WILD RIDE(ワイルドライド)―ウーバーを作りあげた狂犬カラニックの成功と失敗の物語

発刊
2020年3月5日
ページ数
372ページ
読了目安
480分
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Uber創業物語
Uberの創業から成功するまでの物語。元CEOトラビス・カラニックへのインタビューなどに基づき、これまでのUberの様々な内幕が書かれています。

トラビス・カラニック

表舞台に登場した時点で創業時のゲイツやジョブズ、ザッカーバーグより年齢の高かったトラビス・カラニックは、それ以前にB級起業家として、ポストITバブル期のサンフランシスコのベンチャー業界に長らくくすぶっていた人物だった。

ロサンゼルス生まれで、カリフォルニア大学ロサンゼルス校でコンピュータエンジニアリングを専攻していたが中退し、クラスメイトが創業したスカウアという会社で働き始めた。スカウアはナップスターの原型で、創業後まもなくエンターテインメイト業界に訴訟を起こされて倒産した。カラニックはスカウアのファイル共有サービスという概念を拡張して、次の企業レッド・スウッシュを立ち上げる。訴訟を逆手に取り、エンターテインメント企業向けの合法なP2Pソフトを作ることで、「訴えた側を顧客にしよう」と考えた。6年後、カラニックはレッド・スウッシュをソフトウェア配信最大手のアカマイに1870万ドルで売却した。これによって、31歳のカラニックは約300万ドルを手に入れ、エンジェル投資家兼起業アドバイザーとして、短期間のキャリアを築いた。

リムジンの配車アプリ

カラニックはコーチやアドバイザーとして、複数の企業を同時に値踏みすることができた。この時期、カラニックはスタートアップ界の友人であるギャレット・キャンプと頻繁に会っていた。エンジニアのキャンプは、ウェブ検索アプリを運営するスタンブルアポンという会社を立ち上げ、高額で売却することに成功した人物だ。2010年、キャンプは多彩なアイデアの1つに本腰を入れ始めていた。それが、サンフランシスコ市内でリムジンを呼び出せるスマートフォンアプリ、ウーバーキャブである。

スマートフォンに搭載されたGPSテクノロジーと加速度センサーを組み合わせれば、車の位置がわかるだけでなく、移動中の車の速度も計測できる。車の位置と速度がわかると、バックグラウンドで請求料金を自動算出することが可能になる。つまり、タクシーメーターが移動中に料金を加算するしかないのに対し、チップ内蔵のスマートフォンを利用した配車システムなら、乗車場所と目的地に加え、所要時間や料金までが記載された地図を瞬時に表示できるようになる。さらに、乗客とドライバーを直に結びつけるシステムを構築できる。

カラニックCEO就任

当時、キャンプはリムジンを所有して運転手を雇う形でのビジネスを想定していた。ガレージを借りることも考えていたが、カラニックはよせと言って止めた。アプリだけ提供して、ドライバーに独立契約者として働いてもらえばいい。独立契約者に好きな時間に働いてもらった方が融通が利くし、ビジネスモデルとして優れている。

2010年5月末、ウーバーは十指に満たない程度のドライバーと乗客を伴い、ひっそりとサンフランシスコで稼働した。乗客の大半は、口コミの新形態である、カラニックやキャンプらのツイッターのフォロワーだった。ウーバーは当初、創業者たちのような夜遊び好きの独身男性のためのお遊びツールとして登場した。

ウーバーキャブの稼働から幾日も経たない内に、カラニックはこの新事業への出資を募り始めた。ウーバーキャブの「シードラウンド」初の出資額は、合計125万ドル。評価額は400万ドルだった。資金調達ができたことで、カラニックは、ウーバーキャブで働く時が来たと感じ、CEOに就任した。

爆発的な成長

2011年、サンフランシスコで勢いの乗ったウーバーは他の都市にも進出し始めた。まずテック業界への販売促進を行い、噂を広めて、流行の先端を行くユーザーの気を惹くアプローチをとった。各都市のドライバーとインフルエンサー向けにパーティーを企画し、報道陣にコンタクトし、最後にローンチの日取りを決めた。最初の数都市で、ウーバーは爆発的な成長をみせた。