絶対にかかりたくない人のためのウイルス入門

発刊
2020年12月9日
ページ数
184ページ
読了目安
185分
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とにかくわかりやすウイルスの解説書
ウイルスとは何なのかをわかりやすく解説している一冊。ウイルスの構造や働き、人への感染方法、どこからやって来たのかなど、科学的知識がない人でもその概要を簡単に理解できます。新型コロナウイルスのようなパンデミックがなぜ起こるのかといった原理が書かれています。

ウイルスとは何か

世界には何百万種ものウイルスがいて、人間に感染するのはその内のごく一部だ。コロナウイルスという言葉は、哺乳類や鳥を病気にする色々な種類のウイルスのグループをまとめて指す総称である。SARS-CoV-2は、COVID-19肺炎を引き起こす1種類のコロナウイルスの正式名称。

 

ウイルスの実際の大きさは100ナノメートル。これをノミの大きさ(1.5mm)に拡大させると、大きさが1万5000倍になる。ウイルスはどんな毒とも違って、身体の中に入ると猛烈に増える。1個のウイルスが数日で何百億個ものコピーに増える。そのコピーが身体中に散らばって、病気を引き起こしたり、他の人に感染したりする。

 

ウイルス以外の生き物はすべて細胞でできている。細菌などの微生物はたった1個の細胞でできている。細胞は自身の部品を作ったり、必要なエネルギーを生み出したり、自分自身を丸ごとコピーしたりできる。

ウイルスは細胞ではない。そして、細胞よりも単純なだけでなく、自活できない。そこで代わりに、究極の寄生体という道を選ぶ。感染した他の生物の細胞に頼り切って、生き延びたり増殖したりする。

 

COVID-19ウイルスは、ウイルスとしてはかなりありふれたものだ。中心には遺伝子が糸のように連なっている。この遺伝子は、DNAに似たリボ核酸(RNA)という化学物質でできている。ウイルスの遺伝子は人間よりもずっと少なくて、COVID-19ウイルスではたった29個。しかしそれだけで、感染した細胞を完全に支配して、新しいウイルスを大量に作る方法を正確に指示できる。

 

ウイルスはどこから来たのか

ウイルスがある生物種から別の生物種へ乗り移ることを、スピルオーバー(種間伝播)という。どのくらい頻繁に起こるかは正確にはわかっていないが、ほとんどの場合はあっという間に失敗に終わるだろう。例えば、あるウイルスが1人目に感染して、その人を病気にしても、人から人へうまく伝染する方法を進化させなければ絶えてしまう。しかし時には、COVID-19ウイルスのように、新しいスピルオーバーによって新たなエピデミック(地域的流行)の火がつくこともある。

元々どこでどうやってCOVID-19ウイルスが人間に乗り移ったのか、正確なところはこれからも決してわからないだろうが、仮説はたくさんある。中国・武漢の市場では、肉や毛皮や漢方薬として使うために、ありとあらゆる野生生物が売られている。そうした市場でスピルオーバーが起こったのかもしれないと考えている科学者もいる。あるいは、農場でスピルオーバーが起こったということもありうる。

 

ウイルスは、素早い進化によって次々に問題を解決して新たな戦略を生み出す。COVID-19ウイルスも、人間の免疫反応を変えさせるか、またはかいくぐる巧みな方法をひねり出すかしたのは間違いない。例えば、このウイルスは、インターフェロンの生成を妨げる方法を持っていると考えられる。インターフェロンは、自分がウイルスに感染したことに気づいた多くの細胞が作り出すサイトカイン(免疫細胞に指示を出すタンパク物質)の一種だ。インターフェロンは人間の免疫系に最初に発破をかけるシグナルの1つなので、このウイルスの戦法はすごくずる賢い。

免疫があまり長い年月持たないようなウイルスがあるのも、高速進化のせいだ。感染するか、またはワクチン接種するかしても、ウイルスがずいぶん変化すると、免疫細胞がそれを脅威だと気づかないかもしれない。毎年冬に新しいインフルエンザワクチンを開発しないといけないのはそのためだ。

インフルエンザウイルスは素早く変異するだけでなく、人間と他の動物の間をかなりしょっちゅう行き来できる。そうして遺伝子をシャッフルして人間のところに戻ってくると、全く新たな系統のように振る舞う。実際に高速進化の生で、優れた抗ウイルス薬やワクチンの開発はますます難しくなる。でも、ウイルスもどんどん危険な方に進化していくとは限らない。ウイルスが気にしているのは、生き延びて増殖することだけだ。宿主の身体を傷つけるのは本意ではなく、宿主を殺してしまったら、他の人に広まるチャンスが減ってしまう。普通の風邪のウイルスが繁栄しているのは、ほとんどの人は感染してもさほどひどくならずに、家に籠る必要がないからだ。

 

ウイルスの進化を止めることはできないが、スピルオーバーを起こりにくくしたり、被害を抑えたりする方法はたくさんある。それを押さえておくのは大事だ。大事なポイントは、人類が地球全体を支配したことで、何百万もの人が何百万もの人間以外の動物と度々接触するようになったことだ。