脳と瞑想 最先端脳外科医とタイの瞑想指導者が解き明かす苦しみをなくす脳と心の科学

発刊
2016年10月28日
ページ数
309ページ
読了目安
305分
推薦ポイント 2P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

推薦者

脳と瞑想のメカニズムを知る
脳外科医とタイ寺院僧侶の対談本。脳と瞑想をテーマに、脳と瞑想のメカニズムについて科学的な知見から解説されています。

瞑想は動物脳をリセットする

「依存症」には、脳の神経伝達物質である「ドーパミン」が関わっている。ドーパミンは「報酬系」と呼ばれる物資で、何かしらの欲求に対してそれが満たされた時、もしくは満たされるとわかった時に脳内から「快」の感覚を与えるものである。これを欲する回路ができてしまうと、その報酬に対する強い渇望が起こるが、刺激は繰り返されるうちに慣れてしまい、さらに強い刺激を求めてしまう。それが続くと「依存症」になってしまう。

人間の脳は、動物に近い、本能的で原始的な古い脳の上に、ハードディスクがどんどん上乗せされるように進化してきた。動物脳と人間脳の間にある自我が司令塔になって、問題を主体的に解決しようとする。それが人間ならではの脳の使い方である。瞑想のドーパミンは動物的な脳をコントロールする自我の部位を活性化する。瞑想をすることによって、動物脳主体の回路を一度「リセット」でき、自我が司令塔になる脳の使い方にシフトチェンジができる。

集中と観察

脳科学的にはまだ証明されていないが、「集中する」というのは能動的な機能で、脳の前の方、特に右の前頭葉を使っている。脳全体を使っているわけではない。それに対して「観察する」のは、おそらく頭頂葉系のプレクネウスという、一番繊維が集まっているところを使っている。最大に繊維が集まっているということは、最大に情報が集まっているということ。だから、一番上から情報を俯瞰できる。プレクネウスは極めて受動的である。観察というのは、脳で最も情報が集まる場所を使う。

マインドフルネスの特徴的な機能はメタ認知であり、あるがままの受容であり、包括的な把握である。それはプクネウスの情報の俯瞰、受動的、多大な情報量の把握とぴったり対応する。

右脳というのは能動的で、前頭葉的な何かの自分のアイデアがあって、理念があって、それで集中していく。だから、本当に脳を使うのは、より前の受動の観察の方である。現に人間は、成熟すると受動的になっていく。武術で「後の先」ということが言われるが、まず受動で受け止めて、受容してから能動を始めていく。本当は受動こそが一番脳を使う。

あるがままに見るというのは、プレクネウスが現実を観察しているということ。一番情報を多く扱えるプレクネウスを司令塔にしてしまえば、常にあるがままの正確な情報が入り、いろんな脳を使うようになるため、動物脳が外と結びついて変な回路を作れなくなる。本当は脳にとってこれが一番いい。

瞑想によってストレス耐性をつける

ストレス耐性があるということは、動物脳をコントロールする人間脳が成熟していること。幸せに生きる、苦しみのない生き方をする脳の使い方を考えた時、ストレス耐性が一番大事である。そこには瞑想も絡んでくる。

適度なストレスはむしろ細胞や生物自身を活性化させる。人間は一回ストレスによって、よりレベルアップできる力がある。瞑想はレベルアップするための大きな手段である。軽いストレスを与えて、熟成する期間を与える。そこでストレスを乗り越える。そして、また次のより強いストレスを与えると、またそれを乗り越える。

現代人は、より脳の使い方が複雑になった。司令塔がしっかりしていなければ複雑な脳は使いこなせず、厳しい環境にワンパターンの反応しかできなければ、様々な病気になる。司令塔をしっかりさせる、つまり脳の様々な部位を環境や目的に応じて適切に使えるようにする有効な手段が瞑想である。

幸せに生きる鍵というのは、動物脳的な情動や衝動を、どう上手にコントロールしていくかということである。動物脳は自然に放っておいたらどんどん力を増していく。いろいろなやり方でこれをリセットしていかなくてはならない。瞑想はそのための手段の1つである。