければならない。重要なのは、このような社外の知識供給源が、大学や国立研究所だけではなく、スタートアップ企業、専門的な小売業、個人発明家、さらには引退した技術スタッフや大学院生にまで広がっていることだ。

 

⑥知財管理の先取り的な役割

従来のイノベーション理論は、知財をイノベーションの副産物と捉えており、主として防衛的に使っていた。こうすれば、企業は社外の知財権に妨げられずに社内の研究を続けられる。しかし、オープンイノベーションでは、これは知財の様々な用途の1つにすぎない。知財は、定期的に社内と社外を行き来し、市場を活用して価値のある知識と交換できるので、知財はイノベーションの重要な要素となる。知財は、ときには無償で公開されたり、寄付されたりすることさえある。

 

⑦イノベーション仲介者の役割の重視

仲介者は今やイノベーション自体の中で直接的な役割を果たすようになってきている。イノベーションがよりオープンなプロセスになるにつれて、仲介市場が成長し、以前なら企業が完全に社内に抱え込んでしまう段階に入った技術でも取引されるようになった。

 

⑧イノベーションの能力、達成度の新しい評価指標

新しいアプローチが企業のイノベーションプロセスの達成度を評価する新しい評価指標を開発した。