学問のすすめ 現代語訳

発刊
2009年2月9日
ページ数
251ページ
読了目安
301分
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なぜ学問をする必要があるのかを知るための古典
福澤諭吉による古典の傑作

明治5年に初編出版以降、最終的には300万部以上売れたとされるベストセラー。当時の日本人の10人に1人が読んだ計算になる。

「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず。」

天が人を生み出すに当たっては、人はみな同じ権利を持ち、生まれによる身分の上下はなく、人としての体と心を働かせて、この世界のいろいろなものを利用し、衣食住を満たし、自由自在に、それぞれが安楽にこの世を過ごしていける。

しかし、人間の世界には、賢い人もいれば愚かな人もいる。貧しい人も、金持ちもいる。社会的地位の高い人も、低い人もいる。

その理由は、学ぶか学ばないかによってできるものである。世の中には、難しい仕事もあるし、簡単な仕事もある。心を働かせてする仕事は難しく、手足を使う力仕事は簡単である。だから、医者・学者・役人、大きい商売をする町人、多くの使用人を使う農家は、地位が重く、重要な人といえる。
社会的地位が高く、重要であれば、自然と富み、下のものから見れば、到底手の届かない存在に見える。これは、元々を見れば、その人に学問の力があるかないかによって、違いができただけである。

齋藤 孝齋藤 孝

学問とは何か

一生懸命にやるべきは、普通の生活に役立つ実学である。例えば、いろは四十七文字を習って、手紙の言葉や帳簿の付け方、そろばんの稽古や天秤の取り扱い方などを身に付けることである。地理学、歴史学、経済学、修身学など、学ぶべきことは非常に多い。
それぞれの学問では事実を押さえて、物事の性質を客観的に見極め、物事の道理をつかまえて、いま現在必要な目的を達成すべきである。

こういった学問は、身分の上下になく、皆が身に付けるべきものである。そして、士農工商それぞれ自分の責務を尽すことが大事であり、やがて個人的に独立し、家も独立し、国家も独立することができる。

今の世の中に生まれて、国を良くしようと思うものは、それほど苦悩する必要はない。人としての当然の感情に基づいて、自分の行動を正しくし、熱心に勉強し、広く知識を得て、それぞれの社会的役割にふさわしい知識や人間性を備えることである。
そうすれば、政府は政治をしやすくなり、国民は苦しむことがなくなり、お互いに責任を果たすことができる。そうやって、国の平和と安定を守ることができる。

学問の趣旨

人間たる者は、ただ自身の衣食を得ただけで満足してはならない。人間はその本性として、広く他人と交際し、その交際が広がれば自身の幸福も大きく感じる。よって、人間社会が生まれた。
世の中の学問や工業、政治は、みな人間社会のための存在する。人間は社会の一員として世の中のために務めなければならない。そして、学問をするには志を高くしなくてはならない。