面白いことは上司に黙ってやれ 日本発の新ビジネスを生み出すには?

発刊
2020年8月18日
ページ数
240ページ
読了目安
265分
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どうすれば新しいビジネスを生み出せるのか
かつて、ソニーで犬型ロボット「AIBO」の開発に携わった後、ロボット開発ベンチャー企業を立ち上げた著者が、新しいビジネスを生み出すための考え方を語った一冊。
なぜ、日本ではイノベーションが生まれにくいのか、その根本的な問題について書いています。

面白いことは上司に黙ってやれ

当時ソニーでは「面白いことは上司に黙ってやれ」という不文律を、トップの方々が言っていた。製品開発の初期段階で多くの人で議論しても、いい物は生まれないということをわかっていたからだ。AIBO、FeliCa、PlayStation、Edyなど、実際に素敵なアイデアはそうして生まれた。ソニーの凄かったのは、偉い人が反対しても「止めろ」とは言わなかったことだ。

最近よく「ヒット商品を生み出すには、よく考えて選択と集中をするべきだ」と耳にするが間違いではないか。ヒット商品とは、とことんやらせてみて、最後の結果を見てから判断するしかない。ソニーはそれを実践していた数少ない企業だった。今、かつてのソニーに近いことをしているのはシリコンバレーと中国の深センだ。残念ながら、そういった世界に誇るべきやり方を日本は捨ててしまった。

 

顧客に聞いても意味がない

よく日本では「ビジネスをする時は顧客のニーズをよく聞いて開発しなくてはいけない」という話を聞く。しかし、顧客はそれまで存在しなかった商品はイメージできない。だから新しい商品そのものに関する意見を聞いても無駄である。

ソニーでは市場調査はしなかった。市場調査をしても意味がないことがわかっていたからだ。市場調査が意味を持つのは、類似の改良品を世に問う時だけだ。ソニーでは市場調査をする代わりに、市場を啓蒙するということを頻繁に行っていた。新しい商品を創造したいなら、アイデアを考え、実現し、市場を啓蒙するという一連の流れが必要だ。その一連のプロセスこそがイノベーションである。

 

日本企業がビジネスを考える時には、帰納法が使われる。帰納法とは、多くの観察から相似点を分析し、必要な結論を導く方法だ。帰納法の問題点は、市場のニーズに応えようとする発想なので、未知の商品を創造しようとすることには向かない。全く新しい商品は創造できないのだ。

 

ビジネス・スピリットを持て

自分自身に確固たるものがなければ、誰も興味を示してくれない。そのためにビジネスの哲学「ビジネス・スピリット」が重要である。ビジネス・スピリットとは、会社などの組織がどうビジネスに取り組むべきかの基本的考え方をシンプルに表現したものだ。その組織がビジネスを成り立たせるための一番基本となる考え方、手法や分野を定義したもので、ビジネスを軌道に乗せるための魂だ。

ビジネスス・ピリットなしでは会社全体が1つの目標を持ってまとまって行動することもできないし、市場の変化に合わせてビジネスのやり方を変えていくこともできない。

 

ビジネス・スピリットはイノベーションを起こすための原動力だ。その原動力は日頃から大事に育て、時には修正していかないとならない。いつまでも同じビジネスモデルは通用しないため、常に新しいことにもチャレンジする精神も持たなくてはいけない。

 

根底から意識を改革するために今日本がすべきことは、先を読んだ考え方ができる小さなソニーのような柔軟な考え方の会社をどんどん起業することだ。大事なのは、とにかく一歩踏み出してみること。始める前にネガティブな議論をするのはよくない。最初はどんなに稚拙でも、やると決めて事にかかれば成長していくものだ。創造的な発想はネガティブな頭からは決して生まれない。とにかく「未来思考」に頭を切り替えることが重要である。