ティム・クック-アップルをさらなる高みへと押し上げた天才

発刊
2019年8月22日
ページ数
368ページ
読了目安
536分
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ジョブズの後、なぜアップルはさらなる成功を収めたのか
スティーブ・ジョブズの後を継いだアップルCEOティム・クックとは、どのような人物なのかを紹介している一冊。ジョブズの死後、なぜアップルが当初の予想に反して、成功を収めることができたのかが書かれています。

最高の人選

資材調達の経歴を持つティム・クックは、アップルにとって、そしてジョブズ個人にとって、最も適した人物だった。ジョブズはクックに会うとすぐに、彼が製造に関して自分と同じ見解を持っていることに気が付いた。「クックは私と同じビジョンを持っていて、高いレベルで戦略を話し合うことができたんだ」と彼は語っている。

1998年3月、ジョブズは当時37歳のクックをワールドワイドオペレーション担当上級副社長として雇い入れた。その基本給は40万ドル(約4500万円)で、さらに50万ドル(約5600万円)が契約金として支払われた。クックはアップルの製造と流通を徹底的に見直すという、非常に重要な役割を与えられていた。そして、これは、ジョブズがこれまで決断した中で最高の人選の1つだった。

サプライチェーン改革でアップルの収益を高める

クックがアップルに来てちょうど7ヶ月経った頃、クックはそれまで30日分あった製品の在庫をわずか6日分にまで減らしていた。生産プロセスのあらゆる細部にまで注意を払うことにより、アップルのオペレーションシステムの全面的な見直しを短期間の内に行った。

ジョブズが製品ラインを4つのモデルにまで削減したのと同様のことを、クックは共に働くサプライヤーを少数に絞り込むために行った。クックはできるだけ多くの部品をアウトソーシングしていった。外部の提携企業に生産をアウトソーシングすることによって、クックはアップル最大の問題の1つである在庫に関する問題を解決することができた。アップルは何年もの間、部品や売れ残りのマシンを保管する倉庫群に何百万ドルものコストをかけていた。1996年、売れ残ったコンピューターの膨大な在庫はアップルを倒産に追い込むほどだったため、新体制の下では、在庫が少なければ少ないほど良いとクックは考えた。

オペレーションは大幅に改善され、クックはアップルの収益性回復に重要な貢献をしたと評価された。彼が確立したシステムは、数年後のアップルの驚異的な成長をも促進することとなった。クックによるアップルのオペレーション変革と、ビジネスのあらゆる側面に対する深い理解は、同社の劇的な復活にとって極めて重要だった。アップルに貢献してきたこの部門を率いた経験は、彼にとってCOO、さらにはCEOとして企業全体を率いるための準備期間となった。

2002年、クックはセールスならびにオペレーションの責任者となり、2004年にMacのハードウェア責任者、2005年にはCOOに任命された。この昇進を機に、ジョブズはクックを自らの後継者として育て上げていった。

予想を覆す成功

2018年8月、アップルは歴史上初めて1兆ドル(約110兆円)の市場価値を持つ企業となった。ここまで株価が上昇したのは、ティム・クックがCEOになったことが原因だと言っても過言ではなく、実際に彼がトップに立ってから、株価は以前の3倍になっていた。iPhoneに命を吹き込んだのはジョブズだったかもしれないが、自社製品を新たな高みへと導き、アップルを繁栄させたのはクックだった。

クックが製品の開発に深く関わることはないが、そもそもその必要はない。多くの人は、彼が「製品畑の男」ではないことを理由に失敗すると予想していたが、むしろそれが良かった。アップルのような成熟した企業に最も重要なのは、製品ではなくロジスティックス、効率的なサプライチェーンや流通、財務、マーケティングだということだ。クックは、このすべてに対する才能を持っていることを証明してきた。