世界市場で勝つルールメイキング戦略 技術で勝る日本企業がなぜ負けるのか

発刊
2016年11月18日
ページ数
256ページ
読了目安
344分
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世界で成功するためには何が必要か
グローバル市場で成功するためには「ルール」を主導的に作る側にならなければならない。日本企業が苦手な世界でのルールづくりにおいて、企業がすべきアプローチ方法を紹介している一冊。

日本企業に不足している意識

革新的な技術は得てして、既存の市場のプレーヤーを無価値化すること、規制を無意味化することを伴う。しかし、既得権益の抵抗や、規制当局との議論を制することができないために市場化に失敗する例は少なくない。

このような状況に陥ってしまう理由は、ルールメイキング戦略という戦略思考の欠落と、ルールメイキング戦略をやり遂げるために不可欠な組織体制の構築や戦略的な経費予算の資源配分が不十分なことに起因している。

日本企業はルールに対して基本的に受け身だ。「ルールは政府がつくるもの」という意識であるため、ルールの変化に迅速に適応することを初動とする経営姿勢が染み込んでしまっている。結果、ルールを構想する段階から能動的に参画する意識が欠落し続けている。一方、欧米企業はより良い世界を形づくる上でルールは常に革新されていくものであるという前提に立ち、企業と政府の立場に関係なく、あるべきルールを議論することは責務であるという認識を持っている。このマインドセットの違いが日本企業と欧米企業の成長速度の差を生み出している。

ルールに対するマインドセットを変えよ

技術革新もルールメイキングとセットでなければ意味を成さない。昨今の典型例は自動運転技術。自動運転による事故の責任は運転手にあるのか、それともメーカーにあるのか、というルールが決まらない限り、自動運転市場は実現されない。ルール作りと技術開発を同時に進めなければならないケースは、革新的な商品やサービスであればあるほど求められる。

ルールデザインはルールを機能させる要だ。標準を獲得しただけでは利益には直結しない。標準にあらずば売ってはいけないなど、標準の獲得が市場で競争優位を生む構造となるような規制と掛け合わされて初めて収益性を高めるルールへと昇華する。そして、最後は収益性を高めるルールを現実的なものにしていくためのコンセンサス形成である。ルールの合意には、そのルールができることによって恩恵にあずかる陣営づくりが極めて重要である。

国内にロビイング文化が希薄な日本の企業は、海外でのルールづくりに参画することにどうしても躊躇してしまいがちだが、主導権を握らなければならない。そのためには、独創的な政策モデルを交渉のテーブルに載せることが一番である。そうすれば広く耳目を集め、交渉の主導権を握りやすくなる。

ルールに対する欧米の考え方

世界が様々な規範を、ルールという形で作りだしている。日本がその中で自らの利益を守り、かつ世界に貢献をするためには、ルールについての考え方を再考する必要がある。まず、重要なことは、ルールは未来に向かって作られるものであるということの理解である。私たちは現在に照らしてルールの是非を論じてしまいがちだが、欧米、とりわけヨーロッパにおいては方が施行されたからといって、即座に遵守されることが必ずしも前提とされていないことがある。ルールに関する「のりしろ」のある発想がヨーロッパの1つの特徴である。

経済合理性とセットでルールを考えよ

「ルールメイキング戦略」を企業経営の新たなツールに捉えるために、避けて通れないのが「それでいくら儲かるのか」という問いである。そもそも政府が関与する仕事の大半が「社会課題」の「ルール」対応だ。これに企業が積極的に関与しつつ新たな価値を創出する「戦略」を提案するには、これまで税金なしでは解決困難だった課題に対し、イノベーティブなビジネスモデルによる新たな経済合理性を成立させなくてはならない。

「ルールメイキング戦略」は大抵のケースにおいて、自社のみならず競合や顧客、サプライヤーなど広範なステークホルダーに影響を与える。社内の議論でも「なぜウチが積極的に動かなければいけないのか」という問いがかけられる。これを打開するため、まずそのルール形成で「自社にこれだけの利益アップをもたらすはず」といった数字での説明をできることが第一歩となる。