現場が輝くデジタルトランスフォーメーション RPA✕AIで日本を変える

発刊
2020年11月11日
ページ数
280ページ
読了目安
317分
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RPAの基本
コンピュータで行う作業を自動化するツールRPAの普及が進んでいる。RPAの導入に必要な考え方や成功事例などを紹介しながら、業務の効率化を図る方法が書かれています。

RPAが手作業から人間を解放する

人間をサポートするためにシステムを導入したはずなのに人間の方がシステムに使われている。人間が紙の情報をシステムに入力したり、1つのシステムから別のシステムへと転記したり、異なるシステム間の数字の照合チェックをしたりする手作業が必要になり、その作業に人間がとらわれている。これらの作業こそ、本来は人間がやるべきではなく、システム間の連携で自動化しておくべき作業だろう。

 

これを解決するのが、RPAのロボットである。RPAは、コンピュータで行う人間の手作業を自動化するソフトウェアであり、このような手作業から人間を解放してくれる。RPAがもたらすものは自動化による業務効率化だけではない。事務作業にとらわれて疲弊している日本の現場が、アナログの手作業から解放され、自ら使いこなせるデジタルテクノロジーのツールを持てるようになる。そして、人間らしいコミュニケーションや考える仕事、創造的な仕事にもっと時間を使えるようになる。

 

これまでは、どんなに新しいシステムが導入されても、システム内で完結できず最後に手元に残る作業があり、この業務量が時間に経つにつれて増えていくのが常だった。こうしたシステムに取り残された現場の手作業を「ラストワンマイルの業務」と呼んでいる。RPAはこのラストワンマイルを自動化できるツールだ。例えば、毎日画面に向かって多数の項目をデータ入力したり、データをダウンロードしてエクセルで作業・検証し、それをメールで送信したりPDFを作成して顧客に送付するなど、人間が手作業で行ってきた業務をRPAが自動的にやってくれる。

 

RPA導入のハードル

RPAの導入時には、次の2つの大きいハードルがある。

 

①魔法の杖問題

他社の成功事例の結果だけに目を奪われ、RPAさえ導入すれば何でもできると、経営者が過信してしまうこと。経営者は掛け声だけで本気のコミットメントもなく、中間管理層に丸投げするような導入では成功はおぼつかない。少なくとも次の3点は検討しておく必要がある。

  1. RPAありきで闇雲に自動化するのではなく、まず業務を先に見直すこと
  2. 似たような処理をする部分は共通化しておくこと
  3. いきなり全社的に導入するのではなく、一人から課の規模で実際に使って、効果が上がれば標準化すること

 

②過去のEUC(エンドユーザーコンピューティング)の悲劇問題

RPAをエクセルやロータスノーツのマクロにおけるEUCと同じようなものだと誤解して敬遠してしまうこと。過去に集計や分析ツールとしてユーザーが開発したマクロが増えすぎ、IT部門がその管理に苦労した会社は多い。だが最新のRPAはすべてのロボットを管理するツールを提供しており、基幹システムとの連携においても利用されている。

 

これらのハードルは、従来のシステム開発に比べれば高くなく、投資効果において、より効果的な場合が多い。

RPAの導入プロジェクトの成功企業には「経営者が本当の意味で組織の殻を破っている」という共通項がある。過去の成功体験を生かしつつも、新しい取り組みを本気で推進している。

 

RPAに向いている業務

人間がPCの画面上で行う操作の中で、特にロボットが得意とする代表的な処理には、次の7つが挙げられる。

 

①入力:データやテキストを入力する

②転記:データやテキストを転記する

③照合・突合:情報を比較し照合する

④情報収集:情報を取得し登録する

⑤モニタリング:異常を検知して報告する

⑥送付:情報を収集して送る

⑦集約・加工:データを集約・加工する

 

RPAによる自動化は、これらの範囲に収まるものではない。多数のロボットを連携させれば、大規模なバックオフィス業務を完全自動化することもできるし、システムとシステムをつなぐ作業が得意なため、AIやIoTなど、様々なデジタルツールをシステムにつないで新しいデジタルの使い方を創出することもできる。