経済は感情で動く―― はじめての行動経済学

発刊
2008年4月17日
ページ数
320ページ
読了目安
446分
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人間の行動は不合理です
人間の行動を心理学の観点から捉え、様々な人間の不合理な行動を紹介している。人間の選択や行動は必ずしも合理的ではない。先入観、バイアス、錯覚など、脳の持つ様々な特性により、合理的な判断を狂わせる。

これらの特性を認識していれば、日常でも合理的な判断を可能とするかもしれない。マーケティングにも利用されている行動経済学をわかりやすく理解できる1冊。

現状を維持したがる

一方のグループは、安価だが基本的機能はついている携帯電話を使っている。もう一方のグループは、値段は高いが豊富な機能のついた携帯電話を使っている。どちらのグループも、他グループの携帯電話に買い替えたいか質問したところ、多くの人が現状維持を選んだ。

すでに投資したことに制約される

問1
スキー旅行を予約した。しかし、当日は寒くて風も強く、雪が降っていた。家から一歩も出たくないのに、お金はもう支払っている。
A:スキーに行く
B:温かい家で過ごす

問2
問1と同じ設定で、今度はスキー旅行がプレゼントだったとする。
A:スキーに行く
B:温かい家で過ごす

多くの人が、問1ではしぶしぶ寒さの中出かけるが、問2では家で温かくしていることを選ぶ。人はお金を捨ててしまったと思いたくない。すでに投資した方に気をとられ、将来の利益を考えられなくなる。

先入観で判断してしまう

問1
リンダは31歳。シングルでとても頭がいい。哲学科を卒業したが、学生の頃から人権や社会正義の問題に熱心に取り組み、戦争反対のデモにも参加していた。次の項目を可能性の低いものから並べよ。
A:リンダはグローバル化反対の活動家である。
B:リンダは銀行員である。
C:リンダは銀行員でグローバル化反対の活動家である。

大多数の人がBよりAの可能性が高いと判断する。しかし、Cはその中間、Bよりも可能性が高いとする。しかし、BとCを比較した場合、Cの中には当然Bが含まれており、Bの方が可能性が高いことになる。私たちは典型的なモデルを頼りに誤った結論を出してしまう。

見方で答えが変わる

問1
A:3万円が確実に儲かる
B:15万円が儲かる確率25%、まったく儲からない確率75%

問2
A:10万円を確実に損する
B:15万円を損する確率75%、損失ゼロの確率25%

多くの人が、はじめの質問にA、次の質問にBを選ぶ。どちらも期待値では逆が有利である。しかし、選択肢が得する額で示されると確実な方を選ぶ。反対に損する額で提示されると、確実な損失より、損失が大きいかゼロの確率に賭ける。

損失を回避しようとする

ニューヨークのタクシー運転手は、毎日の売上目標に達すると仕事をやめていた。雨のような客が多い日には、すぐに目標を達成し、さっさと仕事を引き上げる。しかし、経済的観点からすれば、運転手は売上が多い日によく働き、少ない日にはさっさと引き上げて自由時間を楽しむべきである。

タクシーの運転手は、売上目標に達成できないと損失と考え、長く働こうとする。人間は損したことを得したことよりも大きく捉える。

お金に相対的な価値を付与し、経験や感情によって色づけする

問1
オペラの劇場に出かける。入口で2万円のチケットをなくした事に気付く。チケットを買い直すか?

問2
問1と同じ設定で、今度はチケットを買っていない。しかし、上着のポケットにあったはずの2万円が見つからない。チケットを買うか?

この質問に対し、多くの人は、最初の場合はチケットを買い直さないと言い、あとの場合はチケットを買うと言う。どちらも2万円の損であることには変わらない。

選択肢が多いほど混乱する

問1
ある店で、人気のあるソニーのMP3プレーヤーがバーゲンで16000円の安値になっていた。定価よりもかなり安い。
A:ソニーを買う
B:他のモデルについても知ろうとする

問2
問1と状況は変わらない。今度はソニーの他にサムスンで、品質の良いものが26000円で買える。これもかなり安い。
A:ソニーを買う
B:他のモデルについても知ろうとする
C:サムスンを買う

問1では、2/3がソニーを買うと言った。ところが問2ではソニー1/4、1/2が判断を先延ばし、残りがサムスンを買うと言った。選択肢が増え、判断する時の葛藤が深まると、判断力は衰える。

3つあると真ん中を選ぶ

デジタルカメラで38000円と76000円のモデルを選んでもらうと、どちらも50%となった。この2つに128000円のモデルを提示した。すると、大方の人が真ん中のモデルを選んだ。
選択肢が増えると真ん中を選びたくなるのは、それが一番だと思わせるちょうどいい理由を見つけた気がするからである。

自分のものになると値が上がる

2つの学生グループで競売をすることにした。一方のグループには、プレゼントとしてカップを与えた。カップを手に入れたグループは、平均5.25ドル以下では売ろうとしない。一方、カップを持たないグループは平均2.75ドル以上では買おうとしなかった。何かの所有者になっただけで、そのものの価値が2倍になった。