ZARA、ユニクロ圧勝の秘密を明かす 生き残るアパレル 死ぬアパレル

発刊
2020年7月9日
ページ数
192ページ
読了目安
245分
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アパレル業界の勝ち組と負け組の本質的な違い
数多くの小売業の企業再生を行なってきた著者が、アパレル企業の多くが陥っている構造的な問題と利益を出すための処方箋を紹介している一冊。ユニクロやワークマン、ZARAなどの勝ち組と、倒産が続く他のアパレル企業との本質的な戦略の違いが書かれています。

売れ筋を追加生産しても売れない時代

アパレル業界で、これまでのビジネスモデルが通用しなくなった理由の1つは、多くのブランドに対するロイヤルティが著しく低下したためだ。日本中のアパレルが似寄りの商品を同じフロアで展開し、オンラインで比較購買がいくらでもできるからである。それにもかかわらず、アパレル業界では、古き時代に一世を風靡した「勝利の方程式」を未だに盲信している人が多い。

 

90年代後半、日本はSCM(サプライチェーンマネジメント)、SPA(製造小売)、QR(クイックレスポンス=注文に応じて素早く生産する経営手法)という「オペレーション三種の神器」を米国から輸入した。当時は、日本経済も成長しており、服に対する強い需要もあった。しかし今、商品回転率以上にトレンド回転率の方が高速になり、「作り増し」を前提としたQRは売上に寄与しない。

 

オンラインで比較購買が可能で、AIが過去の買い物履歴や閲覧履歴からレコメンドメールを送る時代、消費者から見て「欠品」という概念が存在しなくなった。個別企業、ブランド、店舗だけで見れば欠品は深刻だが、個社の欠品など、競合企業が穴埋めしていくため、売れ筋を追いかけた追加生産は自殺行為となる。

 

アパレル業界では、相変わらずトレンド遅れの「作り増し」が横行している。その結果、積み上がるのが売れない在庫である。この余剰在庫こそ、アパレル業界が抱える最大の問題だ。余剰在庫は、シーズンが過ぎると二束三文となり、損失に計上される。
余剰在庫が増える原因は「少子高齢化」「ZARAなどのグローバルSPA企業の競争参入」「ディスカウンターによる平均単価下落」の3つにより、市場規模が年々縮小しているためだ。にも関わらず、個社ごとには昨年対比で成長する計画を立て、非現実的な計画を前提に在庫を仕入れているのが問題である。

 

今、利益を出しているアパレル企業の2タイプ

①ベーシック長期販売型

できるだけベーシックで複数年度でも損金処理せず販売できるような定番商品の構成比率を高め、鮮度を保つために「商品を変える」のでなく、VMD(ヴィジュアルマーチャンダイジング)などの「見せ方を変える」ことで流行を追いかける手法だ。

一方、古い成功体験にすがっている人たちは「商品そのものを最初から企画し直さないと鮮度が保てない」と思い込み、必要以上の生産ロットとやっつけ仕事のクイック生産で商品コスパを悪化させ、かえって余剰在庫を増大させている。

 

②トレンドセッター高回転型

ZARAのようにハイテクを駆使し、超高速で世界中のトレンド情報処理を行なって商品生産し「売り切り御免型」で一期一会の商品供給をしている。儲けている企業は、期中計画でなく期初計画精度を上げるための創意工夫を行なっている。世の中の流行りや競合企業の状況から、翌シーズンをいかに乗り切るか考え、売れ筋は追いかけず、むしろ独自性の高い商品を販売することで鮮度を保っている。

そもそもセレクトショップは、買い付けが基本だからQRなどやっていない。もし、QRが唯一解なら、売り切り御免型や買取型企業の業績が良い理由を説明できない。

 

ブランド戦略の勘違い

アパレル業界では、同じ工場、同じ素材、同じ技術で作られたものが、名前(タグ)を替えるだけで、松・竹・梅と価格帯が全く異なる「ブランド」に姿を変えているのは事実だ。元々、商品に物理的な差がないから、消費者が生産背景を理解すればするほど、「名前」に価値を置かず、実利的な部分を機能比較し、コスパの良い商品が売れるのは自然の流れだ。

 

ここには日本企業のブランド戦略に対する不理解がある。そもそもブランドは、「縦の差」(階級/階層)を表すものだが、日本企業は「横の差」(趣味やライフスタイルの違い)で考えている。縦の差(あの人より、私の方が上なのだ)というメッセージと、横の差(あの人と、私はスタイル、趣味が違う)というメッセージが混在している。そのため、本来ブランドが持つはずの「価値の松竹梅」をうまく表現できずに「梅(廉価品)勝負」となり、結果として差別化のポイントが価格のみになってしまっている。ここに気づいている企業とそうでない企業の差は極めて大きく、一部の企業が一人勝ちしているのはこのためである。