サーバントであれ――奉仕して導く、リーダーの生き方

発刊
2016年2月23日
ページ数
232ページ
読了目安
292分
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奉仕して導くリーダーの生き方
組織人としての生きる道を、生涯にわたり探求しつづけた著者により、「サーバント(奉仕者)」というリーダーシップの形について書かれた小論集。

個人の奉仕からより良い社会がはじまる

人を思いやり、何かに長けている人とそうでない人が奉仕し合う事が、よい社会をつくる。思いやりというのは、かつては人と人との間で行われるものだった。しかし今では、組織を通じてじわじわと広がるものになっている。多くは規模が大きく、影響力もあるが、人間味に欠ける組織、必ずしも立派であるとは限らず、腐敗している事もある組織を通じてである。

もしより良い社会、即ち、もっと公正で思いやりがあり、人々に成長の機会を与える社会を築く事ができるなら、最も効果的、経済的で、かつ社会秩序を後押しする方法は、献身的な個人、つまり「サーバント」主導で、人々が自ら組織の中で次のサーバントを生み出す存在になる事により、できるだけ多くの組織がサーバントとしてもっとしっかり行動できるようになる事である。

サーバントとは

奉仕を受ける人達が、人として成長しているか。奉仕を受けている間に、より健康に、聡明に、自由に、自主的になり、自らもサーバントになる可能性が高まっているか。さらには、社会で最も恵まれていない人達に対する影響はどうか。その人達は何か恩恵を得ているか、少なくとも一層困窮する事になっていないか。そして、直接間接を問わず、奉仕という行為によって,当たり前のように傷つく人が1人もいないことである。

サーバントは、どんな立派な社会的目標であっても、急いで達成しようとして強引に事を進めようとはしない。その強引さのせいでつらい思いをする人がたとえ誰もいなくても、説得によってもっとゆっくり行おうとするのだ。

ビジョンを持つ者が必要である

深刻なレベルでビジョンが欠如しているという悪しき状態が、教会や学校、企業、慈善団体などあらゆる組織に蔓延している。そうした組織では、必要とされるビジョンが経営のリーダーから発信されていない。組織の使命が何であれ、ビジョンを生み出す可能性が最も高いのは、理事である。彼らは経営について、理解できるくらいには関わりを持ち、しかし客観的な見方ができるくらいに距離を置いているため、想像力が比較的損なわれていない。

変化として最も賢明で取り組みやすいのは、理事会のリーダーシップ効果を徐々に高めていき、その理事会がしっかりとした影響力を持ち、高い価値に対する新たなビジョンを、一度に一組織ずつ、できるだけ多くの組織に浸透させられるようになる事だ。

組織はどうすれば奉仕を重視できるようになるのか

それには、組織に所属する人達が今よりももっと奉仕し、シナジーへ向って力を合わせて取り組むよりほかない。変革への動きは、規模の大小を問わずどのような組織においても奉仕の質を高めるが、この動きは個人のそれぞれが率先して取り組む事によって始まる。

ここでは、大規模な組織という守られた場でどのように「コミュニティ」を実現するかがポイントになる。思いやりは、近くにいる人達と付き合い、交流する事に大きく関わるものだからだ。個人が自在に、ひらめいたり創意に富むアイデアを思い付いたりするのに必要な励ましや支援は多くの場合、集団がいくつも集まる環境でこそもたらされる。大規模であるがゆえにしっかり守られている場で小さなコミュニティを数多くつくることが、大組織でシナジーを実現する秘訣である。

思いやりのある、奉仕し合う社会を築く必要条件の1つは、その構造の中にビジョナリーのための場所があり、その場所にいるビジョナリーが、本来生み出せる通りに解放のビジョンを生み出してくれるという期待に包まれている事である。